鬼門
「…と言うワケで来月の修学旅行について少し説明しておきます」
『ザワリ…』
登校して朝イチのホームルームで担任が言う、と同時にクラス内がざわめいた。クラスメイトの顔を見るとソレは嬉しそうな、楽しそうな顔を浮かべている。
なるほど、この異世界…魔物やらなんやらが存在しているし、馬車での長距離移動など…しかも大勢の子供たちを連れてなんて、とんでもないっ!…と思っていたのだけれど、どうやら『修学旅行』はしっかりと形態化されているらしい。
そして俺はというと…
…し、しまったぁ…。まさか修学旅行が存在しているとは…。
先程の理由で修学旅行があるとはこれっぽっちも思っていなかったのである。え?先輩たちも行っているんだから普通気付くだろって?だから興味すら無かったんだから気付くワケないだろっ!?
セイ兄とかも行っていたんじゃないかって?………あ?行ってたわ、たしか…。
…と、『修学旅行』なんてトラブルとフラグが乱立しそうな、かつ中学生とのお泊まりにまったく興味を持っていない俺に、こんなイベントはもはや鬼門でしかなく、スキル『思考加速』を駆使してなんとか参加しない方向で無数の言いわ…理由を考える。
…が、この異世界でもほぼ義務教育である中学校のイベントにそんな上手い言い訳がすぐに思い浮かぶワケもなく…。
なんとか…なんとか回避しなくてわっ!!…と無駄にフラグを建てていたことに俺は気付いていなかった…。
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「えっ…と…、ちょっとおねが」「駄目だよユーリ」「ある…んだ……けど………まだ言ってないよね」
授業を終え帰宅した俺は、珍しく早い時間に帰って来ていた父さんに、修学旅行キャンセルのお願いをしに行ったのだが、被せ気味にお断りされていた。
…なんでやねん。
「ん~………時期的に修学旅行のことかな?大方、行きたくないとか…そんなところじゃないかな?」
「っ!?」
完全に読まれているっ!?…く、くそぅ、さすが俺の父親…やりやがるっ!
「ユーリがわかりやすいだけだよ」
くっ…確かに俺の無表情スキルさんは働かないことに定評があるが…って働かないのかよっ!?
まあ、そんなスキルは持っていないんだけれど。
それにしても、周りの人たちに読まれ過ぎている感があるよなぁ。…アレか?俺の知らないうちにスキル『読まれる者』でも取得していたか?
「………………」
…ソッとステータスを確認するが、やはりそんなスキルも称号も持ってはいなかった。
だ、だよなぁ。そんなスキルとか、在るわけないよなぁ…。…ないよね?鑑定先生がソッとそのスキルとかに、俺に見えないように『隠蔽』掛けていたりしないよね?
そんな…返事をするワケがない鑑定先生に、俺が絶望したのは言うまでもない。
そして…
「嘘だと言ってよっ、バァー○ィーッ!!」
…と、俺が叫んだせいで鑑定先生の愛称が『鑑定』になったのはもちろん嘘である。
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