O・HU・RO・⑤
混合水栓型蛇口の魔導具を完成させて、俺は庭のお風呂場完成予定地に戻る。
結構時間が掛かってしまったので陽は落ちきってはいないものの、空は橙の色が射し始めていた。
自室からパタパタと俺が出て行くのを見かけたのかは知らないが、お風呂場完成予定地に着く時には何やら見物人が午前中より増えていた。
「うおっ!?」
「朝には無かった建物がっ!?」
「ユーリがねっ!ぶわぁって魔法でやったんだよっ!」
「ユーリウス…凄いわね…」
「本当にね…」
ちょうど四人の異母兄姉が帰ってきたところで、庭の建物を見て驚いている。セイ兄は両手を大きく広げて説明している。
くっ…蛇口なんか作ってる場合じゃなかった。カメラ…カメラを創らなくてはっ!
「魔導具…出来たようじゃな…」
「さすがユーリウス様です」
義祖父さんとシーバスが言う。アンタら、俺が作ってる時は興味も示さなかったのに…。
ちなみにレイラ母さんもレイナを抱いてここに来ていたりする。セバスさん、メイさんと他の使用人たち少しいるがおい、エルディア…お前は夕飯の支度があるだろう。…戻れ。
「ちくしょおっ!」と喧しく叫びながら、エルディアは使用人二人に両脇を抱えられて本邸に連れ戻された。飯は大事だからな…。
さて、と…ぞろぞろとお風呂場入口に入っていくが、俺はストップをかける。
「ここで靴は脱ぐようにっ!」
午前中にいた義祖父さん、シーバス、セイ兄はすでに靴を脱いで入っていたが、他のメンバーは知らないので注意する。
そして建物内に入るのだが………狭いな。元々六畳間程度の広さしかないのだ。人数が多すぎる。
まあ、まだ棚とかも置いていないし…いいか。
「一日で作ったのかいっ!?」
とウチのパパンが合流。
「「「おかえりなさい」」」
とみんなで言ったあとにセイ兄が近くに寄って行き、先程と同じ説明をしていた。
「ユーリウス…こんな大きいモノを作るな」「言ったし、許可くれたじゃん」
と被せる。「そういえば出したね…許可…」と呟き、しまったなぁ…というような困り顔。
「父さん…」
「ん?」
「とりあえず、靴はそこまで。そこからは靴脱いで」
俺は土間を指差し、ダメ、土足!と注意をしておく。
「あ、ああ…分かったよ」
人口密度が増えてしまったが仕方ない。家長をないがしろにするワケにもいかないしね。ま、説明を何回もする手間が省けるし、ちょうど良いと言えばちょうど良かったか。
「…で、そこの靴を脱いだ土間から、この入口までが脱衣場になります。ここには棚を置いて、脱いだ服とか着替えが置けるようにする予定」
「「「へぇ…」」」
「「「ほぅ…」」」
お?思ったより悪くない反応だね。しかし本番はこの後だ。
俺は、まだ扉が無い浴室の入口へ足を向けた。
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