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メール

 


 公園に、沈黙の状態が、続いた。



 もし、公園の周りを通る人が。

 いたとしたら。

 この公園には、誰もいないんだろう。

 そう思われても、おかしくないくらい。

 僕らのいる公園は、静まり返っていた。


 気づけば、30分が、過ぎていた。


 せっかく、皆で。

 予定合わせて、集まったのに。


 また、皆と会えると思ったら。

 かなり嬉しくて。

 不思議と、仕事もはかどって。

 今日が、待ち遠しかったのに。


 皆で集合することに、こだわって。

 やっと、会えたというのに。


 皆が、公園内のあちこちに、散らばっていた。


 そして、だれ1人。

 目を合わせようとしなくて。


 分太さんは、中央の滑り台付近に、立ったまま。

 携帯電話をいじっていて。

 秀寿さんは、入り口の左側にある、ベンチに座っていて。


 優介さんは、入り口付近に、立ったまま。

 腕を組んで、一点だけを見つめていたり。

 たまに、あごに手を当てていたり。

 首を傾げたりしていて。

 かなり、考え込んでいる、ように見えた。


 そして、洸希君は、相変わらず。

 ブランコの座面に、座って、俯いたままで。

 かなり、ショックを受けてしまったようだ。


 それから、30分前と。

 あまり変わっていない人が、もう1人いた。

 泰樹さんだ。


 泰樹さんも、30分間、ほぼずっと。

 洸希君の目の前である、ブランコの手すりの内側にいて。


 洸希君の様子を、うかがっている。

 ようにも見えたが。

 たまに、全体を、見渡したりも、していた。


 そして僕は。

 入り口の右側にある、ベンチの、奥で。

 全然、落ち着かなくて。


 どうしたらいいか、分からず。

 立ったまま、その場を、うろうろしたり。

 公園中を、見渡したりしていた。


 別々のことをしているのに。

 皆に、共通してしていることが。

 ただひとつ、あった。

 それは、言葉を発しないこと。


 だれ1人として、なにも喋らなかったのだ。


 それぞれ、思うことはあるだろうに。


 自分の発した言葉のせいで。

 状況がさらに悪化しては困る。


 僕は、そう思って、なにも言えないでいた。


 けど、もしかしたら、皆も。

 同じ気持ちなのかもしれない。



 こんなに近くにいて。


 皆の姿は、見えているのに。


 まるで、別世界にいるように、遠くに感じた。



 そして、まるで、1人1人が。

 透明なガラスの中に、閉じ込められていて。

 その場から、1歩も動けないように。

 だれ1人として。 

 その場を、移動する人は、いなかった。



 そして、気まずいような。

 申し訳ないような。


 なんとも言えない、不穏な空気が。

 公園中に、流れていた。



 このまま、沈黙が続いていいのだろうか?

 皆、わざわざ、集合してくれているのに。


 せっかくの、皆の貴重な時間を。

 台無しにして、いいわけがない!


 僕は、この、なんともいえない。

 微妙な、雰囲気が嫌になり。

 耐えられなくなっていた。


 かといって、打開策も思いつかず。

 どうしよう……。 と考えながら。 

 公園内を、見回していると。


 ふと、分太さんに。

 目が留まる。



 携帯電話で、なにしてるんだろう?



