確信
「敢えて言おうっ!少年っ、また会おうっ!!」
鬼仮面はそう言い放ち、全身に赤い光を纏い『バシュッ』と凄い勢いで飛んで行った。
………普通に『飛行魔法』使っとるやん。
結局、『聖女』という当事者が居つつも、各組織のトップが居ないものだからこの場での話は纏まるワケもなく…。
憶測や推測混じりの話だけに『しか』ならないワケで…。
ではどうする?となるワケも当然なく、「ほな解散で」となるワケだ。
…で鬼仮面はさっさとトランザげふんげふん…して帰還。
公爵は…
「じゃあ俺も帰るとするかね。一応、クアンタム王国のトップに報告は入れるが…」
「あ、じゃあ経由してエクシア王国のトップに伝えてもらえません?『王妃に言うから』って」
俺はニヤリと口角を上げて言う。
「フハッ!オーケー分かった了解だ」
公爵は愉しそうに頷き、国境の利用者が集まっている場所に今回の件の説明をしに向かった。
国境の利用者や衛兵さんたちには公爵からの説明でなんとでもなるだろう。
「さて…と、じゃあ俺もエクシア王国に戻るとするかぁ」
俺は目的地を定め、足を王国側へと向け『ガシィッ』「ちょおぉ待ってもらおうか、金髪の兄ちゃん」………がっつりと聖女に肩を掴まれ止められる。
「はあぁぁぁ…何ですか、聖女さん?」
俺は面倒そうに、かつ分かりやすく嘆息し振り返り応える。
「心底面倒くさそうにため息吐かれたっ!?地味にショックなんやけどっ!?」
「はいはい、そういうリアクションいらないから。………で、用件はなんですかね?」
俺がそう言うと、聖女(笑)は満面の笑みを返してくる。
おかしいな、俺の予想だと「はいはい、とか言って流されたうえに、リアクションいらないとか辛辣ぅっ!?」とか言うと思っていたのだけれど。
「十中八九そうやと思っていたけれど、今ので確信したでぇ」
聖女(笑)のニヤニヤが加速し、その笑みが深まっていく。………『ニヤニヤ』が加速ってなんやねん。
「………確信?」
はて、何のことだろうか?と訝しんでいると聖女(笑)が口を開く。
「兄ちゃん………自分、日本からの転移者…いや、転生者やろ?」
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クアンタム王国国境付近の上空をアロウズ帝国へ向けて高速で移動する赤い光…。
もちろんコレはユーリウスたちと話を終えて帰路に着いた鬼仮面ことミスターブシげふんげふん…サムライなのだが…。
後に『隕石』やら『怪しい飛行物体』やら、果ては『魔王襲来』とまで話が膨れ、帝国南部の各地で噂になる。
そしてその本人は知らぬ存ぜぬ…というよりはまったくもって噂に興味を示さず、我関せず…だったという。いや、お前だってばよっ!?
「(あの少年…おそらく全盛期のエクシア王、クアンタム王よりも遥かに強い。悔しいが今の私では少年の本気を引き出せるかどうか…)」
飛行中、彼は先ほど相見えた少年の分析をする。自分を下に見ている辺り、思っているよりも冷静に…。
「(仮に本気を引き出させたとしても、その後に戦う力をまだ私は持ち合わせていないだろう…。フッ、まったくもって世界は広い。まだ少年のような強者がいるのだからな…)」
そう思っていると意識は思考する方向へ傾き、空を移動する赤い光は止まり、その光も収まっていく。
「(『セツナ』に敗れて以来、長年修行を積んできたのだ。『戦士』としてあれからも研鑽を積んだ『セツナ』としてならともかく、国王として国のお飾りに成り下がった 今の『セツナ』ならば苦戦することもなく勝てるだろう。)」
「………………」
ほんの一拍…思考が止まり、そしてミスターサムライはフッと一つ、息を吐く。
「(そんな『彼』と戦っても、面白くもなんともない!私は…)」
実際のところは『良い勝負』、というところだろうが、その戦いが実現すればミスターサムライが勝つことになるだろう。なんならワンチャン王妃の方が国王より強いまである、かもしれない。いや、さすがにソレは無いか…。
「(今の私がさらに強くなるために必要なこと…ソレは………)」
ミスターサムライは再び思考する…。




