結果!
「紅い天使…」
チンピラかゴロツキか…誰が言ったか分からないが、次の瞬間、紅の天使こと俺は、赤光の帯と残像を曳きながらエントランスホール内を縦横無尽に飛び回る。
コモノ侯爵は尻餅を搗き、ズリズリと後ずさっているが、周りのゴロツキたちは次々と吹き飛ばされていく。
まあ、俺がやっているんだが…。
攻撃も許さず、反撃も許さず…一秒に数人。それも侯爵の近くにいようが遠くにいようが無作為に吹き飛ばされ、そこら中から壁への衝突音が鳴り響く。
数人は天井に刺さってたりする奴もいたりするが…。
数分も掛からずに紅い天使は動きを止める。ゴロツキ共で立っている奴はもういない。
皆、壁にめり込んでいるか、天井に刺さっているか、壁を突き抜けて外に出てしまっているか…。
残るは…
「ひっ!?ひぃぃぃ…」
俺の目の前にいる金髪ツーブロックオカッパパッツンの男…コモノ侯爵だけだ。
コモノ侯爵は俺を目の前にし、四つん這いになって逃げようとする。その動きはバタバタというよりはもうカサカサにしか見えない。
こうまで情けないと潰すのもなんかアレだな…。コイツを許すつもりは無いが、思いっきり笑かしてくれたしな…。
まあ、笑わせるつもりは無かったんだろうけど…。
どうするかな…。
予定ではこの後、義祖父さんとグラム商会長が騎士団連れて乗り込んでくるんだけど………………ん、証拠…出させとくか…。
うん、そうしよう。そうした方が後々楽だろうし、騎士団も余計な労力を使わなくてすんなりいくだろう。
「おい」
「ひっ!?ひゃいっ!?」
返事をしたあと、そぉ~っとこちらを振り返るコモノ侯爵。まさか、こんな子供に全滅させられるなんて思ってもいなかっただろう…顔は涙と鼻水にまみれていた。………きちゃない。
「裏帳簿か何かあるだろう…?………………全部出せ」
この現場に似つかわしくない甲高い声で、子供がしないような獰猛な笑みを浮かべて俺は言う。
「しょ…それは…」「出すよな?」
断ったり誤魔化したりしそうだったので被せ気味に言う。ついでに魔力の放出も少し強める。
コクコクコク…と頷く侯爵に「なら動け」と命じ、侯爵のその後の動きを俺は見守った。
これは出すの嫌だなぁ…といような仕草が見えたら『ドカンッ!!』と壁を壊し、これは不味いなぁ~…という動きが見えたら『ズドンッ!!』と床に蜘蛛の巣状の罅を作り、俺は侯爵の働きを全力でサポート。
「こ…こここ、これで全部です…」
と怪しげな書類が出揃うころには、騎士団が到着する予定の時間になりそうだったので土属性魔法『鉄の捕縛』で両手足を拘束、集めた書類の前に転がした。
俺は、良い仕事した…と満足し、騎士団にバレないよう入れ替わりで侯爵の拠点から脱出した。
まあ、一応変装しているから顔バレはしないと思うけど念のためだ。…そもそも幼児だから余計に平気だとは思うけどね。
さて………家に帰ろうか。
こうしてコモノ侯爵の作戦は失敗に終わった。ちなみにゴロツキ共は誰も死んでいないので俺のレベルは相変わらず『1』のままである。
『浮遊』=風属性魔法。浮くだけの魔法。上位に『射出』や『飛翔』などが存在。
『鉄の捕縛』=土属性魔法。魔力から砂鉄を生み出し、設定された形を造りあげる。上位に『鉄の牢獄』などが存在。
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