世界の敵の最後
皆様はじめまして
頑張って書いていくのでよろしくお願い申し上げます。
パスンッ・・・
消音器の付いた拳銃から放たれた銃弾は、あっけなく人の命を奪う
額から入った銃弾は
彼の脳を蹂躙し
一瞬で人が物になる
あぁ、なんて美しい
なんて楽しい
なんて素晴らしい
人の命は重いと言うが、戦争も犯罪も絶えない世の中でよくそんな事が言える
人の死を願う人間はそこら中にいるだろう
ムカつく、ウザい、キモい
そんな小さな殺意
それだけじゃない
奪うために進化した武器や兵器はもちろん
守る為、平和の為、人類の進歩の為と言われて築き上げられた
法律、技術、科学
その全てが
余りにも命に対して軽すぎる
人を一人殺しても、衣食住満たされた生活が保証される
そんな世界、そんな世の中だ
だから無くならない
だから止められない
平和な世界に、平和な時代に、平和な国に生まれたはずなのに
戦争に対する憧憬が
人を殺すという非日常が
自分の中で大きくなっていく
どこか壊れていたのだろう
同年代の子供が公園で遊んでいる頃から
本や動画を見漁り
家の近くの道場に通い
守る技術と知識を
殺す為に蓄える日々
楽しかった
本当に楽しかった
しかし、同時に辛い日々でもあった
技術も
知識も
使われなければ錆び付くばかり
だから・・・
「おい、聞いているのか」
刑務官が話しかけてくる
「すいません、ちょっと昔の事を思い出してました」
「ふん、お前みたいな奴でも人並みに感傷に浸るくらい出来るようだな」
ゴミを見るような目で俺を見てくる
「そうですね、後悔だらけです、私ならもっと殺せたはずだ......っ」
「お前っ!」
胸倉を掴まれ凄まれる
これから死ぬ人間に何をムキになっているのか
これだから、人というのは面白い
感情は人を殺す上でとても大切なものだ
恐怖や怒り、人生最後の感情の発露は
とても純粋で美しい
笑みが溢れるのを押し殺して伝える
「申し訳ない、刑務官さん」
「くそっ!いいからついてこい!」
簡素な部屋に連れて行かれる
部屋の真ん中には輪っかのある縄が吊るされ
まさに人の命を奪うための場所
首に縄をかけられ
刑務官が退室する
「何か、最後に言い残すことは」
スピーカーから声が聞こえる
目の前のガラスの向こうには刑務官が立っているのだろう
残酷な事だ
自分が殺したのか殺してないのか分からず
僅かな手当と半休の為にボタンを押すなど信じられない、人の命を奪うのに自分が殺したか分からないなんて酷い話だ
「そうですね、楽しかったです。やりたい事をやって死ぬ、素晴らしい人生だったと思います」
顔は見えないのに怒気は感じる
そして、今頃はネットで今の私の状況が配信されているだろう
細工をするのに苦労したが、世界の敵とまで言われた私が死ぬ姿を
その世界に見せてやらないのは可哀想だ
「分かった、では、これより刑を執行する」
足元がなくなり、縄に全体重が掛かる
気道や頸動脈が圧迫され薄れゆく景色の中
誰かの声が聞こえた気がした
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