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3回目の会議

 

 それから、泰樹に言われた通り。


 次の日の、昼休憩に。

 メールの一斉送信をした。


 それからのやりとりが。

 かなりスムーズになった、からか。


 今週の土曜日には、再会できることになった。




 土曜日。



 今回で、皆と会うのは。

 3回目だ。

 でも、日頃から、連絡を取り合っているからか。

 3回以上会っているように、感じた。



 今回、洸希君は。

 どうしても。

 お母さんへのいいわけが、思いつかないから。

 という理由で、不参加となった。


 なので、僕は、1人で。

 いつもの公園に、集合する。


 公園に着くと。

 前回同様。

 既に、分太と、優介が来ていた。


 「お待たせー。 早いねぇ」


 昨日まで、連絡を取り合っていたので。

 “久しい”という感じが、全くなくて。

 前回と、第一声が変化していることに、気づく。


 「おぉ。 来たか」


 「待ってたよー」


 そして、2人が。

 快く、迎え入れてくれた。


 「そっか。 今日は、洸希。

  いないんだったな」


 メールのやりとりの時に。

 洸希君は不参加だと。

 当事者の皆が、知っていたが。


 「たしかに。 勇大と洸希は、一緒に来るって。

  イメージあるもんね」

 

 洸希君がいないことに、僕と再会して。

 改めて気づいたようだ。


 「僕も、今日は、なんだか。

  物足りない感じがして。

  やっぱり、洸希君もかけがえない存在だよなぁ。

  って、改めて、思ってた」


 そして僕も、洸希君の大切さを実感する。


 「あとは、泰樹と、秀寿さんだね。


  そういえば、メールの一斉送信機能。

  使ってくれたんだね!」


 優介が、嬉しそうに言う。


 「たしかに。 言われてみれば、そうだな。

  気づかなかったわ!」


 そして、分太も共感している。


 「そうそう。 泰樹に、進められて。

  優介に教わったことを、思い出しながら。

  やってみたけど。 

  そもそも。 そんなに、難しくないから。

  難なくできたよ」


 「そうなんだ。 なら、よかった」


 話し終えたら。

 泰樹と秀寿さんが、集合して来た。


 「ごめんごめん。 待った?」


 泰樹が言いながら。

 秀寿さんと一緒に。

 公園に入って来た。


 「いや。 まだ、集合時間前だから。

  大丈夫だよ」


 優介が言うと。


 「なら、よかった」


 泰樹は安心していた。


 僕が、腕時計を見ると。

 9時55分で。

 集合時間の、5分前だった。

 

 「そうそう。 泰樹。

  ありがとね。

  一斉送信機能のこと」


 僕がお礼を言う。


 「あぁ。 いい機会だと思ってさ」


 泰樹が返事して。

 

 「ちょうど今、そのこと。

  話してたんだよ!」


 優介が、嬉しそうに言う。


 「そうか。 難なく、できたみたいでよかったな!」


 泰樹も、つられて、嬉しくなったのか。

 微笑んでいる。


 「えっ。 なんで分かるの?」


 僕が訊くと。


 「外まで、聞こえてたし。

  それに、ちゃんと、送れてるの見れば。

  分かるだろ」

 

 泰樹にさらっと言われる。


 「そっか。 そうだよね」


 僕らは、そんなことを、話しながら。

 公園の中に、入って行った。


 そして、秀寿さんは。

 そんな僕らを、遠目から見ながら。

 公園の入り口から、左側にあるベンチに。

 腰をおろしていた。


 そして僕らは、公園の入り口から見て。

 右側にあるベンチの周辺で。

 立ち止まり。


 会議を始めることにした。


 「じゃあ、会議を始めます。

  本題……」


 僕が話しだすと。


 「待って!」


 泰樹が、慌てて。

 僕の声を遮る。


 「どうしたの?」


 僕が訊くと。


 「もう、その言い方も、やめないか?」


 「えっ。 なんで」


 「堅苦しいんだよ! 分かるだろ。

  ここは学校でも、会社でもない。


  いわば、プライベートだろ。

  休みの日まで。 気を張る必要ないだろ!


  せっかく、タメ語で話せるように、なったのに。

  本題だけ、敬語で、とか。

  区別しなくて、いいんだよ!


