王太子の婚約者が続けて二人死にました。次に婚約した私も死ぬの? 〜休眠する恋〜
「ヴァレリア。お前との婚約を破棄する!!」
やっと迎えた卒業パーティの最中に、私の婚約者である第一王子である王太子殿下が言い放つ。
周囲はどよめきと共に、疑問に対する視線を私にも向ける。
状況を理解できないのは私も同じなんだけどな……。
☆☆☆☆☆☆
王太子との婚約が決まる前、私は学校で出会った第二王子アルベルト殿下に恋をしていた。
私は公爵家の三女。一方のアルベルト殿下は第二王子。
王族と公爵家の関係は悪くなく、婚姻も問題無く行えそうだった。
アルベルト殿下と初めて会ったのは、学校に併設されていた庭園だ。
花が好きな私は、綺麗に整備された庭園を散歩するのを日課にしていた。
アルベルト殿下から話しかけられたのも、庭園を散歩していたときだ。
「ねえ、君」
「はい?」
「君はいつもここを散歩しているようだけど、花に詳しいのか? だったら、教えて欲しいことがあるのだけど」
「何でしょう?」
「この一面だけ、夏だというのに花がまったく咲いていない。これは、庭園管理者の怠慢なのか?」
少しだけ不機嫌そうに彼は言った。服装からして王族なのだろう。
「ここはコルチカムという花が植えられているそうです。その花は、夏の一番良い時期は葉を落として休眠するのです」
「なるほど。では、これで良いのだな。ちなみに、花はいつ咲くのだ?」
「夏の後、秋ですね」
「そうか。楽しみだな」
「はいっ」
こんなやり取りから私たちは時々、話をするようになった。
もっとも、長時間二人きりになれるわけではなく、私たちが接するのは校内での僅かな時間と手紙のやり取りのみだった。
彼はとても紳士的で、指一本触れてこなかった。
私も、そんな彼の気遣いに心地よさを感じ、互いに惹かれ合っていることがわかる。
初恋は熱病みたいなもので、火がついたらすぐに激しく燃え上がる。
だけど急激に燃え上がった分、冷めるのも早い。
「ヴァレリア。僕たちは、もうこれっきりにした方が良いと思う」
「……なんとなく、そう言われると思っていました」
「君も同じか。そうだね、僕たちは終わりにした方がいいと思う。今気付いて良かったと思っている」
「私も……そう……思います、アルベルト殿下」
私は抵抗しなかった。
なんとなく、アルベルト殿下と同じように感じていたから。
最初の燃えるような気持ちが、今では随分落ちついていて、このままではいずれ何も感じなくなる。
彼とはその程度でしかない。そう思っていた。
翌日。
アルベルト殿下は留学が決まっていたらしく、すぐに隣国に行ってしまわれた。
とても急なことに、私も含め学校に通う皆が驚いていた。
秋になったのに、アルベルト殿下はコルチカムの開花を見る事ができなかった。
こうして、私たちの初恋は終わった。
☆☆☆☆☆☆
「ヴァレリア。王太子との婚約の話が出ている。前は第二王子と仲良かったし、顔くらい知っているだろ?」
父に言われて、私はついにきたかと思ってしまった。
二人の姉は既に嫁いでしまっている。
王太子の婚約相手になりそうな公爵家は他にもあった。しかし……。
「王太子って……あの噂の……」
「ああ。でもまあ、あくまで噂だ」
「うーん……」
王太子の婚約相手は、不可解な死を遂げるという噂が流れていた。
既に二人の令嬢が命を落としている。
二人とも原因不明の病気にかかり、ベッドに寝たまま死んでしまったという。
王太子が連れてきたという聖女が診ても、原因がわからなかった。
「死んだ二人は元々、身体が弱かったという話がある。不幸なことは長続きしないものだ」
「本当に?」
