警戒心
5日後。
ようやく、待ちに待ったときが。
やってきた。
昼休憩になり。
昼食をすませた後。
小テストの採点をしていると。
ブーブーブー。
携帯電話のバイブが鳴った。
そして、携帯電話を見ると。
優介からの、一斉送信メールだった。
「きたー!」
嬉しすぎて、思わず。
叫んでしまう。
「先生、どうしたんですか?」
近くにいた、先生に、声をかけられる。
そして、辺りを見渡して。
自分が、注目されていることに、気づく。
と同時に、一気に、恥ずかしくなる。
「あっ。 すいません。
なんでもないです。
お騒がせして、すみません」
「なら、いいですけど。
なにかあったら、言ってくださいね」
「はい。 ありがとうございます」
僕の一言で、納得したのか。
注目していた、先生たちが。
一斉に、僕から、視線を変えて。
再び、動き出す。
その様子に、僕も安心して。
改めて、携帯電話に、視線を落として。
念願のメール内容を見ると。
『皆さん。
この度は、僕のせいで。
ご迷惑、ご心配を、おかけして。
誠に、申し訳ございません。』
謝罪メールだった。
えっ。 待って。
優介……だよね。
別人のような口調なので。
見間違いかな? と思い。
送信者の名前を。 何度も、確認するが。
優介で、間違いなかった。
となると、優介が。
送る相手を、間違えていて。
仕事先に送るはずが。
間違えて、僕らに。 送ってしまったのかもしれない。
病み上がりだから、間違えても仕方ない。
そう、思ってしまうほど。
優介の送ってきた文は。
他人行儀だった。
たしかに。
優介が倒れたことで。
僕らは、警察署まで、行くことになってしまった。
けど、誰も、優介を責めていないのに。
そこまで、かしこまって。
謝らなくて、いいのに。
と思うと、同時に。
なぜか、ショックを、受けてしまった。
優介は、倒れただけ、なのに。
大事になってしまったことで。
謝罪をさせてしまった。
そう思ったのだ。
あんなに、待ち望んだメールが。
まさかの、謝罪文なんて。
思いもしなかった。
たしかに。
僕が、優介の立場になったとしても。
まずは、謝罪をするだろう。
でも僕は、無事に、回復したという。
その、知らせを待っていたので。
予想外の、メールに、困惑していた。
そして、皆も、困惑しているのか。
まだ、見ていないのかは、分からないが。
その、謝罪メールに対して。
すぐに、返信をする人は。
1人もいなかった。
僕が、優介のメールの文を。
目で読み返していると。
ブーブーブー。
再び、バイブが鳴ったが。
今回は、手に、持っていたので。
手にも、振動が伝わる。
「おぉ」
少し、驚いてから。
たった今、きたメールを、表示させると。
泰樹からの、一斉送信メールだった。
そして、送信者一覧の欄に。
洸希君の名前はあったが。
なぜか、優介の名前はなかった。
そして、その謎は。
本文を見て、すぐに解けた。
『皆、さっきの、優介からの。
一斉送信メール、見たか?
まだの人もいるかもしれないが。
皆も、忙しい、だろうから。
もう、見たつもりで、話すが。
優介からの、待ちに待った、メールがきた。
と思って、うかつに、返信しないほうがいい。
本当は、まだ、警察が預かっているのに。
あえて、本人のふりをして。
優介の携帯電話から。 オレたちに送ってきた可能性がある。
だからこれは、警察の罠かもしれない。
とりあえず今は、返信は、控えて。
もう少し、様子を見たほうがいい。』
相変わらず、警察を信用していないんだな。
でも、送信者一覧を見て、洸希君の名前があれば。
本人だろう。
そう思い、送信者一覧を見ると。
洸希君の、名前がなかった。
やっぱり、本人じゃないのかな?
一気に、泰樹の言葉の、信ぴょう性が高くなる。
ブーブーブー。
すると、また、メールが届いた。
表示させると。
今度は、分太からの、一斉送信メールで。
泰樹の文に、返信したようだった。
『いや。
おれは、本人だと、思うぞ。
警察なら、こんなに、期間をあけないだろうし。
そういう計画でも。 関係ねぇ。
なんで。 せっかく、回復した本人が。
送ってきてくれてんのに。
素直に、おかえりって。
言ってあげねぇんだよ!
泰樹も、あいつからの連絡を、待ってたんだろ。
だったら、余計な、警戒心なんか捨てて。
素直に、回復を喜んであげれば、いいんだよ!