  区別されると、こっちも。

  身が引き締まって。

  全然、落ち着かなくて。


  そのうち、集まるのが。

  億劫になるぞ。


  勇大は、それでもいいのか?」


 「いや! いやだよ。 いいはずがないよ」


 「だろ! それに、かしこまらないと。

  本題、話せないわけでもないだろ。


  だから、タメ語に切り替えたんなら。

  一時的でも。

  敬語に戻す必要なんか、ないんだよ!」


 「たしかに。 そうだよね。

  でも、心音さんのことは。

  重く受け止めないといけない。 と思うから」


 「別に、タメ語で話すからといって。

  軽視しているわけではないだろ」


 「それはもちろん」


 「だったら、かしこまらなくて、いいと思うぞ」


 「でも、急には、無理だよ」


 なんだろう。 この感じ。

 今までは、頭で考えて。

 言葉として、発していたのに。


 今では、素直に、思っていることを。

 そのまま、発言できている。


 もしかして、これが。

 信頼関係が、できてきた。

 ということ、なのだろうか。



 「ふつうに話す流れで。

  話せば、いいんだよ」


 「なるほど」


 「じゃあ、ついでに。

  俺からも、言わせてもらうけど。


  勇大が。 本題を、切り出すって、流れも変えない?

  勇大は、俺たちを呼び出すことで。

  集まるきっかけを作ってくれた。ってだけなのに。


  すべてのきっかけを、勇大任せ、にしている気がして。

  勇大が、動かないのに。 俺たちは、出しゃばって。

  勇大より先に、行動してはいけない。 と思っていたから。


  結局、勇大から招集かけてもらったり。

  本題を切り出させたりしていて。 知らぬ間に。

  勇大に、かなり負担かけているんじゃないかなって、思って。


  勇大も、責任感が強いから。

  断らないだろうし。


  なかなか、日時が、決まらなかったときも。

  勇大が、当たり前のように。 皆の日時を調節してくれるから。

  安心して。 俺も、希望日を言ったりして。

  自然と、任せっきりになっていたけど。

  

  それが、けっこうな負担になっていて。

  自分の仕事もしながら、するのは。

  かなり、大変だっただろうな。

  って、いまさら気づいたんだ。


  だから、今後は、勇大が、やっていたことを。

  皆で、手分けしてやろう、と思って。

  今回、皆にも、そうやって話したし。


  本題を切り出すのも。

  決めたわけではないけど。

  自然と、勇大から、となっていた、この空気を。

  変えようと思って。


  だから、この前も言ったように。

  勇大も、1人で、全部しないと!

  なんて、思わないでね」


 優介が、暖かい言葉を。

 改めて言ってくれた。


 「さんせーい!」


 手を挙げながら、泰樹が言った後に。


 「勇大も、賛成だろうが。

  もし、反対だとしても。


  これからは、おれたちが、出しゃばって。

  むりやりにでも、勇大に負担かけないように、するから。

  

  覚悟しとけよ!」


 分太に、言い方は、強いが。

 珍しく、愛ある、言葉をいわれた。


 そして、来た時からずっと。

 同じベンチに、同じ体勢で。

 座ったままでいる、秀寿さんのほうを。


 皆で一斉に見ると。

 ゆっくりと、頷いていた。


 そもそも、僕らの話し声が。

 聞こえているのかさえ。

 不明だが、頷いたということは。

 聞こえているんだと。

 むりやり、自分に言い聞かせる。


 「じゃあ、本題に……」


 僕が口走ると。


 皆に、一斉に見られる。


 「入ってください」


 そして、本題を切り出すことを、委ねる。


 「そもそも、心音さんの、お母さんって。

  俺たちと、心音さんの関係を知っているのかな?」


 優介が言う。


 「たしかに。 勇大は、前回、なんて説明した?」


 泰樹が訊いてきた。


 「たしか。 あの時は……友人!

  友達のふりをしたはず」


 「でも、どこで、出会うんだよ」


 分太が、いかにもありそうな。

 恋愛話のように、訊いてきた。


 「病院って言ったけど。

  マズかったかな?

