シーバス!③
「あ?何見てんだコラァ、ぶっ◯すぞ!」
およそ三歳の幼児であるユーリウス坊っちゃんから、出るとは思ってもいないその一言で場の空気が凍りつきます。
私が師から受け継いだ魔導具の一つのモノクル。
これは『能力査定』と呼ばれていて、おおよそではありますが相手の能力値を見ることが出来ます。但し、スキル『隠蔽』を相手が使用していた場合は測ることが出来ないのとスキル『偽装』を使用していた場合は偽装された能力値を表示するので、完璧とはいえませんが…。
それでも有能なこの魔導具。元はかつて異世界から召喚された異世界人が造り出した物らしいですが、何故『スカウター』と呼ぶのでしょうか?
あ、ちなみに相手の所持スキルも表示はされません。
このモノクルでユーリウス坊っちゃんを見やり『能力査定』に魔力を流し起動。表示はレベル1で各能力値もGを示しています。
Gは表示される最低ライン…そして三歳の幼児が『隠蔽』や『偽装』のスキルを持っていることなどは無いでしょうから、私はこの結果を素直に受け取ります。
まあ、これならどうとでもなるでしょう…と。
「ん~~~っ………ぷはっ!大丈夫…コイツ、ぶっ飛ばすから!」
次男次女三男三女の坊っちゃま方、お嬢様方が応接室に雪崩込み、空気に変化が訪れたと思った矢先…またユーリウス坊っちゃんの言葉で場は凍りつきます。
…が、私は冷静に、表情を変えずに告げます。
「坊っちゃま方、お嬢様方…奥様のご命令ですのでお下がり下さい。…でなければ力ずく…となりますが?」
私の若干威圧を込めた言葉に坊っちゃま方、お嬢様方は動きを止めます…ユーリウス坊っちゃんを除いて…。
ユーリウス坊っちゃんは私の威圧などまるで意に介さず、てくてくと数歩…私の目の前へ。
そして…
「力ずく?やれるもんならやってみろ」
ユーリウス坊っちゃんは目をギラリとさせて、私を見上げながらそう言い放ちます。
あのステータスで一体どこからその自信が来るのか…。いや、まだ自分のステータスを見たことなど、きっと無いのでしょう。
大人である私に対しての言葉とは、普通ではとてもあり得ません。
「………ふむ。どうやらユーリウス坊っちゃまには私には出来ない、もしくは自分がされる理由ワケがない、とお思いのようですね。………奥様?」
「構いません、おやりなさい」
即答する奥様もどうかと思いますが、ゼハールト家では第一夫人である奥様の言葉は絶対…。
それに今までもそうしてきましたし、私はいつも通りのことをするだけです。
「奥様の許可も出ましたね…。抵抗しても構いませんが、その場合は少し痛い目を見ることになりますのでお覚悟ください」
私は一歩…ユーリウス坊っちゃんに近付き、そう告げます。
…これは最後の忠告です。
そう思っての言葉だったのですが…
「かくごするのはおまえだ。だれにケンカ売ってるのか思いしれ!」
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