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敗けられない

「お前には護衛を頼みたい」


()だけど」


「即答しないでくれるっ!?」



〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓



アラド君が「うがああぁっ!」と叫んだ後、いつも通り俺は女子たちに脇を固められ、冒険者ギルドへとドナドナされた。

いつも通りってなんだよ…。


ギルドの応接室に通され、アラド君は対面に。もちろんアイアリーゼさんはいない。

「マジでいねぇ…」とガッカリしたのは言うまでもない。まあ、然程期待もしていなかったのだけれど。


そして冒頭である。


「せっかくの旅行にこの俺が仕事をすると………本気で思ってる?」


やれやれ…とジェスチャーをしながらアラド君に問う。

アラド君は「………………」と少しの沈黙の後…


「無いな…」


「だろ?」


失礼な答えではあるがソレは事実で、旅行中に仕事なんぞ絶対にやってやらん。

俺は、ここぞとばかりに、それはもう周りにもわかるくらいにメンドクサイオーラを振り撒く。


まあ、応接室には俺とアラド君しかいないのだが…。


「………報酬ならちゃんと出るぞ?それも相場より大分高い」


「そういう問題じゃあないんだよなぁ」


そもそもお金はしっかり稼げている。「いらない」とまでは言わないが、わざわざ修学旅行中に仕事をしてまで欲しいなんて、これっぽっちも思わない。


「報酬を出せるのなら、ちゃんと冒険者を雇えば良いじゃん?」


ドカンッと正論をぶつけてみる。


しかしアラド君は少し苦い顔をし…


「いや、まあ…そう…なんだがなぁ…」


だよなぁ。

そこで言い淀む辺り、護衛対象は面倒な相手なのだろうと予想ができる。

まあ正規で他の高ランク冒険者に頼まないで、俺に頼む辺りで面倒な相手なのは、なんとなくは分かったけれど…。


「実は」「ちょっと待て」「………………なんだよ」


「アラド君………フラグって知ってるか?ソレを聞いたら俺がやらなくちゃいけなくなる気がする。それ以上喋らないでもらおうか…」


「そんなもんは知らん。まあ聞けユーリウ」「おいっ、止めろぉっ!?」


そして、そんな俺の静止は聞かずにアラド君は言葉を発した…。


「護衛対象は『聖女』。依頼は『聖教国』。修学旅行で国境に着いてから同行するとのことで、そこから王都までの護衛、が依頼内容だ」


い、言いやがった…。『止めろ』と言ったのに…。


…で、『聖女』に『聖教国』だと?や、厄介事の

匂いしかしないんですけどっ!?


だから…


だから俺はこう言うのだ。


「絶対に断る」


「何でだよっ!?受けろよぉっ!?」


「フンッ、バカめ!余計に受ける気が無くなったぜ。正規ルートで依頼することをお勧めしよう」


『ガーン』と言うような顔をするアラド君。

…だけどこんな話………俺が断ることなんてわかりきっているだろうに…。


…と言うことは、だ。ソレを踏まえたうえで話をするようにしている…ということだろうか?


そしてそうなると、だ。


俺の『力』を知ったうえで依頼している。…と考えた方が良い、のか?

…そうすると『誰』が俺を薦めたか、なんだけれど…。


う~~~ん………なんとなく分かる、かな?


俺にお断りされて、どうしようかギャアギャア騒いでいるアラド君が煩いのだが、ソレを遮るかのように、透き通り凛とした声が応接室に響く。


俺は当然、その声の人物を知っている。


「ユーリウス君、お願い………出来ないかしら?」


冒険者ギルドヴァーチェ支部のギルドマスターにしてエルフの美女………アイアリーゼさん、その人である。


そして俺は答える。


「はいっ!喜んでっ!!」


一体何処の居酒屋さんだっ?と思わないでもないが…こうして俺は修学旅行中の『聖女』護衛という、面倒極まりない依頼を受けることになる。


いやいや、ハニトラじゃないからっ!?ホント。


ちょっとアイアリーゼさんのことが好き過ぎるだけだからっ!


このあと、シクシクと煩いアラド君が、受付嬢のハリセンにひっぱたかれ、ズリズリと首根っこを掴まれて応接室を退場したのは言うまでもない…。


え?俺?


俺には俺なりに敗けられない戦いがあるのだ。だから俺のことは良い~んですっ!

お読みいただき、ありがとうございます。次回もよろしくお願いします。


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