『ベスティドゥラディオス』
「『完全回復魔法』」
おっさんに手を翳しそう唱えると、おっさんの身体は魔力の光に包まれる。
数瞬の内に光は収まり、おっさんの傷口は何も無かったかのように消え、顔色も元に戻っていた。
…何なら血色は前よりも良くなっていないか?
「うわーん、おっちゃーん、良かったよぉ」
おっさんは全快したものの今は気を失っている。と言うか全快しているのだから『寝ている』が正しい、のか?
関西弁女子はそんなおっさんを見て、軽く涙ぐんでいる。
まあ、身体張って守ってくれたんだからな。女の涙の一つや二つはご褒美だろう。
ひとまず、おっさんの方はこれで良い。が収まりがつかないのが一人。
「ようもやってくれたなぁ」
関西弁女子である。
おっさんの動きは彼女を守る様な動きだったのだろう。でなければ今の様な状況にはなっていなかったはずだ。
「狙いがウチなのはわかったけどなぁ…」
チラリ、と横になっているおっさんに目を配り、再度刺客に向き直る。
「ウチ以外を巻き込んだのは許さへん」
………あれ、俺は?
俺には一瞥もくれず刺客と向き会う関西弁女子。
………あれぇ?
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「『完全回復魔法』」
そう聞こえた途端におっちゃんの身体が光に包まれ、呪いごと傷を癒していく。
そう…『解呪』や『浄化』のような、魔法の力で無理矢理に呪いを解いたり浄化させたりとは違う。その魔法は呪いごと『癒し』ていた。
いや、そう見えた、が正しい…かな?ウチには使えん回復魔法や、正確なところはわからん。
それよりもウチより強力な回復魔法を簡単に使ったこの金髪の兄ちゃん、ホントに何者なんや?
叩けば音が鳴りそうやったから一緒におったら面白そう、くらいの感覚やったんねんけど…。
そんなことを考えていると、おっちゃんの身体から光がゆっくりと収まっていく。回復しきったんやろう、先程より顔色が随分戻っ………さっきより随分と顔色良くなってるやん。
「うわーん、おっちゃーん、良かったよぉ」
…おっちゃんやからな、色々と抱えていたんやろなぁ。
眠っているおっちゃんすがり付き、そんな邪推をしながら、おっちゃんをこんな目に遇わせた奴らの方向に顔を上げ睨み付ける。
「ようもやってくれたなぁ。………狙いがウチなんはわかったけどなぁ…」
チラリ…一呼吸置いておっちゃんを見やり、奴らに視線を戻す。
「ウチ以外を捲き込んだのは許さへんっ!!」
そして同時に『聖女』もしくは『聖者』にしか発現しないと云われているスキルを発動する。
「『神衣』ッ!!!」
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