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居間でのやりとり

 


 僕が、正直に。

 一部始終を、長々と、話したのに対して。


 「そういうこと、だったんですね。

  私の見た、元気な心音は。


  あなたたちが。

  犠牲になっていたからこそ、だったんですね。


  もし私が、心音と同じ立場だとしても。

  心音と同じことを、していた、と思います。


  心音は、自分の使命を全うしたんですね。

  私は、そんな心音を、誇りに思います!」


 お母さんは。

 静かに一筋の涙を、流していて。


 最初は、声が震えていたものの。

 徐々に、力強く、言っていた。


 そして、不思議な体験のこと、などについては。

 微塵みじんも疑わなかった。


 こんなことなら。 最初から。

 友人だと、嘘をつかなくても。

 よかったのかもしれない。


 「信じてくれるのですか?」


 僕が言うと。


 「正直、信じられないけど。 

  あんな奇跡に、遭遇したら。

  納得いくわ。


  あの、奇跡が起きた日々の、心音は。

  心音本人で、いいのよね?


  あなたの話を、聞いていると。

  別人の魂が、宿っていたという、可能性も。

  ありえそうな、気がして」


 「もちろん、心音さん本人、だと思います」


 返答している最中に、不安になった。

 もしかして、別人だったのかな?


 神様に、確認していないから。

 そこまでは、分からないけど。 

 もし、別人だったら、どうしよう。


 「ごめんなさいね。

  あなたに、訊いた直後に。

  思い出したけど。


  あれは、心音で、間違いないわ。

  あの、天真爛漫な性格は。

  心音、そのものだわ。


  わずかな日々だったけど。

  少しでも、あの子の笑顔を。

  久しぶりに、見られてよかったわ。


  そう思ったら、これからのことも。

  乗り越えられそうな、気がするの。


  奇跡なんて、もう、信じないつもり、だったけど。

  今、思えば。 あのとき、笑顔が見れただけでも。

  幸せだったのかもしれないわね。


  こんな大事なことを、忘れてはいけないのに。

  病状のことばかりに、目がいってしまって。


  いつの間にか。

  あの、元気な心音の姿が。 幸せな日々の記憶が。

  薄れていっていました。


  でも、あなたの話を聞いて。

  思い出すことが、できました。


  そして。

  心音が急に、回復した謎も解けて。

  よかったです。


  なによりも私に。

  大切な思い出を、思い出させてくれて。

  ありがとうございます」


 僕は、どう、返事をしたらいいか。

 分からなかった。

 以前のこともあるし。

 なにを言っても、傷つけてしまいそうで。


 なにも、言えなかった。


 ただ、心音さんの容体は。

 それほど、よくないのかもしれない。

 ということだけは、察した。


 それで、とりあえず。

 もやもやした気持ちを。

 解消することにした。


 「あの!」


 前置きをして、立ち上がり。


 「以前は、友達なんて、言って。

  すみませんでした。


  怪しまれないように、しようとしたら。

  結果的に、嘘をついてしまいました」


 そして、頭を下げると。


 「いやいや。 頭を、上げてください。

  あなたは。 いったい、何回、謝るつもりですか」


 そんな僕を見て。 

 お母さんが、涙を手で拭って。 

 立ち上がりながら、慌てて言う。


 そして、僕は、頭を上げてから。

 この、立ち上がったタイミングで。

 切り出すことにした。


 「それで、その……。

  先程、話した僕の体験と。 同じ体験をした人が。

  まだ、他にも5人、いるんです」


 少し、躊躇しながら、言ってしまう。


 「あら、そうなの?」


 「それで、今。 そのうちの2人が。

  近くまで来ているので。

  ここに、呼んでもいいですか?」


 「えっ、今から?」


 「はい。 ご都合、悪いですか?」


 「いや、そうじゃないけど。

  ちょっと、びっくりしちゃって」


 「すみません」


 「どうぞ、呼んでください。

  本来なら、私が迎えに行くべき、なんでしょうけど……」


 「いえ。 

  勝手に押しかけたのは、こちらですから。 お気遣いなく。

  ただ、来てもらうにあたり。 道を教えてもいいですか?」


 既に、駅に集合するときに。

 電話で、住所を、2人に教えているが。


 あのときは。

 お母さんに、個人情報を、教えていいか。

 確認が、取れなかったので。


 今、間接的に、訊くことで。

 許可をもらおうと、しているのだ。



 そして今、ふと、思い出したが。

 そう言えば、神様に。

