優介と分太の言い合い
それから僕は、2人のもとへ急ぐ。
キョロキョロしながら歩いていると。
公園に2人の姿が見えた。
そこへ、走って、合流する。
「優介っ! 大丈夫?」
「うん。 もう大丈夫」
優介は、すっかり、落ち着いていて。
いつもの姿に、戻っていた。
「良かった」
「2人とも。
驚かせたり、心配させて。
ごめんね」
優介が、謝る。
「驚いたけど、大丈夫だよ」
僕が、言うと。
「いいけどさ。
まさか、いつも冷静なお前が。
あんなに取り乱すなんてなぁ。
ある程度、病状、知ってたんじゃねぇのか?」
分太も、驚いたようだ。
「まぁ。 そうなんだけど。
本当に、ごめんね。
もう、大丈夫だから。 帰ろうか。
あっ。
でも、また心音さんのお母さんに。
俺のせいで、変な印象、与えちゃったね。
だから、引き返して。
今度は、俺が、謝罪するべき、だよね。
2人は、先に帰っていていいから」
優介が、むりやり、笑顔を作って言う。
けど、不自然な笑顔のせいで。
かなり、顔が、引きつっている。
「お前それ、本気で言ってんのか?」
「2人を、待たせるわけにはいかないよ」
「お前、どういうつもりだよ!」
「どういうって。
待っててもらうのも、悪いし。
先に……」
「散々、心配させておいて。
このまま、解散する気なのか?」
しばらく、2人のやりとりが続いて。
分太が、優介の声を、遮って言う。
「でも、解散すること自体。
本題、同様。
勇大が言わなくても。
いいんじゃないかな」
「そうじゃ、ねぇだろ!
あの状態になったことを。
説明しないっていうのか。」
分太の、言い方から。
徐々に、怒りが込み上げてきているのが。
分かった。
「迷惑かけて、本当に。
ごめんね。
でももう、大丈夫だから」
優介が、目を逸らしながら、言うが。
その目が、潤んでいたのを。
僕は、見逃さなかった。
「おれたち、そんな関係だったのか」
「えっ」
「おれたち、それくらいの関係だったのかって。
訊いてんだよ!」
「どういうこと」
「おれたち、そんなに。
上辺だけの関係だったのか?
心音さんのこと以外は。
話せねぇのか。
違うだろ。
お前が倒れたとき。
おれたち、救急車、呼んでんだぞ。
お前のことが心配でな。
でも。
もし、上辺だけの。
付き合いでいいなら。
あの日。
わざわざ、追いかけてまで。
病院、行ってねぇからな。
そのあと、警察署まで。
行ってんだぞ。
身に覚えない、罪をかけられて。
それなのに。
そこまで、してるっていうのに。
お前は、おれたちのこと。
建前だけの。
付き合いだっていうのか!」
分太が、必死に、訴える。
「心配、かけたくないんだよ!
皆、優しいから。
きっと、事実を話したら。
俺と、同じように。
いや、もしかしたら。
俺、以上に。
辛くなるかもしれない。
皆は。
寄り添ってくれる、だろうから。
俺が話すことで。
皆にも、辛い思いをさせたくない。
皆なら、きっと。
辛さを分け合えばいい。 って。
言ってくれるんだろうけど。
そんな思い、させられない。
その想いに。
甘えるわけには、いかない。
辛いのは、俺1人で、充分だ!」
優介は、分太のほうを。
勢いよく見てから、訴えた。
でもそんな、力強い口調とは、裏腹に。
少し、声が震えているようにも、聞こえた。
それと、優介の目に。
今度は、はっきりと。
涙が見えた。
そして、分太のほうを。
向くときに、その涙が。
飛び散っていた。
「はっ?
お前。 なに、きれいごと、言ってんだよ!
辛いのは、俺1人で、充分?
ふざけんじゃねぇ!
お前が辛いの知ってて。
無視できるわけねぇだろ!
