分からない!
「どうなるんだ?………言ってみろ」
二人の夫人に対峙し、俺が放った言葉に、応接室の空気を再び緊張感が襲う。
「う…ぐ…」
夫人は俺に気圧されたのか口を紡ぐが、俺は容赦しないぞ?
「ん?どうした?言ってみろ…そう言っているだろ…」
俺は極上に極悪な笑顔を作り、そう言い放つ。
「くっ…良いのですか、そのような態度で…。私に逆らうということが、どういうことか分かっているのですか?」
「ん?だから…わからねえからぐたいてきに言えって。どういうことになるんだよ?」
そうそう…上だと思っている奴らは具体的に言わねえ時があるからなぁ。だから、それじゃ分かんねえってんだ。…と転生前、日本人の時の社畜時代を思い出しつつ、『具体的に言え』と詰めてみる。
「………分からないのですか?」
「そう言ってんだろ…ぐたいてきに言えよ」
この短いやり取りで「所詮三歳児…知識が足りなくて言っても分からないじゃないかしら?」とか思ったのだろう、夫人は口角を上げ話し始める。
「私に逆らうということはゼハールト家を敵に回すということです。ソレがどういうことになるか分かりませんか?」
「………だから?」
「貴方も…そこにいるセイリウスも…。別邸にいる母や妹、執事もメイドも!………どうなると思います?」
…まあ、そんな風に言うだろうとは思っていたけれど、清々しいほど自分の持つ権力を使おうとするね。
ただ、三歳児相手にソレは恥ずかしくないんですかね?
どちらにしても、だ…俺の家族に手を出すって発言は許さんし赦さん。
…で、俺がどうするかというと…だけど。
『威圧』すると気絶させちゃうかもしれないからソレは無し。
恐怖状態にするスキル『恐怖』は残念ながら持っていない。これがあれば楽だったんだけどな…。
…となると…だ。
魔力放出…かな。
『魔力感知』のスキルを持っていなくても膨大な魔力は感じることが出来る。
地球人にはスキルが無いと無理だけど、この魔力が存在する世界の住人なら誰もが感じ取れるだろう。
俺は体内を循環させていた魔力を解放…ついでに三対六枚の翼を広げる。
イメージはハイマットなモードになったフリーダムな奴だ。…いや、どちらかと言えば、粒子を発するOな奴か?
俺は放出した魔力を夫人たちの方にだけ向かうように操作し、翼は黄金色から虹色に輝くように変化させた。
そして…
「………う~ん、ちょっと何言ってるか分からないな………………………もう一回、言ってみろよ…」
笑顔を崩さず、そう言い放った…。
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