「ああ。ヴァレリアは健康そのものだし、心も強い」
政治的な圧力はないものの、他に適切な候補者がいない様子。王宮直々の申し出を断る理由もない。どちらかというと成り行きに近い形で私の婚約が決まった。
婚約の手続きは、特に問題無く終わった。
結婚は学校を卒業する、来年の春だ。
以前の婚約者は、王太子殿下の姿にあっという間に虜になったらしい。
でも、私は正直ぴんと来なかった。
王太子殿下は、第二王子アルベルト殿下と似てはいるけど、やっぱり違う。
内面はもっと違った。私に対する扱いは熱もなく淡々としたものだ。
でも、もうアルベルト殿下とのことは過去の良い思い出にしたのだから。
王太子殿下のことを考えなくては。
これから結婚をすれば長い時を一緒に過ごすことになる。
王太子と王太子妃が仲が良いところを示すことが国の安定に繋がると教育を受けてきた。
だから、私は王太子殿下を好きになろうと努力を始める。
彼の良いところを見つけ、心に留める。
なるべく彼と話すときは笑顔でいることを心がけ、相手からも好かれようとする。
王妃としての教育もしっかりと受け、彼に尽くせるように自分を磨く。
王太子は聖女と仲が良いらしく、私より彼女と一緒にいる時間が多いとの噂を聞いた。
聖女は子爵家の出身であり、王太子に能力を認められて王宮に入ったのだという。
私は役目を全うするために、目をつぶることにした。
……しばらく経っても、王太子殿下に対する好意と呼べる感情は抱いていない。
とはいえ、努力をすることで、次第にこの婚約を前向きに考えられるようになった。
いずれ子をもうけ親しくしていれば、いつか愛情を抱くことができると思っていた。
しかし……。
「ヴァレリア。お前との婚約を破棄する!!」
全て、この一言で無駄になってしまった。
「私は、いらないということですか?」
「ああ。成り行きでの婚約だったし、ずっと考えていた。愛のない結婚生活はお前も辛いだろう?」
「いえ、それを変えようとずっと頑張っていたのに……王妃になろうとずっと、教養も身に付けて、殿下を好きになろうとしてきたのに——」
「義務感でやってきたのだろう? それが嫌だというのだ」
「……そんな!」
私は聖女までのつなぎだったということか。
強い喪失感を抱きながら、私は実家の屋敷に戻ることになってしまった——。
☆☆☆☆☆☆
父も母も、突然のことに驚きつつも私に優しくしてくれた。
「ヴァレリア。すまない。まさか、こんなことになるとは……。王家には重々、抗議をしておく」
兄に到っては、私に事情を確認するとすぐさま抜刀して王宮に向かおうとする有様だった。
怒りを抑えてもらうのに苦労しつつも、私のことで怒ってくれることが嬉しかった。
学校の卒業と同時に結婚の予定だったのだけど、王妃になる教育も、今となっては全て無駄になってしまった。
全てがキャンセルになり、私は暇を持て余すことになった。
事情はともかく、婚約破棄をされて傷物になった私に近づこうとする貴族はほとんどいない。
私は空っぽになった。長い時間をかけたことが「いらなかった」とまで言われ、とてつもない喪失感を抱く。
好きになろうとしたことも無駄だ。不意に涙がこぼれる。
暇を持て余すと余計なことを考えてしまう。
私はそうやって、ぼーっとしたまま一日を過ごすことがあった。
さすがにこれではダメだと思い、私は父や兄の事業を手伝うことにする。
忙しくしていれば、余計なことを考える暇はないだろう。
☆☆☆☆☆☆
二ヶ月後。
雪解けが始まり、春が近いことを感じられるある日。
「陛下と王太子殿下が私に話があると……?」
突然父と私は陛下と謁見することになった。
