炎
無事…ではないかもしれないけれど、エクシア王国の自分の錬金部屋へ帰還した俺は設置してあるベッドに寝転がる。
よし、コレで後は『公休』と言う名で貰っている下見期間をのんびりと過ごせる。………と思っていたのだけれど、数日で義祖父さんとシーバスからウチの家族経由であっさりと学校にバレる。もちろん義祖父さんとシーバスにはアイアンクローからのヒートエンドしたことは言うまでもない。が、俺も父さんから有難い説教をいただき、さらには家族から冷ややかな視線をもらったことも言うまでもない。
学校ではちゃんと下見などは行っていたにもかかわらず、『サボり』の方が強調され白い目で見られたが…
「装備関係の学割………無くすか…」
…と、ボソりと呟いたらすぐにピタリと収まったので、まあ勘弁しておいてやろう。
教師陣からは小言こそ言われなかったが、何故か課題を出された。サボったのは事実だからな…甘んじて受け取ろう。………ちょっと課題の量が多くありませんかね?
そんなこんなで数日を過ごし、元々申請していた下見期間が終わる頃…。
「………あ。そういえば聖女に作った装備、渡しておけば良かったな…。いや、まあ、あの聖女には必要無さそうではあったけれど…」
思えばボソリと呟いたこの発言がイベントフラグだったのだろう。
翌日、眠い目を擦りながら嫌々…コホン、元気に登校すると校門前にガ◯ナ立ちする二人の女子の姿。その背中に炎を幻視する。
なるほど、誰の台詞だったか…火と火が合わさり炎になる、だったか…。つまりアレが一号機と二号機、合体してガンバスげふんげふん…おっと、いけないいけない。
炎こそ無いものの、その二人のオーラに登校中の学生たちはソレを避けるように左右に分かれて二人の横を通り抜ける。正門の、ソレもど真ん中でガイ◯立ちなんかしているから…。
そして俺も周りに倣って『スキル:隠密』を起動させて横を通り抜ける………と見せかけてからの『縮地』で正門から離れ、学校屋上へと『転移』…フッ、完璧だ。
俺は『ガチャリ』と屋上から階段へのドアを開け………『ガチャガチャ』開け………鍵掛かってるな…。
………全然完璧じゃなかった。
仕方がないので始業時刻まで屋上で少しまったりしてから、もう一度『転移』で屋上ドアの向こう側へ跳び、俺は悠々と教室へと向かう。
ガラガラと引き戸を開けると…
「あっ、ユーリウスく」
「あっ、金髪の兄ちゃ」
ガラガラピシャリと引き戸を閉める。
よし、今日は自主的に野外学習にでも勤しもうかな!うん、そうしよう!
何やらリリアーナ王女と聖女の幻が見えちゃったような気がするし、気分転換も兼ねてそうし『ドカーーーンッ!!』
「ぐはぁっ!?」
突然、目の前の引き戸が吹き飛び、俺も引き戸に押されるように吹き飛ぶ。
吹き飛んだ引き戸越しに見えるのは、赤い魔力に覆われたリリアーナ王女とメリケンサックを装備した聖女。
こ、コレはアカン。
ごめん、俺死んだ。
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