そっちじゃないです。
俺の頭上に浮かぶ直径一メートルほどの大きな火の球…まあ、ただの火属性の初級魔法『火球』なのだが…
「ひっ、ひいいいっ!?」
お貴族さまはソレを見ただけで悲鳴をあげて、超ビビっていらっしゃる。
「あ、ああああ、アレは火の…い、いや、炎の上級…超級…ふ、『炎熱爆裂』っ!!?」
いやいやいや…ただの『火球』ですけどっ!?
「あ、ああああ、あんなモノを喰らったら…ほ、骨も残らない。こんなガキが、こ、これほどの魔法をっ!?」
よう喋るな、このお貴族さまは…。
さて…ただの『火球』と言っても、俺の魔法だとまあまあ威力が出ちゃうからな。こんな行列の横で炸裂させるワケにもいかない。
う~~~ん、せっかく出した『火球』…どうするかな?いや、その前にこのビビり散らかしてるお貴族を先になんとかしないと…か。
うん、なんかもう面倒になってきたな。お貴族さまがビビり散らかしてるから冷静になってきちゃったよ…。
「………………」
う~~~ん………よしっ!
もっと追い詰めて、泣かせて、グーで殴って、その辺に『ぺっ』と捨てよう、うん、そうしよう。
「さすがにソレは止めておきましょうユーリウス様…」
シーバスがソッと近付いてきて、俺にそう言う。
考えを読むんじゃないシーバス。お前いつから読心術なんて…「顔に出てますよ?」…俺の無表情さん仕事してっ!?
…で、だったら何か良い案あるの?
「ふむ………まあ、お任せください」
シーバスはそう言い、お貴族さまに近付いて行く。ああ、もうビビり散らして、後退さろうとしているけど足も動いてないような状態だ。
…でだ。
俺は何時まで手を上げたままでいればいいの?
シーバスがビビり散らかしてるお貴族さまに近付き、耳打ちするように話をしている。
お貴族さまは追加で汗をだくだく流しながらコクコクコクと頷いている。
二人でこちらをチラチラ見ているけれど、シーバス、お前、何か変なこと言ってない?大丈夫?
まあ、あのお貴族さまも俺たちに何かしようという気も無いだろうし、俺は殺気とか魔力とか放出を止め引っ込める。
………コレはどうするかな?とゴウゴウと俺の頭上で燃え盛る『火球』を見ながら「う~~~ん…」と唸っていると…
「この騒ぎを起こしているのはお前かっ!」
「その魔法をどうする気だっ!」
「おとなしくしてもらおうかっ!」
馬に乗ったデュナメスの衛兵たちが、俺を取り囲んでいた…。
えっ?俺、まだこの『火球』維持しないとダメ?
シーバスの「ユーリウス様、そっちじゃないです」と言うツッコミが聞こえたような気がしたが多分気のせいだろう…。
シーバス「何故ユーリウス様は取り囲まれたことより魔法をどうするかを心配するのでしょう…」
ユーリウス「耐性あってもちょっと熱いのよ?」
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