そこで、王太子の婚約相手が立て続けに亡くなった理由について聞かされた。
元々、聖女は王太子殿下を篭絡させて結婚することで王妃の座を狙っていた。
彼女は子爵家の娘であり、父である子爵と結託。聖女認定を獲得して王太子に近づいた。
しかし、当時王太子には公爵家の婚約相手がいた。
子爵はどうがんばっても公爵に敵うはずがない。王太子との関係もまだ築けていない。そこで、聖女は自らの父から黒魔術の魔道書を入手。黒魔術の呪いによって、王太子の婚約相手を死に至らしめたという。
黒魔術は使い手が少なく研究も進んでいないため、令嬢の死の原因が突き止められないでいた。
その上、まさか聖女が使っているなどと思いもしない。
そうしているうちに、やがて二人目の犠牲者を出してしまった。
私も三人目の犠牲者になるところだった。しかし、私が王太子に執着していないことに聖女が気付く。だったら、完全に王太子を掌握して婚約破棄をさせたほうが危険が少ない……そう判断したらしい。
考えは正しかった。まんまと私を排除し、王太子と婚約をすることができたという。
私と婚約破棄をした後、王太子は聖女と結婚の準備を始めていたそうだ。
その準備を進めていく上で、聖女の正体が発覚する。
「そんな経緯が……」
私はつぶやく。
でも、それだと腑に落ちないことがある。
もし聖女の腹黒さが本当ならば、私をここに呼ぶ理由がない。
ただ単純に聖女を排除すればいい。王太子が聖女に惚れていたとしても、陛下が命令すれば終わることだ。
「それで……ヴァレリアはまだ未婚だという話じゃないか」
王太子殿下は、何でもない風に言う。
いや、その原因を作ったのは貴方だろうに。
「だからもう一度私と婚約して結婚すれば元通りだと思わないか? ヴァレリアは王妃としての地位も教養も完璧だ。王妃としてこれ以上の人材は、もうこの国にいないだろう」
はあ……。
いくらこの状況でおだてられても。
それなら、あの時聖女になびかず婚約破棄もせず、私と結婚していればよかっただろうに。
もっとも、その状況だと私は聖女に殺されていたかもしれないが……ひょっとしたら聖女のことを疑い調べることもしたかもしれない。
可能性は低いけど、少なくとも私は目の曇った王太子殿下よりはマシだろう。
「もう一度私と婚約して欲しい」
王太子殿下はそれがさも当たり前だというように言った。
正直なところ、私にあんな思いをさせた王太子殿下に嫁ぐなんて考えられない。
しかしどんな形であっても王家からの依頼だ。断ると何かしら不利益を被る可能性がある。
私は父の方をチラリと見た。
すると、父は私を優しい目で見つめ言う。
「ヴァレリアの思いのままに」
ありがとう。お父様。
私の味方でいてくれて。
「どうだ? 公爵家としても悪い話ではないだろう?」
王太子殿下はそう言って私を見つめる。
「いやです」
「そうかそうか。じゃあ、婚約はいつに……えっ?」
「いやです、と申し上げました」
王太子殿下は、私の答えを聞いてぱくぱくと口を開閉させている。
まるで魚みたいだ。
「なっ……き、君を傷付けてしまったのは謝っただろう? 私に挽回のチャンスを与えてくれないだろうか?」
王太子は焦り始める。
私が断るとは考えていなかったのだろう。
「殿下。私がどれだけ努力していたか知っていますか?
必死にあなたを好きになろうとしていた。
どうすれば、好意を抱けるのか考えていた。思いついた案を行動に移し頑張っていた」
「あ、ああ……分かっている」
本当に分かっているのかな?
私に興味ないような素振りをしていたのに。気付いていないと思っているのだろうか?