 あっ! そうだ。


 僕は、打開策に、なるかもしれないことを。

 思いつく。


 そして、すぐに、実行に移す。


 自分の携帯電話を取り出して。


 公園内にいる、皆。

 1人ずつに、メールを送る。


 まず、優介さんに。


 『やっぱり、こんなのいやだ。』


 と送って。


 次に、洸希君に。


 『せっかく会えたのに、沈黙なんてね。』


 と送り。


 続いて。 泰樹さんに。


 『これで、最後にするから。

  ごめんなさい。』


 と送った後に。


 分太さんに。


 『僕が、この空気を変えないと。』


 と送って。


 最後に、秀寿さんに。


 『こんなの、おかしいよ!』


 と送った。


 急いで打ったのと。

 正直な気持ちを、心がけたので。

 タメ語になってしまったけど。

 なんとか、送信が出来た。


 そして、公園中に、通知音が。

 連続で、鳴り響く。


 僕は、皆が気づいたか。

 確認するために。 公園内を見回すと。

 皆が、携帯電話を、手にしていた。


 皆、気づいてくれたようだ。


 そして、左側から、視線を感じたので。

 そっちに、目線をやると。


 優介さんが。 僕のことを。

 心配そうな顔をして、見ていた。


 「あのさぁ。 前から、思ってたんだけどさ」


 静まり返った公園に。

 分太さんの声が響く。


 それがきっかけで。

 一斉に分太さんに、皆の視線が集まる。


 「一斉送信機能って。

  知らねぇの?」


 一気に、タメ語になっていて。

 驚きながらも。


 分太さんの目線が。

 僕に向けられているので。

 一応、返事をする。


 「えっ。 なんのこと……ですか?」


 分太さんが、タメ語だからか。

 少し、敬語を使うのを、ためらってしまう。


 「だから。 メールを。

  一斉に、複数の人に。

  送れる機能が、あるんだよ。

  なぁ。 機械のプロ!」


 少し、怒りながら。

 そう言って。

 分太さんは、優介さんのほうを、見る。


 「機械のプロではない、と思うけど。

  そういう機能があるのは、知ってますよ。

  っていうか、その口調……」


 皆が、気になっていたことを。

 優介さんが、呟くように言う。


 「勇大さん。 よければ、教えますので。

  真ん中に、集まりませんか?」


 「はい。 

  お願いします」


 優介さんに、言われるがまま。

 導かれるようにして。

 僕は、真ん中に行く。


 そして、さっきから。

 ずっと、手に持っていた。

 自分の携帯電話を、優介さんに見せる。



 それから、優介さんは。

 こと細かに、分かりやすく。

 僕に、メールの一斉送信のやり方を。

 教えてくれた。


 「どうやって、やるんすかー!」


 「僕にも、教えてください」


 「少し、興味あるなぁ」


 そして、気になったのか。 徐々に。

 公園内に散らばっていた、皆も。


 泰樹さんを、筆頭に。

 洸希君と、秀寿さんも。

 僕らのところに、集合する。


 そして、皆で。

 僕の携帯電話を、中心にして。

 囲むようにして、集う。


 さっきまで、手が届かないほど。

 離れていたのに。


 今では、近すぎるくらい。

 密集していた。




 「こんな感じなんだけど。

  分かったかな。

  説明、分かりづらくなかった?」


 説明を終えて。

 優介さんが、心配そうに言う。


 「大丈夫です。

  すごく分かりやすかったです!

  ありがとうございました」


 「なら、よかった」


 「今後の、メールのやり取りは。

  そうやってすると、楽だと、思います。 


  じゃないと、今までみたいに。

  1人ずつに、同じ文、送ってたら。

  大変でしょ」


 いつの間にか、集合していた。

 分太さんが言う。


 確かに。 

 優介さんに、教わったやり方のほうが。

 かなり、楽だった。


 それに、分太さんのおかげで。

 バラバラになっていた、皆が。

 集結できたことだし。

 感謝しないといけないな。



 「そうですね。 分太さん。

  いろいろと、ありがとうございます!」


 分太さんのほうを向いて、言うと。


 「あっ。 ……あぁ。

  じゃあ、本題、というか。

  また、話し合い、始めましょう」


 かなり、照れくさそうに。

 戸惑いながら。

 分太さんが言う。


 そして、よく見ると。

 少しだけ。

 顔が、赤くなっているように、見えた。


 気のせいかもしれないけど。




 あれっ?

 口調、敬語に戻っている。


 そして、分太さんが。

 また、敬語で話していることに、気づく。


 もしかしたら、自分、以外の皆が。

 敬語で、話し続けているから。


 また、敬語に、戻したのかな?

 本当のことは、分からないけど。


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