やっぱりかぁ…
中学校入学二日目。
朝一で昨日ビンタした奴らが絡んでくる。
「ゼハールトッ、貴様っ!!昨日はよく」『パァン』
「「◯◯さんっ!?おのれっ!昨日だけならず今ょ」」『パァン、パァン』
校門の前で絡んでくるんじゃねぇ、邪魔。ビンタでひっぱたき早々に俺の前から退かす。
俺は教本の入っている肩掛け鞄を掛け直し、下駄箱まで行き、上履きに履き替えた。
もちろん肩掛け鞄はポーズだけで、中には何も入っていない。必要な物は全て『無限収納』の中に入れてあるので、俺に『忘れ物』という概念は無い。………多分。
授業…と言っても、今日はまだ二日目。まずは教員たちの自己紹介やら一年次の勉強範囲の確認などで終わる。
国語、数学、外国語などは俺は余裕だし、正直今さら勉強することは無い。しかし歴史だけは、知らないことが多いのでちゃんと学ぼうと思っている。
日本人の頃は三國志や戦国時代なんかは好きだったなぁ…と思い出す。
昼休憩…俺はエルディアお手製弁当に舌鼓を打ちながらまったりと過ごす………予定だったんだがなぁ。
『ガラガラガラッ…ピシャーンッ』と勢いよく教室の引き戸が開け放たれ、どこかで見たことがあるような奴がいた。
「ユーリウス=フォン=ゼハールトッ!◯◯さんの兄上からの呼び出しだっ!すぐに屋上に来いっ!」
俺への呼び出しらしい。
呼びにきた奴は俺の返事を聞かないまま『ピシャーンッ』と引き戸を閉め、タタタ…と行ってしまったようだ…。
まあ、返事…してないし。と俺は引き続き、弁当の準備をする。机の横に引っかけている肩掛け鞄経由で『無限収納』から弁当と水筒を取り出し、机の上に広げる。
カパリ…と弁当箱を開けると、色彩のバランスが取れた美味しそうな料理の数々。これを弁当にまとめるとは、腕を上げたなエルディア。
「あの…」
「ん?」
「ゼハールト君、先輩からの呼び出しみたいだけど…行かないの?」
昼休み中は学食に行ったり、外にお弁当を持って行ったりと、教室内の生徒は疎らだが、残っていた生徒…俺の隣で友達と食べていた女の子が恐る恐る聞いてきた。
俺は出来るだけ優しい笑顔を作り…
「うん、行かない」
教室内に残っていた他の生徒にも聞こえていたようで…
「「「………えっ?マジで?」」」
「「「先輩からの呼び出しに行かないとか…」」」
なんて聞こえてくる。隣の子も…
「えっ?行かないの?大丈夫なの、それ…?」
「大丈夫もなにも、『行く』とか返事してないしね。………あとお腹空いてるし」
あれは、俺の返事を聞かなかった奴が悪いんだよ?と言いくるめる。
「えぇ…?あれ?うん、でも、そう…なの、かな?」
周りで聞いていたクラスメイトも「???」みたいな反応。ま、年齢的にはみんなが小学校を卒業したばかりだもんな…。
そこまで思考が追い付かないのだろう…。
弁当を食べ終わり、昼休みも半ば…美味かった、がちょっと量が足りないな。帰ったらエルディアに次回からは量を増やしてもらおう…なんて考えていた。
『ガラガラガラッ…ピシャーンッ!!』
「ユーリウス=フォン=ゼハールトッ!お前なんで来ないんだよっ!?呼び出しだっ言ったろぉっ!!」
なんか、また来たな。周りも「やっぱり大丈夫じゃないじゃんっ!?」とか「ゼハールト君…大丈夫なのっ!?」とか騒いでいる。
「今度こそ来いよっ!今すぐに、だっ!!」
『ガラガラガラッ…ピシャーン!!』
「「「………あっ!?」」」
また俺の返事、聞かないで行っちゃったな…。周りの奴らはそれに気付いて「あっ!?」って声が漏れちゃってるし…。
そして俺に注目が集まるが…俺は弁当も食べたし、昼休みの残りはあと半分………寝るか!と机に伏せた…。
周りが「「「やっぱりかぁ…」」」とため息を吐いたのは、伏せていても何となく分かった。
ま、何とかなるって。
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