理由
「改めましてやな。ウチは『キョーカ=ニシミヤ』、あっちなら『西宮 京華』、君は特別に『キョーカ』って呼んでも良えで。よろしく頼むな」
ニカッと笑い、自己紹介をするキョーカ=ニシミヤことおもしろ邪悪聖女「逆やっ!?っ〜か誰がおもしろ邪悪聖女やねんっ!?」
俺のモノローグにツッコミを入れるのはユニークスキルか何かですかね?…あ、他にも結構いるわ。ユニークスキル持ち多過ぎだろ。…違うか、違うな。
「もう知っているとは思うが『ユーリウス=フォン=ゼハールト』だ。よろしく…はしなくても良」「なんでやねんっ!?よろしくしろやっ!?」「………ヨロシクオネガイシマス」
…と、改めて自己紹介も終わりソファーに座り直す。
そしてリリアーナ王女殿下の口から『もう一つの本題』が…
「…ではもうひ」「お断りしますっ!」「………まだ何も言っていないのですけれど…」
…はっ、しまった、早まってしまったか。
しかし俺のスキル『人類の革新』が嫌な予感しかしないと言っている!………………あ、そんな『人類の革新』持ってなかったわ。
「すみません、どうぞ」
王女殿下に一言謝り、続きを促す。
「コホン、え〜…修学旅行の件なのですが、キョーカの件の依頼が無くなったのは先程お話した通りなのですけれど…」
何やら言い淀む王女殿下。………なんだろう、嫌な予感しかしない…。何より隣にいるおもしろ邪悪聖女がニヤニヤしているのがソレを物語っている。………グーで殴りたい。
「えっ…と。………視察という名目で私が学生たちに同行する形になりまして…」
「………………はっ?」
いやいや、意味が分からない。
「それでお父様は護衛に腕利きの近衛騎士団数名を着けようとしたのですけれど、学生たちの護衛に近衛騎士団はおかしいだろうと言う意見もありまして…」
それはそうである。たかだか中等学生の修学旅行に国から近衛騎士団を護衛に着けるとか、たとえ王女殿下が参加しているとしてもどうかしている。
「それならばとキョーカが護衛に立候補しまして…」
「………………はっ?」
いやいや、狙われてる本人が護衛に参加とか…聖女の頭大丈夫?イッてない?イッちゃってるよね?
「キョーカの実力はお父様も知っていますので、では任せよう、ということになり…」
いやいやいやいや、任せよう、じゃないのよ国王陛下。バカなの?アホなの?死ぬの?…で、なんで聖女はドヤ顔してんの?もうグーで殴っても良くない?
「ユーリウス君には私とキョーカの護衛を改めて依頼したい、ということなんですけれど…」
膝の上で指をモジモジしながら、ちょっと上目遣いなリリアーナ王女。なんそれちょっと可愛いやないかい。
しかし、その程度の攻撃で簡単に俺が靡くと思われているのだとしたら心外である。なので本っ………当に心苦しいけれど、しっかりとお断りさせていただきましょう。
「リリアーナ王女殿下…せっかくのお話ですが、俺にはやはり荷が重い。そのご依頼はお受け出来ません」
「………理由をお聞きしても?」
「一つ、本来俺は学生側であり、冒険科所属の立場から他科の生徒の護衛する側面があり、それが学生としての本分であること。二つ、王女殿下の護衛に近衛が着かないというのは外交的にいろいろあるとしても外聞的に良くない。そのうえで冒険者見習い程度の学生が護衛として着くから、では理由があまりにも稚拙。『王女殿下が視察のため同行』というこの時点でソレはもはや『修学旅行』では無くなっているのですから」
一つ、二つと俺は指を一本ずつ立てていく。
「三つ、聖女の戦闘力は俺も間近で見ているのでソコは問題無いと思います。が、予想外のことが起きるとその対応力に不安を感じるのが本音ですね」
まあ、予想外は俺にも言えるコトではあるのだけれど…。
「四つ、その『予想外』が起きた時、俺は学生を見捨ててでも王女と聖女を守らなければいけなくなる。出来ればソレは避けたい」
「あ…」
「それは…そう、やな…」
失念していた、と表情を落とす二人。でも俺は続ける。
「国として動くのであればソコに気を使ってもらいたいものですね」
王女殿下に責任を押し付けよう、というワケではないけれど…コレはそう聞こえてもおかしくない物言いではある。
しかし『護衛依頼』という名目上、何かあった時の責任は俺が取らなければならない。強かろうがなんだろうが、言うて十五歳の学生が、である。…中身は別として。
王女殿下にはそのことをしっかりと考えてもらいたい。
そして俺は、五本目の指を立てる…。
「五つ…」
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