『愛っっっ!!?』
『抱きしめたいな、◯×△□ッ!!』
『会いたかったぞ、◯×△□ッ!!』
『やはり私と君は、ディスティニーレッドストリングで結ばれていたようだな』
『この気持ち、まさしくラヴッ!!』
「………………夢?」
変な夢を見たものだ…。
白い金属のゴーレム…か?二つ突き出た角が印象的な細身のゴーレムと仮面を着ける前の私が戦っている夢…。
夢にしてはやたらと現実的だったように感じる。見たこともないはずのゴーレムなのにアレは………うっ、頭が。ふむ…どうやらあまり考えない方が良いようだ。
だが…私は先ほどの夢に出てきた角付きの白いゴーレムを思い浮かべる。記憶には無い、ただ私の夢に出てきたゴーレム…。
記憶には無いのに、ただの夢のはずなのに…アレには『彼』が乗っていると私は確信している。
「セツナ=フォン=エクシア………………いや、ただの夢だ。だからどうした、というただそれだけの話…のはずだ」
私は身体を起こし、ベッド横の机に置かれていた水差しから水をコップに移す。コップから一杯飲み干す。
「………ふぅ。ただの夢に感傷的になるとは、やはり私は………………」
コトリ…コップを机に置き、頭の中に浮かんだ言葉に呟きを止める。
浮かんできたのは『おとめざ』『せんちめんたりずむ』………どちらも聞いたことの無い、知らない言葉…。
夢といい知らない言葉といい、私はどうしてしまったのだろうか。まだ見ぬ強敵に、そしていずれすぐに相対するであろう『金髪の悪魔』に心が、感情が高ぶっているのだろうか…。
「ふっ、私もまだまだ修行が足りない…そういうことか」
私は一人納得し、外していた鬼の仮面に手を伸ばした…。
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俺はクアンタム王国出国の為、一旦国境の街へと訪れた。
出国手続きさえ済ませてしまえば、あとは修学旅行本番まで公休と言う名の休暇をこれでもかっ!と満喫できるのだ。
余計なことに巻き込まれぬように、首を突っ込まないように、細心の注意を払い、俺は出国待ちの列に並んでいた。
「だ・か・らっ!!ウチに文句があるんならさっさとかかってこい言うてんねんっ!!」
「言うねぇ、お嬢ちゃん。なら…俺ら全員の相手でもしてもらおうか」
聞き馴れない…いや、ある意味聞き馴れた関西弁が、そして女の子の声が俺の耳に届く。
「なんやおっさん、女のウチ一人相手に一対一も張れんのかい。プッ…だっさあ」
「………ぁあ?」
随分と元気の良い関西女子(仮)である。そういえば転生してからは関西弁なんて聞いたことがなかったな…。そう思うと何やら感慨深いような、そうでもないような…。
「てめぇ…女だと思って俺らが無茶出来ないとでも思ってんのか?」
「はぁ?一対一も張れんようなおっさんにウチがビビるとでも思ってんの?」
微妙に話が噛み合っていないような気がするが、関西女子(仮)は随分と煽る気満々な感じに聞こえる。このまま煽り文句を聞いているのも面白いかもしれない。
…というか衛兵さんたちが止めに来たりはしないの?
「おうっ、てめぇらっ!この女、拐うぞ…男の怖さをたっぷりと教えてやる必要があるからな」
「うっわ、だっさっ!!こんだけ言われて結局仲間頼みとか…玉付いてんのん?」
まだまだ煽るとか…本当に随分余裕があるようで。肝座り過ぎだろ…。
しかし、う~~~ん、いい加減この関西女子(仮)がどんな娘なのか気になってくる、んだけれど…。
「もうええわ、おっさん。全員相手したるさかい、死んでも恨まんといてな」
「はっ!嬢ちゃんよぉ、自分の言葉が軽率過ぎたことぉ…後悔すんなよなあっ!!」
…あ、これ、もう駄目なとこまで来てるな。しょうがない、本当に面倒だが助け舟くらいは出してやるか。と俺は興味津々ではあったのだけれど、ここで初めて声の聞こえた方に視線を移した。
「掛かってこいやあっ、おっさん共ぉっ!女甘くみとったことぉっ!思い知らしたるわぁっ!!」
そこには金色の刺繍が施された白銀のローブを身に纏い、これまた金の意匠が施された白銀の棍棒を振り回す女性が暴れていた。
「「「うわあっ!!?」」」
「「「グハアッ!!?」」」
なんの変哲もな………いことは全くないのだけれども『ソレ』はイヤでも目立つ。
その艶めく長い『黒髪』は…。
 
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