じゃねぇと。
あいつの中にずっと、おれ達に対する。
申し訳なさが、残り続けると思うぞ。
おれたちが、受け入れねぇと。
あいつは、一生、罪悪感、抱えたまま。
おれたちと、接するかもしれねぇ。
そんなことさせるわけに、いかねぇだろ。
あいつは、勇大を受け入れたのに。
おれたちが、あいつを。
受け入れねぇで、どうすんだよ!
皆は、どうするか、知らねぇが。
おれは、あいつに、返信するからな。
1人だとしても。
たとえ、警察の罠だとしても。
知ったことか!
あいつの想いを、無視になんか。
出来ねぇからな。』
分太の、熱い想いが。
文字から、伝わってくる。
たしかに。
僕を受け入れてくれたのは。 優介なのに……。
優介が、僕を受け入れてくれたからこそ。
僕は、敬語を解消できたのに。
泰樹の警戒心と。
洸希君が、送信者一覧にいないことに、惑わされて。
警察かもしれないと、疑ってしまったけど。
本来なら、優介の回復を。
1番に、喜ぶべきだよな。
そう思い、優介に返信しようとしたら。
ブーブーブー。
バイブが鳴り。 表示させると。
一斉送信で、泰樹が分太の文に。
返信していた。
『たしかに、そうだよな。
警察のせいで、仲間を傷つけるなんて。
最低だよな……。
でも、だからこそ。
確実に、本人だということが、証明されないと。
納得できない!
そのためには。
証拠のようなものがないと、いけない。
例えば。
オレたちしか、知らないことを。
優介に、質問してみて。
それに、難なく。 答えられたら。
確実に、本人だと、認識できるだろう。
オレたちしか、知らないこと。
と言えば、皆、分かるだろうが。
個人名を出すのは、厳禁だ。
もし、優介本人じゃない場合。
警察に、洸希のときと、同じように。
心音さんの存在を、教えてしまうことになり。
心音さんにも。
迷惑がかかってしまう、かもしれないからな。
だから、個人名、以外で。
オレたちしか、知らないこと。
なにか、思いつかないか?』
僕たちしか、知らないこと……。
なんだろう?
どうしても、心音さん関連しか。
思いつかない。
ブーブーブー。
また、バイブが鳴り。 表示すると。
今度は、珍しく、秀寿さんからの。
一斉送信メールだった。
『たしか。
同じ日に、皆が。
同じ言葉を、勇大に。
言っていた気がするが。』
合言葉だ!
秀寿さんのメールのおかげで。 思い出せた。
『合言葉だよ! 皆。
秀寿さん、ありがとうございます。』
思い出せたことが、嬉しくて。
僕が、急いで一斉送信メールを、送ると。
ブーブーブー。
バイブが鳴り。 表示すると。
分太の、一斉送信メールだった。
『あぁ。 おれも、気づいた。
じゃあ、おれから、優介に。
メールで、質問してみるけど。
皆へ報告する、手間を省くためにも。
一斉送信で送るから。
皆も、見届けてくれ。』
そして、“分かった” と、返信する間もなく。
ブーブーブー。
また、バイブが鳴ったので。 表示すると。
今度は、優介からの、一斉送信メールだった。
まるで、分太の、メールを見たような。
タイミングの良さに、驚く。
『今日、ようやく。
携帯電話が、返って来たので。
さっそく、皆に、メールをしました。』
この文で、本人である可能性が、近づいた。
けど、まだ敬語だし。
やはり、泰樹が言うように。
本人だという、確信がもてない。
ブーブーブー。
バイブが鳴り。 表示すると。
分太が、一斉送信にて。
優介に返信していた。
『おい! おまえ。
優介、本人なんだろ。
謝罪とか、携帯電話のこと、とかいいから。
とにかく、体調を、教えろよな!
皆、1番、それが気になってんだからさ。
でも、メール出来てるってことは。
意識は、戻ったんだろ。
お前が、タメ語じゃねぇから。
皆、警戒してんぞ!
だから、その疑いを晴らすべく。
質問するが。
おれたちの、合言葉を。
今すぐ、送ってくれ!
おれたちの、昼休憩が。
もうすぐ、終わるからな』
包み隠さずに、言い過ぎだよ。
もし、警察だったら、どうするの?
だけど、用件は、伝えているから。
まぁ……いいか。
そして、分太の、メール内容からは。
全体的に、焦っているのが、伝わってくる。
ブーブーブー。
バイブが鳴った。
分太の、メールを見たのか。
すぐに、優介からの、返信がきた。
そして僕が、内容を表示しようとしたら。
キーンコーンカーンコーン。
予鈴のチャイムが鳴った。
それから僕は。
携帯電話を、引き出しに入れてから。
大急ぎで、テスト用紙を片付けて。
授業の準備をして。
担当クラスの教室に、向かった。




