先に…
「「「『刀乱斬無』」」」
やたらと声の良いさす鬼とは違うところから聞こえる声と高まった複数の魔力。…やべえ、イヤな予感しかしない。
「おっちゃんっ!?」
俺がそちらを振り向く前に聞こえる関西弁女子の悲痛な声。
最悪が頭を過る。
俺が視線を移した時、その視界に入った光景…。
「っ!?おっさんっ!!」
衛兵のおっさんは関西弁女子を庇うように五本の剣をその身に受けていた。
「ぐぅ………がふっ」
身体から大量に流れる血に、さらに大量の吐血。おっさんは膝から崩れ、それを関西弁女子が支えるように抱き止めた。
「おっちゃんっ、しっかりしいっ!こんなん今ウチが治したるからなっ!」
半ば抱き合っているような状態で回復魔法を行使しようと魔力を高める。が、周りが見えていない。…敵がまだソコにいるのだから。
俺は即座に近付くべく縮地を起動させ…「どこに行くというのかね?君の相手は私だ」
『刀乱斬無』を使用した鬼の仮面が俺との間に割って入る。
「「「死ねえっ!!!」」」
その間にも複数の刺客は関西弁女子を狙い、彼女に向けて今にもその剣を振り降ろそうとしていた。
俺は頭に血が上りそうなのを抑え………るワケもなく…
「どけえっ!!!」
叫び声と同時に、『身体強化』も何もしていない、能力値任せの飛び蹴りを鬼の仮面に叩き込む。
『ズドンッ』…鈍い音が辺りに響くも、俺の蹴りは腕を十字にした鬼の仮面に受け止められた。
不意打ち…ではないけれど、ソレに近い状況かつ俺のほぼ全力の蹴りを受け止めるとはやるな。さすが鬼の仮面…さす鬼。とふざけたおすのは後にしよう。
「ぐうぅ…さすがだ、と言っておこうか少年!だが、その程度の蹴りで私をどうにか出来るとでも…」「うるせえっ!いいから吹き飛べえっ!!」「ぬうっ!?」
飛び蹴りを受け止められた状態から、俺は構わずそのままさらに押し出し吹き飛ばす。
吹き飛んだ鬼仮面のその先は…
「「っ!!?ぐあっ!!」」
二人の刺客を巻き込み…
「『結界』」
その進行方向に『結界』を展開。『結界』の壁にぶち当たってろ!
「「ぐはあっ!!?」」
「ぐっ………少年っ!」
俺は続けて『転移』を起動。鬼仮面と一緒に吹き飛ばされた二人に構うか、と言わんばかりに剣を振り下ろす三人の刺客との間に割って入る。いや割って出る、が正しいのか?
「っ!?」
「なっ!?」
「『転移』だとっ!?」
『盾』の魔法を展開して剣を防ぐ。
「「くっ!?」」
「ちぃっ!?」
必殺、の状況だったにも関わらず、俺に防がれたワケだが、すぐにソレを把握し俺から距離を取る辺り、この三人…いや、あっちの二人も合わせて優秀な刺客なのだろう。
そして俺は気付く。
先に二人に『結界』を張れば良かったんじゃね?と…。
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