入り口での謝罪
駅から、しばらく歩き。
公園の横の、坂を、上っていると。
公園のほうから、会話する声が聞こえた。
当事者のうちの、2人が。
僕たちより先に、集合しているようだ。
「誰か、もう来ているみたいだね」
洸希君に、声をかける。
「そうですね」
誰だろう?
そう思いながら。
公園に入ると。
その答えは、すぐに分かった。
分太さんと、優介さんが。
言い争っていた。
ように見えるだけで。
実際には、分太さんが。
なにか、熱心に言っていることに、対して。
優介さんが。
分太さんを宥めているようだった。
そこに、僕らも、合流する。
「こんにちはー」
「お久しぶりです」
僕が言った後に。 洸希君も言う。
「どうかしたんですか?」
僕が訊くと。
「いや。
分太さんが、提案があるみたいで」
優介さんが、分太さんを見ながら、言う。
僕らも、分太さんのほうを見る。
「礼儀正しいのは。
いいと思うんだけど。
“敬語、使うのやめませんか?”
そりゃあ、初対面の時は。
さすがに、皆、敬語で話すでしょうけど。
そろそろ、敬語じゃなくても。
いいんじゃないかな。
と思いまして」
皆の注目を集める中。
分太さんが、怯まずに言う。
「でも、会うの自体は、2回目ですよね。
さすがに、早すぎませんか?」
僕がそう言うと。
「やっぱり、無理して、一致させなくても。
いいんじゃないでしょうか」
優介さんが、言ったら。
「こんにちはー!
なに話してるんですか?」
泰樹さんと、秀寿さんが。
集合してきた。
そして、優介さんが。
丁寧に、経緯を、説明する。
「えっ。 もう会議、始めてるんですか?」
泰樹さんが、驚きながら、言う。
「いや、そのつもりはなかったんだけど」
僕は、敬語のことを、話していたからか。
無意識に、敬語を使わずに。
話してしまった。
「ごめんなさい。
僕らの会話内容を、話しているうちに……」
優介さんが、申し訳なさそうに。
言った後に。
「そんな風になってたってわけで」
分太さんも、続けていう。
「すいません!
勝手に、会議、始めず。
皆、揃うまで、待つべきでしたよね」
僕が、泰樹さんと秀寿さんに。
深々と、頭を下げる。
「いや。 そもそも、おれが、敬語のこと。
言いだしたから。
それについて、話が始まったわけで。
謝るべきは、おれです。
こういうのは、事の発端に原因が。
あると思うので。
すいませんでした」
分太さんも、謝罪する。
「いやいや。
俺から、会話内容の説明を、始めてしまったので。
まず、謝るべきは、俺なんです。
それに、これは会議、始まってるのかな、って。
うすうす、気づいてはいたんですけど。
泰樹さんと秀寿さんを待とう。
とは言えずに。
話しを進めてしまって。
すいませんでした」
そして、優介さんも、謝罪した。
「皆さん、やめてくださいよ。
頭、上げて下さい」
僕が、頭を上げると。
優介さんと、分太も。
頭を上げていた。
僕は、下を向いていたので。
気づかなかったけど。
どうやら、2人も、頭を下げていたらしい。
僕らが、頭を上げたのを。
確認してから。
泰樹さんが、話し出す。
「この前、言ったばかりじゃないですか。
まぁ。 確かに、オレたちを待たずに。
会議、始めたのは。
ヒドイと、思いますけど。
そこまで、憎んでないですから。
それに、前にも言ったように。
このことについては。
憎しみより、罪悪感のほうが。
強いですって。 ねぇ!」
泰樹さんが、秀寿さんのほうを見る。
僕もつられて。
秀寿さんのほうを見ると。
秀寿さんも、頷いていた。
「それに、こんな姿。
洸希君に、見せちゃダメですって」
泰樹さんの、言う通りだ。
そう思い、洸希君のほうを見ると。
驚いた表情をしたまま。
その場に、立ち尽くしていた。
どうしよう。
洸希君に、情けない姿を、見せてしまった。
「洸希君。 ちょっと、びっくりしたよね!
向こうに、ブランコあるから。
気晴らしに、乗ってみる?」
そう言いながら。
泰樹さんは、滑り台の奥にある。
ブランコのほうに、洸希君を誘導する。
洸希君は、ブランコに、腰かけて。
俯いていた。
そんな洸希君に。
泰樹さんは、なにか、話しかけるわけでもなく。
ブランコの手すりの内側に。
もたれかかっていた。
それからしばらく。
その状態が、続いて。
僕らのいる、公園に。
どんよりとした、空気が、流れていた。
なんで、こんなことに、なってしまったんだろう。
ぼくは、深く、反省していた。




