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僕らの予想

 


 それから、1時間後。



 遠目に、優介の家族らしき男性が。

 案内されて。 病室らしきところに。

 入って行くのが見えた。


 そして、その男性は。

 警察官を2人、引き連れていた。


 その様子を。

 僕らは、見逃さなかった。



 「もしかして、あれって。

  優介の家族かな?」


 僕が言うと。


 「そんな感じだけど。

  なんで、警察と?」


 分太も不思議そうだ。


 「おそらく、見知らぬ場所で。 倒れたから。

  誰かに、呼び出された挙句。


  事件に巻き込まれた、可能性がある。

  と思われていて。 


  一緒にいた、オレたちが。

  容疑者に……」


 泰樹が、最悪の事態を予想するが。

 最後まで、言葉を言わずに。

 むりやり、言葉を飲み込んだように、思えた。


 そして、徐々に、声色が変わり。

 口調も力強くなっていき。

 ふつふつと、怒りが込み上げてきている。


 という感じが、伝わってきた。


 その様子はまるで。

 かなり警察を、恨んでいるようだった。


 そこまで、恨むほどのことが。

 過去にあったんだろうなと。

 察したが。


 あえて、そのことについて、触れてはいけない。

 そんな気がした。


 そしてぼくは、呆気にとられていた。


 「は? おまえそれ、どういうことだよ!

  おれたちが、あいつに。

  なにかした、とでも言うのか?」


 分太が、少し、怒りながら言う。


 「あぁ。 違うよな。 本当は、違うけど。

  それを信じないのが。 警察だ。

  やってないといっても、信じてもらえないんだ」


 泰樹の口調は、さっきから。

 かなりの怒りが込められている。


 やはり、過去になにかあったようだ。


 けど、少し、話が逸れている気がする。


 「僕たちはただ。

  話していただけなのに……」


 僕が、さりげなく、話を戻すと。


 「実際には、そうでも。

  その場に、いない人たちから見たら。


  俺たちが、優介になにか危害を加えて。

  計画的にあの状態に、させたって。

  思われても、仕方がないってことだよ!」


 泰樹の怒りは。

 まだ収まっていないように、見えた。


 「でも、おれたち。

  救急車、呼んでんだぞ。

  そのことが、分かって。


  心配して呼んだと、認識されれば。

  愛情があるなら。 危害を加えてないと。

  認められるんじゃねぇのか?」


 焦りながら、分太が言うが。


 「オレたちにとっては、愛情でも。

  状況を聞いた人の、受け取り方によっては。

  疑いを晴らすために。 あえて呼んだという。

  計画の一部だと、思われているかもしれない」


 泰樹に、一瞬で、打ちのめされる。


 「もしかして。

  僕たちの年齢が、バラバラだから。

  怪しまれてたり、するのかな?」


 僕が、気になったことを言うと。


 「まぁ。 

  たしかに、それもあるのかもしれねぇな」


 分太が、珍しく、共感してくれた。


 そして僕は、今回のことで初めて。

 バラバラの年齢で、怪しまれるのは。

 心音さんのこと、だけじゃないんだと痛感した。


 「ただ、話しただけ、だっていうのに。

  犯罪者扱いされてたまるか!」


 泰樹は、呟くように、言っているけど。

 今にも、その怒りが、爆発しそうだ。


 「なんとしてでも、無実を証明する。

  心音さんのためにも。

  ここで皆が。

  バラバラになるわけには、いかないんだ!」


 そして、この泰樹の口調には。

 怒りの中にも、力強い、決意があるのを感じた。


 「でも、どうやって?」


 僕が訊くと。


 「15分だけ、時間をくれないか?」


 「分かった」


 僕が、返事をした直後に。

 泰樹は、僕らから、少し離れたところにある椅子に。

 腰かけていた。 そして、1点だけを見つめて。

 考え込んでいるようだ。


 「ねぇ。 それはそうと、優介、大丈夫なのかな?」


 本来なら。

 1番に、優介の容体を、心配しないといけないのに。

 警察官の姿を見てから。 自分たちのことしか。

 考えていなかったことに、気づいた。


 「家族は、来たはずなのに。

  なんにも、報告がないってことは。


  やっぱり、家族の許可が、おりなかったのかな?

  そもそも、容疑者だと、思っている相手には。

  容体すら、教えられないのかな?


  だったら、面会なんて。

  なおさら、無理なのかもしれないね」


 そして、僕が、予想すると。


 「ていうか、大体。

  泰樹が、考えすぎなんだよ。


  なんで、警察官、見ただけで。

  ここまで、ビビらなきゃいけねぇんだよ!


  それに、あの人が。

  優介の家族だって、保証はねぇし。


  泰樹も、勇大も。

  考えすぎなんだよ!」


 分太が、笑いながら言うが。

 僕にはそれが。

 むりやり笑っているように見えた。


 「じゃあ、どうして。

  僕らへの、報告がまだなの?


  家族の同意が得られなくても。

  同意がなかったことを。

  伝えにくるはずだよね」


 僕も、分太のむりやりの笑顔に、気づいているから。

 素直に、共感してあげればいいのに。


 いつものように、素直になれずに。

 ここでも、反論してしまう。


 「でも、それがないってことは。

  やっぱり、泰樹の言うように。

  僕たちが……」


 「やめろよ! それ以上は、言うな」


 僕の声を遮って。 分太が止める。


 「まだ、なにも分からないだろ。

  優介の容体も。 あの、男の人の正体も。

  それなのに、おれたちだけで。

  勝手に予想するのは、よくないって。


  それに、既に。

  優介の意識が戻っていて。

  おれたちの無実を証明している頃、かもしれないし」


 分太は、なにかを隠そうとして。

 むりやり、言い訳しているように、感じた。


 「その可能性は、低いな」


 今まで、黙っていた、秀寿さんが。

 急に、口を開く。


 「意識が戻ったからといって。

  瞬時に、その場の状況が。

  理解できるかも、分からない。


  警察官がいたら。

  なおさら、混乱すると思うぞ」


 「たしかに」


 「それに、意識が戻ったからといって。

  身体になにも、影響がないとも言いきれない」


 「それってつまり」


 「優介は、頭を痛がっていた、故に。

  脳に異常をきたし。


  記憶や身体に、影響が及んでいる可能性もある。

  ということだ。


  だから、意識が戻っていても。

  記憶がない可能性もある、かもしれん」


 「そんなぁ……なんで?」


 「勇大。 これは、予想であるぞ。 

  真に受けるでない」


 「あっ。 そっか」


 ぼくが、納得した直後に。

 秀寿さんが、さらに話を続ける。


 「だから、意識が戻っていた、としても。

  お主らの無実を証明など、できないのである。


  そもそも、まだ、意識すら。

  戻っていない可能性だって、あるがな」



 秀寿さんは。

 ありとあらゆる可能性を、述べてくれただけなのに。


 僕は、不安でいっぱいになった。


 優介の容体も。 僕らが、容疑者だということも。


 予想でしかないのに。


 明らかに違う、とは思えないほど。


 実際に、ありそうな内容なので。



 その予想が、現実になりそうで、怖いのだ。






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