本題
自己紹介が、終わり。
本題に入ることにした。
「では、本題に入ります。
今回、呼び出したのは。
僕が、皆さんに、相談があったからなんです。
心音さんは……。
皆さんも、ご存じですよね」
皆が頷く。
「僕、心音さんの家に、お見舞いに行ったんです。
でも、お母さんを傷つけ、怒らせてしまって。
後日、謝罪に伺おうと、思ってはいるんですが。
また、傷つけてしまったら、どうしよう。 と思うと、怖くて。
傷つけないようにすればいい。
っていうのは、分かるんですけど。
前回、励ましたつもりが、傷つけてしまっていたので。
そんなつもりはなくても、ふとした言葉で、また傷つけてしまったら。
と思うと、気が引けてしまって。
情けないことなんですけど。
それで、このことを、誰に相談したらいいか、分からなかったんです。
友人に相談しようか、とも思いました。
だけど、心音さんの存在を知らない人に、相談したら。
心音さんとの関係から、説明しないといけなくて。
でも、どう説明したらいいか、分からなくて。
本当のことを言ったところで、信じてもらえないだろうし。
そんなとき、神社に行って。 皆さんの存在を知ったんです。
本来なら、自分が傷つけてしまったんだから。
自力で改善策を見出し、対処するべきなのかもしれません。
でも、考えれば、考えるほど。
“また、傷つけてしまったら、どうしよう”。
という思いがひかかって。 改善策が、思いつかなくて。
でも皆さんなら、改善策を見出して。
より良い方向に、導いてくれるかもしれない。
そう思ったんです。
これは、完全に、僕のわがままなので。
後始末を、勝手に押しつけられても、困る。
わざわざ、呼び出されたあげく。
人がしたことの、後始末なんかしたくない。
そう思うのなら、今すぐ帰ってもらって、かまいません。
でももし、僕の身勝手な頼みを、聞いてくださるというのなら。
初対面だからと遠慮なさらず、率直な意見を。
どうか、お願いします!」
長々と話した後に、深々と頭を下げた。
よし。 僕の想いはちゃんと伝えた。
あとは、皆の反応次第だ。
もし、頭を上げた時に。
1人も、残っていなかったとしても。
僕はやれるだけのことはやった。
だから悔いはない。
そのためにあえて、自己紹介の時。
フルネームで名乗るのを、避けたんだから。
でも、皆が帰っていたとして。
わざわざ、呼び出した意味が、あるんだろうか?
貴重な時間を割いて、来てくれたのに。
ただ、情けない話を、聞かせる為だけに。
足を運ばせたのだとしたら、すごく申し訳ないな。
遠くからわざわざ、来てくれた人も。
いるかもしれないのに。
いや、大半が遠方から、来てくれてるような気がするな。
「どうか、頭を上げてください。
僕たちはあなたに、そんなことをさせるために、集まってないですよ。
事情は分かりましたけど。
どんな事情であれ。 初めから。
僕たちは、集まる予定だったんですよ。
だって、自分以外にも、同じ体験をした人がいるんだと。
判明しただけで、すごく心強かったんですから。
きっと皆さんも、同じ気持ちのはずです」
優介さんのありがたい言葉に、導かれるようにして。
恐る恐る、頭を上げる。
そして、見回すと、1人も欠けていなかった。
「そうですよ。 今、帰ったら、何しに来たか分からないですよ。
とは言ってもようやく、その意味が分かったところですけど」
泰樹さんが、言った後に。
「往復だけでも疲れるのに、自己紹介だけで帰るわけにはいきませんよ。
それに、自力で解決しようとしなくていい、と思います。
誰だって、1人じゃ解決できないことは、あると思います。
だから、人に頼ってもいいんじゃないでしょうか。
それが、必ずしも、友人である必要はないし。
説明がややこしいなら、当事者に相談するのもありだと。
おれは思います。
だから、その……勇大さんの判断は、間違ってないですよ」
分太さんも、フォローしてくれた。




