少年っ!
「奥義………『刀乱斬無』」
さすおにに似たやたらと格好良い声でそう呟き、赤の魔力を纏いながら鬼仮面は俺の視界から消える………いや、急接近していた。
「おっと」
「フッ…ほとんど不意打ちとはいえこれを避けるかっ、少年っ!」
急接近後にそのまま打ち込まれた右ストレートをさらりと避ける。しかしコレがいけなかった。
仮面の男は動きを止め俺が避けたことを嬉しそうに言う。あとアンタさっきまで俺のこと『金髪の悪魔』呼ばわりだったよね?なんで嬉しそうに『少年』とか呼ぶの?止めてくんない?
「さあっ、続けていくぞ少年っ!」
仮面…と言っても顔の上半分しか隠していないから口角を上げて喋っているのが丸分かりである。
嬉しそうに言うの止めてね。
そして再び攻撃が始まるも、あの怪しげな気配を放つ刀を抜いていない辺り、仮面の男はまだ本気ではないことが窺える。
ならば俺もソレにあやかり本気を出すのは止めておこうかな?…え?お前はいつも舐めプしかしてねえだろが、って?…うん、まあ、そうとも言う。
言ってもほら、今は別の国にいるワケだし、あまり大っぴらに暴れるのも良くないじゃん?それに…。
…それにコイツらの目的や狙い、所属なんかも知りたいところだし、ね。
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まったくなんやねんコイツら?ウチの華麗な脱出計画を邪魔しくさりおって…。
…いや、まあ、邪魔は結構最初から入ってはいたんやけれど…。
ナンパな冒険者にお仕置きし終えて、オモロくてツッコミ上手な金髪の兄ちゃんを掴まえにいこうとしたら衛兵のおっちゃんに邪魔され、終いにはコイツらや。
なんなんやっちゅうねんホンマにっ!
ウチとおっちゃんを囲んでる奴らは隙があらへん。なかなかの手練れ共やな。兄ちゃんの方は鬼の仮面着けた奴が抑えてるっぽい。
…あっちの仮面、相当強そうやなぁ。ま、アレは金髪の兄ちゃんになんとかしてもらうとして…。
こっちはどないしよ…。
改めて相手を見てもまあ手練れ揃い。衛兵のおっちゃんもこっちの人間にしてはかなり強そうだけれど…一対一ならってところやなぁ。
そうするとウチが四人を相手せなあかんワケで…。
う~~~ん、どないしよ。
「別に恨みは無いのだが、おとなしく死んでもらおう」
「抵抗しなければ余計な痛みや苦しみは無い、とだけ言っておこうか」
最初から殺る気満々やないかいっ!?ふざけんなっ!…とツッコミたいところなんやけれど…。
『恨みは無い』言うたな…。
イコール何処かからの依頼で殺りに来てるワケや。まあ、そんな依頼するのなんか教国の奴らしかおらんのやけど…。
その辺りのお話は一旦はどうでもええわ。今はこの場面をどう切り抜ける、か…やな。
幸いアイツらはウチのことを『魔法にさえ気を付ければ近接戦闘の術が無い小娘』ぐらいに思っているんやろう。
その証拠に取り囲んだあと、未だに様子見を続けている。コレはウチを取り押さえるのなんて簡単、やと思ってるからやろな。
ま、ウチも教国にはその辺の情報は教えてへんしな。知らんくて当然、てところやな。
ほんじゃ、まあ、その辺を逆手にとって油断して攻撃してきたところを身体強化からの近接戦闘で全員ぶっ飛ばす!で良いかな。
「はっ、殺れるもんなら殺ってみい。返り討ちにしたる!」
「おい、あまり煽るな」
大丈夫やておっちゃん。そんな心配せんでもウチがアイツらぶっ飛ばしたるさかい…あ、でもおっちゃんも一人は相手してな。って、魔力が高まって…?
「ふむ、どうやら覚悟は出来ているようだ。なら…」
「「「『刀乱斬無』」」」
………『刀乱斬無』は聞いてへんなぁ。
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