理想郷!
ドサリ…と前のめりに崩れ落ちるシーバスを足元に見ながら一歩下がり、シーバスの反撃に身構える。
「………………」
あれぇ?反撃来ねえな…。
というかピクリとも動かねえ。…うん、どうやら一撃で倒してしまったらしい。
なんか凄え強者感出してたから、ちょっとくらいてこずるかなぁ…とか思ってたんですけど。
うん、全然起き上がる気配も無いね…マジで一撃で終わりらしい。
俺が拍子抜けしているとセイ兄がズンズンと詰め寄ってくる。
「ユーリ凄いっ!」
胸の前に両手の拳をギュッと握り締めながら、目をキラキラとさせているセイ兄。
さて、言い訳は用意はしてあるものの、セイ兄にはどう言おうか…なんて考えていると横から衝撃が…
『ムギュウ』
「…わぷっ!?」
何やらとても柔らかいものに包まれる。あと良い匂い。
また、どちらかの異母姉に抱き付かれたのだろう…天国のようである。
「シーバスを一撃って凄いじゃない!………あ、羽ふわふわぁ」
「異母姉さん、わたしも…あ、ふわふわぁ」
「いやぁ…天使の羽にも驚いたが、シーバスを一撃って…」
「本当に三歳…か?」
もう一人の異母姉には背中側から抱き付かれ、翼を顕現させてはいるものの、背中が幸せな気分に…。
異母兄たちが何か言っているが聞いてないふりをしよう…。
「異母姉さまたちズルいっ!ユーリは僕の弟ですよっ!」
「っ!?そうねセイリウス…貴方もいらっしゃい」
「はいっ!」と言いながらセイ兄まで抱き付いてきた。
そうか、ここが理想郷か…。
「しかしシーバスはB級冒険者相当の力の持ち主だぞ?俺たちだって勝てないってのに…」
「…まあ天使の羽が生えちゃうくらいだから………やっぱ強いんじゃない?」
「三歳児が…か?」
「三歳児でも…かな?」
異母兄たちが話しているが、なんだその穴だらけの理由付けは…。
いや、俺もそんな理由にして誤魔化そうとしていたな…。
じゃあ、そのままにしておくか…。
そして…このままにしておけないことも片付けないとな…。
「シーバスっ!?起きなさいっ、シーバスっ!?」
「そ、そんな…シーバスが三歳になったばかりの子供に…」
俺は理想郷から抜け出し、二人の夫人に近付いていく。
「「っ!?」」
ビクッ…と二人は肩を震わせるが俺はゆっくりと、一歩ずつ、近付く。
「ユ、ユーリウスッ、こんなことをしてどうなるか分かっているのですかっ!?」
まぁだ、自分たちの方が上だと思っていやがるな…。まあいい…元々そのつもりだったし、とことん折ってやろう…。
俺は歩みを止め、ニヤリ…と口角を上げる。
夫人たちを見上げるかたちになるから多少格好がつかないが…
「どうなるんだ?………言ってみろ」
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