  嘘ではない……と、思うんだけど」


 「それで、怪しまれてなければ。

  いいと思うんだけど。

  どうだった?」


 優介が訊く。


 「まったく、怪しまれなかった。

  むしろ、受け入れてた」


 「そうなんだ」


 「じゃあ、おれたちが行っても。

  大丈夫そうだな」


 分太が、明るく言う。


 「だと、いいけど。

  突然、押しかけて。

  迷惑じゃないかな?」


 優介が心配すると。


 「そうかもしれねぇけど。

  そんなこと、気にしてたら。

  いつまで経っても。

  謝罪に行けねぇだろ」


 分太が活を入れる。


 「まぁ。 たしかに、そうだね」


 そして、優介が納得している。


 「それにしても。

  早く、会いたいなぁ……」


 分太が呟く。


 「おれたちの分まで。

  ちゃんと、あいさつしてきてくれ。

  任せたぞ!」


 泰樹が、力強く、想いを託す。


 「任せろ!」


 分太は、なぜか。

 とても嬉しそうだ。


 「オレの場合。 うっすらしか、見えてないけど。

  心音さんって、清楚そうな人だよな」


 泰樹が予想すると。


 「あぁ。 本物も美しいに決まっている」


 分太が、少し、二やつきながら言う。


 「勇大。 どうだった?」


 泰樹が訊いて来たので。


 「病室で、見た姿と同じ、だったよ!」


 実際に。

 お見舞いに行った時の、感想を伝える。


 「いや。 なんか、もっと言い方が、あんだろ!」


 「言い方ってなに?

  別人じゃなくて、本人だってことが。

  分かれば、いいでしょ」


 「そうじゃなくて。

  気品がありそうとか。

  端正な顔立ちだったとか。

  もっと、あんだろ!」


 「むりだよ。 一瞬で、そこまで、分かるわけないし。

  短時間で、ジロジロ見るわけにも、いかないでしょ。

  それなら、今度、自分でじっくり見ればいいでしょ」


 思ったことを、素直に言えるようになったせいか。

 やはり、分太の口調が許せず。

 口論になってしまった。


 「あぁ。 そうする!」


 分太は、明らかに、怒っている。


 「なんで、分太はそんなに、怒っているの?」


 「勇大! それ以上は、やめといたほうがいいかも……」


 泰樹に、慌てて止められたので。


 「まぁ。 ……分かった」


 むりやり、納得する。




 そういえば。

 さっきから、優介が。

 ずっと、無言のままだ。


 そのことに気づいて。

 優介を見ると。

 首を傾げていた。


 どうしたんだろう。


 「優介。 どうしたの?」


 気になったので、本人に訊いてみた。


 「ごめん。 

  全然、話についていけないんだけど。


  勇大以外、心音さんに。

  会ったことないのに。 


  どうして、心音さんの見た目が。

  分かるの?


  さっき、病室で見た。 って言ってたけど。

  心音さんが、お見舞いに来ていて。

  意識が戻って、会ったってこと?

 

  でもそれだと、会ったことある。

  ってことになるよね。


  えっ。 ……どういうこと?」


 優介は、理解不能なことを言われて。

 かなり動揺しているようだ。


 「おれたちには。

  意識がないときの、記憶があるんだよ。

  逆に、なんでお前だけ、記憶ないんだよ!

  当事者なのに」


 分太が、相変わらず。

 強めの口調で言う。


 「分からないけど。 気づいたら。

  病室のベッドで、寝てたんだけど。

  皆も、そうじゃないの?」


 「僕たちは、倒れたあとの、意識ない間。

  病室で、幽体離脱のような状態になって。


  その状態で、下に眠る自分の姿を見下ろせたり。

  病室に訪れる人たちの姿が見えたり…… っていう。

  不思議な体験をしたんだけど。 覚えてない?」



 優介は、しばらく。 

 一点だけを見つめて、考え込んでいたけど。


 急に。

 右側のこめかみに、右手を当てて。

 強く目をつむったまま。 俯きだして。


 かなり、頭が痛そうにしている。


 「ごめん。 ……ぜんっぜん、おもい……だせ……ない」


 そして、かなりきつそうなのに。

 その状態でも。 なんとか、つっかえながら、返答してくれていた。


 「ゆうすけ……?」


 心配になって、名前を呼ぶが。

 まったく、反応はなかった。


 「頭、痛いのか?」


 分太も、異変に気付いたのか。

 心配そうに、声をかけるが。


 優介からの、返事はなく。


 「ヴッ!」


 うめき声を上げていて。


 優介の頭痛は、治まるどころか。

 悪化しているように見えた。


 「ゆうすけ。 大丈夫か?」


 ただならぬ様子に。

 泰樹も、心配しているが。


 変わらず、優介の返答はなくて。


 心配にはなるが。

 なにも出来ずに、ただただ、見守っていると。


 徐々に、うずくまっていき。




 優介は、気を失い、その場に倒れた。





 今まで、かなり痛そうにしていた。


 とはいえ、突然、人が目の前で倒れた。

 という驚きと、衝撃から。


 僕は、身体が固まってしまい。

 倒れてしまった優介を、見つめたまま。


 呆然と立ち尽くしていた。


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