「王妃になるための努力もしていました。
しかし、殿下は感情に流されて、婚約破棄と私に言い放ちました」
「それについては、本当に申し訳ない、心から謝罪する。許して欲しい」
私の意見も聞こうとせずに婚約破棄を言い渡した彼を、もう信用できない。
今後、彼に対する悪い感情が好意を上回ることは決してないだろう。
「仮に許したとしても、もう殿下の近くにいるのは無理です。何があっても」
「そんな……王太子の頼みであっても、断るというのか」
「はい。申し訳ありません、今さら無理です!」
言ってしまった。
でも、これが本心だ。
このまま有耶無耶にして王太子殿下と結婚するくらいなら、なんらかの処罰を受けた方がましだ。
もはや意地になっているけど、譲る気はない。
「くっ……ダメなのか」
「はい。残念ながら。お受けするくらいなら、死んだ方がマシです」
「そ、そこまでなのか?」
王太子殿下の瞳から涙がこぼれる。
しかし、私はその何倍も泣いた。自分がやってきた努力が全て無駄だったことを思い知って。
今までのやり取りをじっと見つめていた陛下が重い口を開いた。
「ふむ。もしうまくまとめられるなら、ある程度今までの事は目を瞑ろうと思っていたが、やはり無理だったか。
どこで間違ったのか……これでは決断せねばなるまいな」
「陛下?」
「お前は下がれ」
「そんな……父上! もう一度機会を!」
嘆願する王太子殿下だったが、陛下はもう彼に応えることはなかった。
その代わり、私に向かって話しかける。
「ヴァレリア殿、わざわざ済まなかった。ところで、アルベルトのことは覚えているか?」
「あ……はい」
アルベルト殿下。これまで記憶の奥底に追いやった彼を思い起こす。
「どう思っている?」
「いえ……その、前は親しくさせていただいておりましたが……今は全然」
ふと、彼のことを思い出して顔が綻びそうになる。
「そうか、ではもう下がって良い。二人ともご苦労だった。後ほど、使いを送る」
私たちは一礼して、その場を後にした。
最後に見た王太子殿下は、膝を突き子供のように泣きじゃくっている。
王太子殿下が喚き、それを諫める陛下の声がいつまでも聞こえていた。
王太子殿下に対する私の態度や返事に対するお咎めは一切なかった。
公爵家の娘である身としても尊大な態度だったと思うのだけど、その凜とした態度に陛下はむしろ喜んでいたそうだ。
聖女は公爵の、しかも王族の婚約相手を殺害したという罪で処刑された。
さらに、聖女に黒魔術の魔道書を渡した父親も、その親しい者も同様に処刑されたらしい。
王太子殿下こそが被害者だと庇う者もいた。
しかし、もし第二王子が聖女の秘密を暴かなければ、知らずのうちに殺されていた王族もいただろう。
王太子は廃嫡、無期限の国外追放となった。
☆☆☆☆☆☆
夏が過ぎ、次第に涼しくなってきて秋が訪れる。
私は前通っていた学校に併設された庭園を侍女を連れて散歩する。
普段は学生だけが入れるのだけど、今日は一般公開されている。
庭園の一角で足を止めた。
コルチカムのつぼみが綻び、気の早いものは既に花を咲かせている。
アルベルト殿下と出会ったのは、ここだっけ。
私はドレスが汚れないように気をつけながら、花に手を伸ばした。
「本当だ。秋になって可愛らしい花が咲いている」
懐かしい声が聞こえてきた。
顔を上げると、そこには背が伸びた——。
「アルベルト殿下?」
「やあ、久しぶりだな。ヴァレリア」
「殿下……!」
私はたまらず、彼に抱きついてしまった。
思えば、こうやって身体が接触するのは初めてかもしれない。
「留学先からいつのまに戻っていらっしゃったのですか?」
「んー。実は結構前から戻っていたし、時々帰ってきていたんだけどね」
「むっ……」
「な、なんだよ? そんな怖い顔をするなよ」
ずーっと向こうにいたと思っていたのに。
連絡もずっと我慢していたのに。
「どうして連絡一つ、くれなかったの?」
「まあ、色々忙しくてね」
「男の人ってよくそういう言い訳をするみたいですよね」
「うっ……それに、手紙のやり取りなんかしたら、会いたくなるし」
そう言って、アルベルト殿下は頬を赤らめた。
私も同じように思っていたので、結構嬉しい。
「そっかそっか」
