洸希への報告
翌日。
休みの日。
とはいえ、朝早くに。
メールするのも、よくないだろう。
そう思い、10時になり。
洸希君にメールすることにした。
『洸希君。 こんにちは。
さっそくだけど。
今回のことで、報告があるんだけど』
あの、一部始終を。 報告しなければいけないことに。
緊張してしているのと。
10時という、朝なのか。 昼なのか。 どっちなのか。
分からない時間。 ということもあり。
無難な、あいさつをしてしまう。
『勇大さん。 こんにちは。
実は、どんなことを話したのか。
気になっていたので。
報告をしてもらえて。
すごく、嬉しいです!』
いっぺんに、送信すればいいのに。
今から送るぞ! という、意志の表れからか。
まずは、 “報告をする” という内容だけで。
送信してしまう。
でも、そのせいで。
洸希君が、期待していたことを知り。
自分で自分の首をしめてしまう。
でも、皆とも、約束したし。
優介への、連絡のことも。 伝えないといけないし。
何が何でも、送るしか、ないんだ!
もし、この場に、泰樹がいたら。
大げさだな! と、つっこまれてしまう。
かもしれないけど。
僕は、決意を固めた。
そして、さっそく。
続きの文を打つ。
『今回は、前回と、同じ公園に。
洸希君以外の、皆が。
集まって』
集まっての後に、 “くれた” と打ちかけて。
“くれた”の文字だけを消す。
もう、対等なんだから。
“くれた”は、おかしいよな。
前は、僕のために、来てもらってる。
と思っていたけど。
今は、皆が、1ヵ所に。
集まっているんだもんな。
ここでまた、“くれた”と。 送ってしまうと。
優介たちに悪いよな。
そこで、優介の言葉を、思い出し。
改めて、優介のためにも。
ちゃんと、洸希君に、送らないと!
と、思い直す。
そして、続きを打つ。
『集まったんだけど。』
あれ? なにについて。
話したんだっけ。
いきなり、優介が、倒れたことや。
容疑者扱いされたことを、話すことで。
一気に、刺激を与えないように。
差し支えない話から、報告していくことにした。
けど、そのあとの出来事のほうが。 濃すぎて。
その前に、なにを話したか。
忘れてしまっていた。
あぁ。 たしか……優介が。
僕の負担を減らしてくれるって話と。
心音さんが、病室に来てくれた。
って話をしている、最中に、優介が……。
よし! ありのままを、打つぞ。
『集まったんだけど。
そこで、優介が、僕の負担を減らそう。
って言ってくれて。
そのあとに。
僕らが、倒れた後の、病室に。
心音さんが、来てくれたよね!
って、話をしたんだけど。
なぜか、優介だけが。
そのことを、覚えていなくて。
ここからは、僕が見た、様子になるんだけど。
覚えていないはずなのに。
必死に、思い出そうとしていて。
優介は、頭が痛くなったらしく。
こめかみ辺りを、押さえていて。
なんだか、苦しそうにしていて。
最終的に、倒れてしまった。
それから、泰樹が、救急車を呼んで。
優介は、病院に搬送されて。
僕らも、救急車を、追いかけたんだけど。
受付で、優介のフルネームが言えなくて。
先に、救急車に同乗してた、秀寿さんに。
協力してもらって。
ようやく、中に入れたんだけど。
家族の同意が必要って、言われて。
僕らは、家族の到着を、待ってたんだけど。
家族が、警察官を、引き連れて来て。
僕らが、優介に危害を加えた、容疑者だと。
警察官に、思われていると。 察した、泰樹が。
違和感ない設定を、瞬時に、考えてくれて。
僕らが、警察署で、事情聴取するときに。
容疑者にならずに、すんだけど。
結局、優介の容体は。
分からないまま、なんだよね。
そして、ここからは。
洸希君にも、注意してほしいんだけど。
優介の携帯電話は。
まだ、警察が、預かっているかもしれないから。
優介の、携帯電話には。
なんにも、連絡しないようにしてね。
今は、優介からの連絡を。
皆で、待とうってことに、なっているから。
洸希君も、そのつもりでいてね。
長文で、送ってごめんね。
分からないことや。
不安なこと、とかあったら。
なんでも聞くから。
僕には、電話も、メールも。
してきていいから。
素直な気持ちを、教えてね』
そして、送信した。
おそらく。
すんなり、受け入れられずに。
混乱するだろうなぁ。
それから、僕は、メールを打っている最中に。
思い出したことについて、考えていた。
そうだ。 あのとき、優介は。
必死に、思い出そうとして。 倒れていたんだった。
あのときは、倒れたことが、ショックで。
気づかなかったけど。
もし、それが原因で、倒れたんだとしたら。
記憶が関係しているのかもしれない。
それなら、意識が戻ったときには。
記憶が、消えている可能性も。
ある……のかもしれない。
せっかく、敬語も解消して。
呼び捨てで、呼び合える仲に。
なったばかり、だったのに。
あのとき、むりやり。
思い出させようとしたせいで。
もしも、記憶を失くした。
なんてことになったら。
僕は、申し訳なさと、ショックで。
一生、自分を憎むだろう。
どうしよう!
