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闇ギルド『北の黒狼』ギルドマスター

誤字、脱字報告ありがとうございます。

「親分、噂のガキですが…」

「親分じゃない。ギルドマスターと言え」


「失礼しました、親分」

「………」


「………で噂の子供がなんだ?」

「へい。情報によれば公爵と一緒に街に入った、と…」


「公爵と一緒に…。となるとどこかの貴族の子弟という可能性が高い、か…」


「それからもう一つ…」

「なんだ?」


「へい。南から流れてきた奴によると『金髪の悪魔』に似ているとか…」

「『金髪の悪魔』…たしかゼハールト子爵だったか…。そこの息子のことだったよな?」

「へい」


エクシア王国の北方に拠点を構える、我が闇ギルド『北の黒狼』に珍しい情報が入った。

情報はキュリオスの街の屋台で商品を片っ端から買い占めている子供がいる、とのことだったが…。

まさかソレが我ら闇ギルドの間では非常に悪名高い『金髪の悪魔』のことだったとは…。


王国から北には被害こそ出ていないものの、南での所業はこちらの耳にも届いている。

詳しくは省くが、聞いただけで震え上がる話ばかりである。それもこの闇ギルドを束ねている俺が…である。


ゼハールト家先代の話なら知っている。なんなら先代のウチのボスとも繋がりがあったくらいだ。

だが俺の代からはその繋がりが消えた。いや、ウチだけじゃねえ。北も南も闇ギルドとゼハールト家との繋がりは消えた。


恐ろしいのは噂が『金髪の悪魔』のことだけであること。

そのバックにゼハールト家の先代がいるというのに、ウチも含めて他の闇ギルドの連中も気付いていない。

いや…ゼハールト家には暗殺者(アサシン)の老執事がいたか…。その執事が動いて気付いた連中を始末している…?それならば納得できる、か。


「親分、昨日の盗ぞ…」

「親分じゃない。ギルドマスターと言え」


「すいやせん親分」

「………続きを」


「へい。盗賊団『闇鴉』の件ですが…やはり子供と一緒に公爵もいたようです」

「そうか。引き続き情報を集めてくれ」


盗賊団『闇鴉』…ウチのギルドとは協力関係にあったところなんだがソレが昨日潰されたとの情報が入っていた。

もちろん報復してやろうと情報を集めさせたのだが、そこで出てきたのが『金髪の悪魔』だ。


だが今の情報で確信を得た。『金髪の悪魔』の噂は巧妙な情報操作がされている、と。

恐らくゼハールト家主導で動き、その子供に目を向けさせているのだろう。そして公爵もソレを利用したに過ぎないのではないだろうか。


つまり…


今、王国北方に存在する闇ギルド及び盗賊団がゼハールト家と公爵に狙われている、ということか…。


「………よし、決めた」

「何をですか、親分?」


「………………」

「………………」


「………俺は引退する。後はお前に任せる。『北の黒狼』を頼んだぞ」

「………は?えっ?ちょっ!?」


俺はサッと立ち上がり『気配遮断』スキルを発動、たいした準備もせずに颯爽とギルドのアジトを離れた。


「親分っ?親分ーーーっ!?」


何か聞こえるような気がするが多分気のせいだろう…。俺は余生は田舎で静かに暮らす、とさっき決めたのだ。


俺は後ろを振り返ることなく北方都市キュリオスを離れた。




〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓




「…ってことで『気配遮断』使って動いている怪しい奴がいたんだけれど…こいつ賞金首かな?」


「………ユーリウス、君ねえ…」

『直接俺らのところに持ってこられてもわかるワケねえだろう…』


一瞬だった。


何もない空間にいきなりぶつかったのである。思わず「ふべっ!?」とか声に出してしまった。

俺はそのまま背中からひっくり返り、鼻血を出しながら悶絶。見えない壁にしこたま顔を打ったからな…。


鼻を押さえて揉んどり打っているところに闇ギルドの間で出回っている『金髪の悪魔』の人相書きによく似た人物が目の前に現れ、俺はあっという間に捕縛されたのである。


「君ね…『気配遮断』スキルを使用している奴をよく捕まえられたね」

『普通見つけられねえぞ…』


「うっ!?………そ、そこは内緒で…」


捕縛された俺は片足の足首を掴まれ、ズリズリと引き摺られながら公爵邸へ一直線に連れていかれたのである。

もう少し違う連れていき方もあると思うんだ。だって後頭部が痛いもの…。『金髪の悪魔』め、許さん!


「………ぁあ?」


「ひぃっ!?すんませんしたっ!!」


怖っわ!ガキの出す殺気じゃねえ。思わず謝っちまったじゃねえか。


「こらこら、ユーリウス君」

『もう捕まえてる奴を脅すのは止めておいてやれよな』


「いや、何やら敵意を向けられたような気がして…」


「気がしてって、君ね…」

『それで殺気を出されたり睨まれたりしたら堪んねえな…』


で、ですよね!俺、今、声に出してなかったですよね!


「で、この男なんだけれど…確認したけど、まあまあの大物だね。闇ギルド『北の黒狼』のギルドマスターだ」

『おっ?結構懸賞金が出てそうだな』


「あっ、辞めて引退してきたんで今は元ギルドマスターです」


「えっ?」


「えっ?」

『えっ?』


『金髪の悪魔』と公爵の二人が驚いたように声をあげる。だが、まあ、本当のことだよ…。


「えぇ…っと…」

『………』


「アンタなぁ。犯罪者の罪が『引退しました』、で消えるワケないでしょう…」


「そうだね。仮に引退が本当だとしても罪は消えないし、もちろん懸賞金もそのままだね」

『ま、そうだよなぁ』


「なっ!?」


そ、そんな…。それじゃあ俺の悪人辞めて片田舎でのんびりスローライフ計画が実行出来ないじゃないか…。


『………コイツもアレだな。ユーリウスと同じでなんかしょうもないこと考えてんな…』

「そうなのかい?」


「ぬっ?失礼な…」


「というワケなんで君ね、このまま詰所に送るから。で取り調べして、そのまま王都ね。ユーリウス君、君は一緒に詰所に行って懸賞金を受け取っても良いけれど…」


「あぁ…今直ぐ欲しいってワケじゃないからなぁ…。後で受け取りって出来ます?」


「オーケー、じゃあそのように指示をしておくよ。誰か!」


公爵が『チリンチリン』とベルを鳴らすと執事然とした男が部屋へ入ってきた。

公爵がその執事に指示を与え、俺はソイツに連れられキュリオスの街の詰所へ。


こうして俺は闇ギルドマスターを引退して一日で捕まった伝説をこの国に残すことになったのである。



〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓



追記


取り調べで俺は闇ギルドや盗賊団のことなど、裏のことは一切話さなかったのだが、数日後に『金髪の悪魔』が『北の黒狼』のギルド員全員をニコニコしながら捕まえてきたことをここに記そう。


『金髪の悪魔』の噂が…裏の者が真実に気付くのは何時になるのだろうか…。

お読みいただき、ありがとうございます。次回もよろしくお願いします。


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