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階段  作者: 青山えむ
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2話 キャロット

「お待たせしました」


 キャロットオリジナルのコーヒーとワッフル。コーヒーはマグカップでミルクはミルクピッチャーに入っている。

 砂糖は茶色の角砂糖が三つ、ガラスケースに入っている。完璧だ。

 私はマグカップじゃないと指が痛くなる。上品な薄いカップはデザインを含めて苦手だった。

 ミルクもポーションミルクが来るとテンションが下がる。衛生的で無駄がないのかもしれないが、せっかくカフェに来ているのに雰囲気が壊れてしまう。白砂糖は好まない。そもそもコーヒーに砂糖自体入れないのだが。茶色の砂糖を提供する店は自然と信頼度がアップする。

 熱いので、すぐには飲まない。

 

 食べやすく四つにカットされたワッフルがおしゃれに配置されて粉糖で粉飾されている。横にはホイップクリームが添えられている。

 ワッフルをフォークで刺して、さっそく食べる。カリ、カチカチ……ムニ。少し硬い。外カリ中フワと言ってもよいだろう。

 気を取り直してコーヒーをすする。全体的にマイルドだけれどかすかな酸味を感じる。朝に飲んだら目が覚めそうだ。ミルクピッチャーからミルクを注ぐ。少し飲んでみて、さらにミルクを足す。もう少し……と思っているうちに入れすぎるのが常。ああ。

 カリカリしているうちにワッフルを食べよう。カリカリカリ……。少し硬いと思いきや、二切れめはそうでもなかった。粉糖だけで食べると少し物足りない。ホイップクリームを少し乗せる。クリームの味がほんの少しだけ強くて、ワッフルが物足りない。ホイップクリームを少なく乗せる、ちょうどよくなる。気づいたらワッフルがなくなってしまった。つまり、おいしかったのだろう。もう少し食べたいけれどもまさかおかわりするわけにもいかず、皿に残ったホイップクリームをかき集めて口に運ぶ。


「ありがとうございました」


 先ほどの二人組が出てゆく。私よりあとに来たのに。そうか、出演者だからオープン時間にはいないといけないのか。


「じゃあ、グラビティで」


 出演者の彼が私にそう声をかけて、キャロットを出て行く。隣の友達が会釈をした。


「うん、グラビティで」


 私は笑顔でそう返して、暮らしの手帖を再び読み始めた。


 ライブのオープン時間になった頃、カフェで会計をすませてグラビティへ向かう。

 交差点を渡り、登り坂を歩く。五分ほど歩くとグラビティに到着。

 

 三階建てのビル、ここの二階がグラビティになっている。ビルの入り口はガラスの扉。

 片側は締め切りになっていて本日開催されるライブのフライヤーが貼ってある。

 もう片側の扉は開放中。建物に入るとすぐに階段がある。今日のライブへの期待と少しのどきどき感、何度来てもここを通るときの気持ちは変わらない。


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