「妙に嬉しそうだな……でも不思議だ。あの時は、もう一緒にいてもしょうがないと思っていたのに。どうして、今はこんなに——」
彼は言いかけてはっと口をつぐむ。
私はその言葉の続きを想像する。どうして、今はこんなに愛しいんだろう……。
違っていたらこれほど恥ずかしいことはない。でも、どういうわけか外れていない確信があった。
本当に不思議だ。
会っていないときも感じていたけど、会うことで確信に変わる。
「で。どうしていきなり留学したの? まるで私から逃げるように」
「それはな、例の聖女が王宮に招かれて会ったんだけど、ヤベー奴なんじゃないか? って思ってるうちに、兄の婚約相手が死んだんだ。死んだ様子から呪いの可能性があると思って、その研究が盛んなところに留学したってわけ」
聖女という神聖な力を持つ彼女を疑う者は少なかった。その上、王族と対立する貴族派から保護を受けていて、証拠がない間は動きにくかったらしい。
「へえ……女を見る目があったって言いたいの?」
「あるさ。ヴァレリアを見ていたからな」
「どういう意味よ?」
「言葉通りの意味だよ」
アルベルト殿下が調べるうちに、二人目の婚約者が死んだ。
しかし証拠がなく、病気の可能性もあり、仮に殺人だったとしてもその手段が分からず、容疑者は他にもいた。
そんな状況で殿下は、ついに黒魔術に辿り着いたそうだ。
「留学先でさ、三人目の婚約者がヴァレリアに決まったと聞いて肝を冷やしたよ。聖女の監視をしつつ、何かあればすぐ帰るつもりだった。でも、結局は兄に婚約破棄されてて力が抜けてしまった。さすがヴァレリアだ」
「さすが、ってどういうこと?」
「前の二人は、兄に惚れまくっていて離れようとしなかったから、聖女が動いて殺されてしまった。君が三人目の婚約者になった頃には、兄は聖女にすっかり惚れていたようだ。君は兄に執着しなかったし、兄は聖女に言われるまま軽い気持ちで婚約破棄を言い渡したのだろう」
そうなったのは、私が王太子になびいていなかったことが原因だ、と彼は付け加えた。もし私が王太子に執着していたら違う結果になったかもしれない。
王太子に執着しなかったのは、できなかったのは、今思えばアルベルト殿下のことがあったからだろう。
あの時は分からなくても……今なら分かる。
「聖女が使った黒魔術の呪いは、珍しい遅効性のものだった。コルチカムが夏の時期になりを潜めて養分を溜め、秋に開花するように、接触した時は何も起きず、時間が経ってから呪いが発動する。そのため、誰がそれを仕掛けたのか分かりにくい。そもそも遅効性の呪いというのが珍しいので、その発想に到らなかった。謎を解けたのも、ヴァレリア、君のおかげだよ」
「そうかな? アルベルト殿下なら、私がいなくても——」
「ううん……。君のおかげだ。僕が、本当に必死になったのは、謎に辿り着いたのは、今思えば全部君のためだった」
私のために、アルベルト殿下が頑張っていた。それだけで——。
「そっか。嬉しい」
「だからさ、僕にはヴァレリア、君が必要だ。あの時は分からなかったけど、君と会えなくて、どれだけ寂しいのか思い知った。時間が経って消えるものだと思っていたけど、そうはならなかった」
アルベルト殿下は今までの軽いノリから、急に真剣な表情になっている。
「将来、王位を継承するから、王妃として、僕を支えてくれないか?」
「……えっ」
思わず声を上げる。その声には、喜びの感情が含まれていた。
私はずっとこの言葉を待っていたのかもしれない。
ずっと、ずっと。
離れて過ごした年月は、互いの存在を認識するための時間だった。
あの時は分からなかったこと。それを時間をかけて理解するため、二年という歳月が必要だった。
「どうかな?」
「はい。喜んで、お受けいたします」
私たちの初恋は一旦燃え上がったあと休眠。そして再会して目覚め炎となり輝き始める。
永遠に、ずっと……。
コルチカムは冬から春にかけて葉を茂らせ養分を溜め、夏は落葉し一旦休眠する。
そして、じっくりと時をかけ、待ちわびた秋にようやく花を咲かすそうです。
その様子から、コルチカムの花言葉は「永遠」とされているのだとか。
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