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なろうラジオ大賞3応募作

祖父の遺産はオーパーツ

 祖父が亡くなった。

 僕が小っちゃい頃からとても可愛がってくれた。


 そんな祖父の遺言状には僕の名前も有ったのだ。僕への遺産は奇麗なピンポン玉位の宝石だった。とは言っても、価値のある宝石ではない為にすんなりと手にする事が出来た。

 父も母も父の兄弟たちや親族たちも少しでも多く遺産を受け取る事しか考えていないようで、やれ遺留分だ形見分けだで揉めていて互いに罵り合っているのが現状だった。

 嫌気がさした僕は二階へ上がると祖父の書斎に入った。ここもまるで泥棒でも入ったみたいに引き出しや扉は開けられて、中の物がひっくり返されていた。


「祖父ちゃんはこれがオーパーツだって言ってたよね。二十万年前の地層から発見されたものだって」

 生前祖父が好んで腰かけていたロッキングチェアに座って、その正二十面体の宝石を見つめる。青緑がかって濁っているそれは、反射する光もくすんでいて見るからに価値のなさそうな物だった。


「だけど、これが本物だってのは知ってるんだ」

 僕は一度だけ目撃した事がある。

 それは、祖父がこの椅子でこの宝石を大事そうに手で包み、うたた寝をしていたこの部屋に入った時の事だ。

 最初は何事も無かった。ただ祖父が寝ているだけだったので部屋を出ようとすると、祖父の手の辺りがぼんやりと光だしたのだ。

 驚き目が離せなくなった僕の目の前に映像が浮かび上がった。立体映像と言えばよいのだろうか空中に映し出された映像は、その宝石から出ているようだった。


 映像は一人の男が何やら聞いた事のない言葉で何かを説明している様だった。その男が手をかざすと男の周りが白く輝き始めた。輝きは次第に七色になりどこが神々しくもあった。

 しかし次の瞬間、目も眩む様な光と共に映像は乱れた。天地がぐるぐると入れ替わり、暫くして止まった。

 しかし、そこに映し出されていたのは先程の街中とは打って変わって何もない岩肌だけが地平線まで続いている光景だった。


「これはのう、二十万年前に進み過ぎた文明が滅んだ場面じゃ」

 目を覚ました祖父がそう教えてくれた。

「でも、魔法みたいだったよ」

「それは、クラークの三法則じゃよ」

 当時の僕には何の事だか分からなかった。


「この石ころはいつかお前にやろう。いつか、この謎を解いて空白の三十万年を解明出来れば良いの」

 祖父の言葉が頭に響いた。

 宝石は静かに光を湛えているのだった。

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