そんなの、おれのほうが。
納得いかねぇんだよ。
それくらい、分かるだろ。
おれたちはもう、上辺だけの
関係じゃねぇんだよ!
もしおれが、今のお前のように。
悩んでたら。
お前も、相談に乗るだろ。
詳しく、話を、きこうとするだろ。
おれも、お前の力に、なりてぇんだよ!
お前自身は、誰かの力になろうとするくせに。
自分のことは、隠して。
心配かけたくないから。
とか言って、おれたちには、頼らない。
そんなんで、親しくなれると、思うのか?
違うだろ!
片方だけ、頼るんじゃなくて。
助け合ってこそ。
絆が、深まるんじゃねぇのか!
いつもなら、お前の言うことに。
賛成できるが。
これだけは、できねぇ。
片方だけ、頼ってばかりの関係だと。
それこそ、お前の言ってた。
わだかまりが、出来るんじゃねぇのか?
頼ってばかりのほうが。
申し訳なくなるんじゃねぇのか。
心音さんのことについて。 話すのに。
おれたちの仲が。 ぎすぎすしていて。
いいと、思うのか。
そんなんで、いい案が、出せると、思うのか。
それとも、また、初対面のときのように。
“敬語” で “さん” をつけて、呼び合う関係に。
戻りたいのか!
違うだろ。
おれたちは、心音さんをきっかけに。
出会ったけど。
心音さんのこと、だけじゃなくて。
皆、それぞれの。
性格も、過去も、未来も。
全部、丸ごと受け入れてこそ。
仲間だ!
って、言えるんじゃねぇのか。
おれたちもう、そこまで深い関係に。
なってんだよ。
だから、それぞれの悩み、共有して。 共感して。
その、誰かの悩みに対して。
いろんな意見を出し合って。
解決していけば、いいんじゃねぇのか。
だから、お前1人で、全部。
抱え込もうとするな!
どんな悩みでも。 どんな過去でも。
全部、受け入れてやるからさ。
なんでも、いいから。
づべこべ言わずに。
話せよな!
もう、隠し事は、なしだ。
いいな!」
分太は。
最初のほうは、勢いよく、怒っていたのに。
徐々にその勢いは消え。
最終的には、ふつうに、話していた。
「勇大。 お前もだぞ!
他人事じゃねぇからな」
そして、僕にも。
そうやって、言ってくれた。
「分太……ありがとう」
優介が、涙目のまま。
かすかに、微笑んで言う。
「おう!」
分太が、返事して。
「優介。
僕も、分太の意見に、賛成だよ。
頼りないかもしれないけど。
たまには、僕も、頼ってね。
微量だとしても。
力になれることは、あると思うから」
僕は、優介に、明るく言ったあとに。
「……分太も、ありがとね」
相変わらず、分太には。
素直になれないからか。
少し、ためらいながら、言う。
「あぁ」
心なしか、分太も。
少し、戸惑っているように、見えた。
「勇大も、ありがとう」
そして、優介にお礼を言われた。
「どういたしまして」
僕が、返事すると。
「あっ。
さっきも言ったけど。
心音さんの、お母さんに。
俺のせいでまた。
変な印象、与えてしまったよね。
いまから、謝罪に、行くべきだよね」
優介が、心配していた。
「そのこと、なんだけど。
お母さんは、そのことについて。
心配はしていたけど。
変な印象は、受けてなさそうだったから。
大丈夫だと思うよ。
でももし、優介が。
気になるようなら。
連絡先、教えてもらったから。
心配しなくて、大丈夫って。
伝えておこうか?」
僕が、優介に言うと。
「でも、勇大に。
手間、取らせるのは……。
と、思ったけど。
お願いしようかな」
初めて、優介に、頼られた。
「任せて!
また、どうなったかも。
報告するね」
嬉しくなり、自然と。
声色も、明るくなる。
「じゃあ、よろしくね」
そして、少し照れながら。
優介が言う。
僕は、優介の。
見たことない表情に。
少し、驚きながらも。
「うん!」
元気よく、返事した。