1人で、よからぬことを考えていたら。
ピロンッ!
メールの、通知音が鳴った。
確認すると。 洸希君からだった。
『まず、1つずつ、整理させてください。
勇大さんの負担を減らすっていう話は。
この前、優介さんから、聞きました。
それで僕も、微量でも。 力になれたら。
と思っていたところで。
次に、心音さんが、病室に来てくれたこと自体は。
覚えていますけど。
僕には、はっきりと見えずに、ぼやけていて。
なにを言っているのかも。
分からなかったんですけど。
優介さんは、心音さんが、来てくれたことさえ。
覚えていなかった。 ということですよね。
そしてそのことを。
思い出そうとして、倒れた。
って、書いてましたけど。
大丈夫なんですか?
あっ。 優介さんの容体は。
勇大さんも、分からないんでしたね。
そしてその後、病院にて。
警察官に、容疑者だと、思われたけど。
泰樹さんのおかげで、容疑が晴れたということ、ですよね。
それと、優介さんへの。
連絡は、控えるように!
これについては。
気をつけますが。
全体的に、僕の解釈は、合ってますか?』
洸希君は、ちゃんと理解してくれた。
前に、優等生と呼ばれるのが。
嬉しくないって、言っていたけど。
思わず、僕もそう、呼んでしまいたくなるほど。
洸希君は、正真正銘の優等生だと、思った。
もちろん、本人には、言うつもりはないけど。
そんなことを、思いながら。
返信する文を打つ。
『合ってるよ!
驚いたでしょ。
僕自身も、自分の身に起きた出来事、だとは。
思えないほど、驚くことばかりだった。
けど今は。
優介からの、連絡を待つのみだと。
思っているよ』
『たしかに。 驚きましたけど。
皆さんの疲労感や、衝撃とは。
比べ物にならないだろうな。 と思ったら。
素直に驚きました。 っていうのは。 違うのかもな、と思って。
今回は、集合できなかっただけで。
僕も、皆さんと同じ体験をする、可能性だって。
充分にあったのに。
驚きました。 と言ってしまうことで。
自分は、関係ないです。
と、線引きしてしまう気がして。
他人事として、捉えてしまっている気がして。
なんだか、冷たい感じがしてしまうんです。
すいません。
うまく、伝えられないんですけど。
皆さんのように。 実際に、体験してない僕は。
共感しているようで。 それは、共感しているつもりであって。
実際には、共感できていない。 とも、思うんです。
結局、なにが言いたいのか。
分からなくなってしまったんですけど。
皆さんの心情を、察することは出来ても。
共感は出来ていない気がするんです。
皆さんは、優しいので。
僕には、こんな思いをさせなくて、よかった。
と思ってくれている、かもしれませんが。
僕からしたら。
僕だけ、集合できていないことが。
申し訳なくなるんです。
今回のことについて。
申し訳なさを初めとする。
いろんな気持ちが、あるのに。
驚きました。 の、一言で終わらせてしまうのは。
なんか、違うな。
と思ったので。
この言葉を、送るのは、やめよう。
と、思ったんです。
かといって、相応しい言葉も。
見つからなかったので。
素直な思いを、気持ちを。
述べさせて、もらいましたが。
結局、まとまらずに。
長文に、なってしまい。
すいません』
このメールを見て、僕は。
洸希君は、落ち着いているなぁ。
やはり、優等生かもしれないな。
と思った。
『洸希君。
言いたいことは。
大体、分かったから。 大丈夫だよ。
でも、集合できなかったことを。
悔んだりはしないでね』
そして、返信をした。
『ありがとうございます』
『じゃあ。 また、なにかあったら。
連絡し合おうね』
『はい。 よろしくお願いします』
『こちらこそ。 よろしくね』
そして、洸希君との。
メールのやりとりを終えた。
翌日からは。
ただひたすら。
優介からの連絡を待ち続けた。
だけど、それから、1週間が経っても。
優介からの、連絡はなかった。




