神器
………暑い。
毎年のことではあるが年に数ヶ月、暑い月がある。………そう、夏である。
この異世界、何故か日本と同じように四季がある。他の国や大陸などに行ったことが無いので正確なところは分からないが、恐らく地球と同じような感じではないだろうか。
まあ、太陽………在るしな。ほぼ同じだろう。
日本ほど蒸し暑かったりはしないから多少はマシだが…多少である。
そこで…今までは手が小さく彫刻刀が上手く扱えなかったこともあり魔導具の作成…というか魔石への命令を書き込むのに難儀して諦めていたのだが、身体もまあまあ成長したので、そろそろ…
「エアコン造るしかねえっ!」
今までも簡易的に作成した魔導送風機…扇風機で我慢していたが、もう無理である。
正直、魔力・魔法の存在するこの世界では魔法を行使して、ある程度は快適に過ごせるのだが、ソレは"行使している間"なワケである。
意識を失う…つまり眠ったりすれば当然"行使"は出来ないワケで…。
魔法にも効果を発揮・発動している時間、放出する量など、基本的には決まっている。使い手によって前後するものの、ソレは多少でしかない。まあ、圧倒的な魔力・魔力量を持つ者が行使する場合は例外ではあるが…。
そんな圧倒的な魔力・魔力量を持つ例外な俺だが、魔法一つでエアコンの代わりをさせるのは無理であったワケだ。
温度を上げたり下げたり、送風の強弱をつけたりなど命令が複雑なのである。意外と出来るんじゃね?と思って試そうとは思ったが、魔法陣を新しく創るのは非常に面倒くさく、一度創れば『記憶』で楽出来るじゃん、と思った俺が諦めるほど面倒だったことを報告しておこう。
そんな面倒な細かい命令なんて余計に魔導具になんて出来ないんじゃないか?正直そう思っていた。
小さい魔石にチマチマ彫金なんて出来ないと…。しかし俺は何とか楽がしたい!と考えたのだ。どうにか出来ないかと…。そして…
「魔石が命令の効果を発揮するのって魔力が流れた時に彫金した命令を読み込んで…だよな。なら命令を読み込んだ魔力が流れたらどうなるんだ?」
俺は実験を開始する。
『無限収納』から手頃な銅板を取り出し、彫金を施す。銅板に魔力を流し、命令を読み込ませた魔力が魔石に流れ込むように作成。
結果は成功である。
「なるほど…魔石に直接ではなく、何かを媒介して命令を含んだ魔力を魔石に流しても魔導具として効果を発揮するか…」
こうして、俺が快適に過ごすための神器『エアコン』作成への道が…一度は諦めたその道が開いた。
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