 心音さんの住所を、誰にも教えてはいけない。

 そう、言われていた。


 けど、当事者である。 2人になら、いいよね。


 そうやって、自分に言い聞かせて。

 むりやり、納得させる。


 でも、少し、不安になったので。

 あとで、2人に、さりげなく、きいてみよう。


 「もちろんです。 それと、名字も教えください。

  そのほうが。 表札で探しやすい、と思いますので」


 「ありがとうございます。 助かります!」



 そして、優介に電話をかける。


 『勇大、大丈夫だった?』


 優介は、電話に出てすぐ。

 訊いてくれた。


 『うん。 正直に全部、話したら。

  理解してもらえたよ!』


 まるで、先生に褒められた、小学生のように。

 無邪気に報告する。


 僕自身が先生、という立場でありながら。


 事実を話して、理解してもらえたのが。

 想像以上に、嬉しかったのだ。


 『心配してたから、良かった』


 対して、優介は。

 いつもと変わらず、冷静だ。


 『それでね、2人も呼んでいいって。

  だから今から、道と。 


  表札で、探しやすいようにって。

  許可をもらったから。


  名字を教えるね!』


 でも、僕の無邪気さは、変わらなくて。


 今から、2人も来てくれる。

 という、嬉しさから。

 ウキウキしていた。


 いや、2人というより。

 優介がおもかもしれない。


 優介が、そばにいてくれるだけで。

 なぜか、安心感があるのだ。


 そして、僕は2人に。

 公園からの道順と名字を、教えた。


 『それで、あの……』


 道順と名字を教えたあとで。

 住所のことに、触れようとして。

 ためらってしまう。


 “住所は、誰にも、言わないで。”

 そう、すんなり言えたら、楽なんだろうけど。


 今まで、築き上げてきた、信頼関係が。 

 一気に、壊れてしまいそうで。 

 なかなか、言えないでいると。


 『どうしたの。 大丈夫?』


 優介が、なにかを察したのか。

 心配してくれている。


 そのおかげで、一気に。

 打ち明ける決心がついた。


 『2人のこと、信用してないわけ、じゃないんだけど。

  住所は、個人情報だから。


  外部に、漏らさないでほしいなって、思って。

  そのことはまだ、言っていなかったから』


 僕が、思い切って、言うと。


 『もちろん。 分かってるから。

  大丈夫だよ。


  一応、分太にも、言うけど。 


  もしかして、心音さんのお母さんに。

  そのことについて、忠告されたり。

  怒られたりしたの?


  それなら、対処するけど。

  大丈夫?』


 僕が、余計なことを、言ってしまったせいで。

 優介に、余計な心配をさせてしまう。


 『ごめん。 そうじゃなくて。

  僕がただ、2人に、住所を漏らさないでと。

  言い忘れたのを、思い出しただけ、だから。

  心配しないで』


 『そうだったんだね。

  なら、よかった。


  じゃあ、今から伺うから。

  そのことを、改めて。


  心音さんの、お母さんに。

  伝えてね』


 『分かった。 待ってるね!』


 僕が、明るく言うが。


 『じゃあ、よろしくね』


 相変わらず、優介は、冷静だった。


 『うん!』


 そして、電話を切って。


 高ぶった感情を、一旦。

 落ち着かせてから。


 「今から。 先程、お話しした。

  僕と、同じ体験をしたうちの。

  2人が、来るそうなので。

  よろしくお願いします」


 僕が、優介に言われた通り。

 お母さんに、改めて、報告すると。


 「分かりました。

  因みに、どちらから。

  来られるんですか?」


 お母さんに、訊かれたので。


 「あそこの、広めの公園です!」


 外を、指さしながら。 僕が言うと。


 「あー。 あの公園ね!

  それなら、近いので。 すぐですね」


 お母さんも、納得したようだ。


 「はい」


 そんな、やりとりをしていると。


 ピンポーン!


 玄関のチャイムが鳴った。



 『はい』


 お母さんが、インターホン越しに。

 返事していた。


 『僕たち、そちらに。

  既に、お邪魔している人の。

  友人でして。


  心音さんの。

  お見舞いに、伺いました』


 2人がやって来た。

 案の定、すぐに着いたようだ。


 『聞いていますよ。

  今、行きますね』


 お母さんは、僕のときと、同じように。

 インターホン越しに、会話してから。


 「じゃあ、ちょっと。

  行ってきますね」


 僕に、そう言ってから。


 「はい」


 僕が、返事をして。 


 お母さんは。

 外に、出迎えに行った。


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