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2人の合流

 


 しばらくして。

 お母さんと2人が。

 中に入って来た。


 そして、僕も。

 そのことに気づいて。

 落ち着かず。

 玄関まで、出て来ていた。



 お母さんが先に、中に入っていったが。


 2人は、玄関で立ち止まり。


 「すいません!

  こちら。

  心音さんの好みに、合うといいのですが……」


 優介が、慎重に。

 紙袋から、立派な花束を。

 取り出しながら、言う。


 お母さんに。

 見舞い品を、手渡していたのだ。


 さっき、見たときは。

 はっきりと、分からなかったが。


 色鮮やかな、花束と一緒に。

 花束に収まるほどの大きさの。

 茶色のクマのぬいぐるみが。

 一緒に、ついていた。

 首には、ピンクのリボンが、結んである。


 駅での、僕への説明から、察するに。


 2人が、早めに待ち合わせて。

 花屋かどこかで。

 選んだもの、だろうな、と思った。


 「ありがとうございます!


  あら。 かわいいー。

  クマも、ついてる。


  心音は昔から、動物のぬいぐるみが大好きで。

  部屋にも飾っているんですよ。


  だから、すごく喜ぶと思います」


 なんだろう?

 心なしか、僕のときより。

 かなり、喜んでいる気がする。


 「良かった……」


 そして、優介と分太も。

 嬉しそうに微笑んで。

 顔を、見合わせていた。


 「どうぞ、どうぞ!

  お上がりください」


 そして、お母さんが。

 招き入れていた。


 「お邪魔します」


 2人が言って。


 「お待ちしておりました」


 2人に、お母さんが。

 返事していた。


 そして、そんな2人のところに。

 僕もそっと、合流する。



 「早速、ご案内しますね!」



 それから、お母さんは。

 2階へと続く階段を、先に上がって行った。


 そして僕らが、その後に続く。



 それから、お母さんが、ドアを開けてくれたので。

 僕が、お母さんの次に。 中に入ると。


 心音さんの、枕側に。

 以前はなかった。

 足が細くて長い、天板の小さなテーブルがあり。

 その上に、さっき僕が持ってきた、花が生けられていた。


 きっと、僕が。

 優介と電話しているときにでも。

 生けたんだろうな。


 「心音。 さらに、お2人が。

  きれいな花と、あなたの好きな。

  クマのぬいぐるみを、持ってきてくださったわよ。


  よかったわね。

  これで、更に、部屋が明るくなるわね!」


 そして、お母さんは、心音さんに。

 優介と分太が、持ってきた花を見せながら。

 話しかけていた。 けど、その声は、震えていて。

 今にも、泣き出しそうだった。


 それから、振り向いて。

 僕らのほうを見て。


 「じゃあ。

  私は、お茶の用意と。 

  この立派なお花を。

  生けてきますので。

  ごゆっくり!」


 そう言って、お母さんは。

 僕らに、微笑んで。 

 一礼した。


 けど、その目には。

 うっすらと、涙が見えた。


 「あっ。 お気遣いなく!」


 僕が、返事すると。


 お母さんは、優介と分太が、あげた花を持ったまま。

 1階に、降りていった。



 僕は、再会できた喜びで。

 1人で、心音さんのもとに、歩み寄る。

 それから、ゆっくりと座り込んで。

 以前と同じように。 心音さんの手を握って。



 「心音さん。 2回目のお見舞いが。

  遅くなって、ごめんなさい。

 

  でも、今日は2人も、連れて来たよ!

  心音さんも、知っているよね。


  それと。 心音さんが救ってくれた、当事者の皆は。

  僕も含めて、だけど。 

  心音さんに、すごく、感謝しているから。


  そして、これは、僕、個人の意見だから。

  皆は、どう思っているかは、分からないけど。


  大切な仲間と、巡り合わせてくれて。

  ありがとう!


  いつか必ず、6人で。

  お見舞いに、来れるように。 

  頑張るからね。

 

  じゃあ、またね!」


 この場に、来れなかった、仲間の想いも含めて。

 心音さんに話しかけていると。



 今まで、気にならなかった音が、聞こえてきた。


 ハーフンッ、ハーフンッ……。


 えっ。 なに? 


 驚いて、心音さんの手を。

 ゆっくりと、離して。

 そっと、ベッドの上におく。


 フゥーッ、フゥーッ……。


 なんの音だろう?  あっ、これか!


 初対面のときから、気づいていたが。

 心音さんは、人工呼吸器を装着している。

 だから、その呼吸音だと思った。 


 ハァッハァッハァッ……。


 だが、その呼吸音は、だんだん速くなる。

 機械なのに、こんな短時間で。

 速度が変わって、いいもの、なのだろうか?


 「……優介?」


 分太の声に反応し、振り向く。


 すると、部屋の入り口付近で。

 優介がまっすぐ前を向いたまま。

 両膝立ちをしていた。


 その姿からして。

 立った状態のまま、力なく、座り込んだようだった。

 そして、よく見ると。

 目に涙を溜めて、過呼吸を起こしていた。


 さっきの呼吸音は、機械じゃなくて。

 優介の過呼吸の音だったんだ。


 「おい。 ちょっと、出るぞ!」


 そんな優介の異変に、いち早く気づいた分太は。

 優介を立ち上がらせて、部屋を出て行った。

 そして階段を、足早に、駆け降りる音が、聞こえた。


 「すみません。 急用ができたので、失礼します。

  お邪魔しました!」


 バタンッ!


 1階から分太の声と、ドアを閉める音が、聞こえた。



 心音さんの部屋に来てから、ずっと。

 部屋のドアが、開きっぱなしになっていた。


 だからか、2人が去って行く音が。

 鮮明に聞こえた。


 けど僕は、状況がいまいち理解できず。


 座り込んで、振り向いた状態で。

 ただただ、部屋の入り口を、見つめたまま。

 呆然としていた。



 そこへ、お母さんが、部屋に入って来た。


 手には3つの湯飲みの乗った、お盆を持っている。


 「なにかあったんですか?

  1人は具合が悪そうでしたけど……」


 「いえ、大丈夫です。 ちょっと急用で。

  僕も、これで失礼します!」


 そこで、ようやく、正気に戻って。

 瞬時に、状況を理解し、分太と話を合わせる。


 そして、部屋を出て、階段を降りていると。


 「あの! 連絡先、教えてくれませんか?

  ……心音に、もしものことがあったら、連絡したいので」


 後ろから、お母さんに、声をかけられた。


 「分かりました」


 そして、携帯電話を取り出す。


 「ありがとうございます」


 「今回、いきなり押しかけたのに。

  急に帰ろうとしておきながら。

 

  かなり、言いづらいのですが……。


  また、お見舞いに来てもいいですか?」


 僕が、少しためらいながら、言うと。 


 「もちろんです!

  そのほうが、心音も。

  喜ぶと思いますので」


 お母さんは、即答してくれた。


 「よかったー。

  じゃあ今度は、他の仲間も、連れて来ますね」


 僕は、一気に安心して、嬉しくなり。

 明るく言うと。


 「お待ちしています!」


 ありがたい言葉をかけられる。 


 「次から、お見舞いに伺うときは。

  事前に、ご連絡しますので。

  よろしくお願いします!」


 「こちらこそ。

  よろしくお願いします!」


 そんなことを話しながら。

 連絡先を交換した。


 「では。 これで、失礼します」




 そして、お母さんに。

 一礼をしてから、家を出た。




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