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【ギルティー】お菓子の家の店主を追放いや処刑したいが、それは仲間が多い時にしか成功しませんよ?

作者: 茄子の皮

気楽にみてください。

 俺は、キャンディ・スイーツ。王都でお菓子屋さん【ギルティー】を営むパティシエだ。俺にかかればどんなスイーツもちょっとの素材と魔力で完成するのだ。


 材料費が激安で激旨なお菓子屋それが、俺の店。毎日魔力を込めた腐らないお菓子の家が目印で、たまに子供が食べているが気にしない。味は激旨だから、問題ない。

 最初は主婦層をターゲットにしていたが、しだいに老若男女に対応できる品揃が完成した。注文を受けてから作るので、在庫不良もなし。甘いのが苦手なおじ様も隠れて買いにくる店に成長した。


 そんな店に早朝から来客があった。




「ただいまより、罪人キャンディ・スイーツの国家侵略加担容疑の審議会を行う」

 豪華な装飾のついた服を着た、小太りな男性が高らかに告げる。このギャルメル王国の防衛長官らしい。店に来たことない人だ。


 俺は国王の目の前に鉄の足枷と手錠を付けられ、王国騎士団が両脇を固めた広間に、正座して座っている。


 ただのお菓子屋さんの20歳の男が、国家侵略加担容疑とか言う罪状で、王国騎士団長に連れられて初めて王城に入れたのだ。


「全く笑えないな。」


 他国から偵察容疑の兵士が、俺の作ったお菓子を大量に持っていたらしい。


 その兵士3人は、俺から離れた場所に這いつくばっている。3人は、何度も頭を下げている。


 確かに客としてきた男達だ。

「この国に攻めるのは止めだ!女王様にこのデラックスティラミス(30センチ四方の大きさの激旨ティラミス)を持って帰れば絶対友好関係にできる!何よりこのお菓子が毎日食べれるぞ!」

 とバカみたいに騒いでいた客達だ。

 デラックスティラミスの、ふわふわの食感は半日しか持たないと言ったのに、10個も買ってくれたとても良い客だ。


 あのティラミスはどうしたのかな?


「そこの侵略者が持っていた書状を読み上げる!」

 小太りな男性がしわくちゃになった紙を広げ、話している。

 内容は街の地図や、主要な戦力についてだ。王都を攻める道筋まで書いてあった。



「更にもう一枚ある。」

 男はどこかの紋章が煌めく高級な紙を取り出した。

「あの菓子屋は、やべぇ!あの菓子屋が俺たちの味方だ!デラックスティラミスは、全部食べてしまった。女王様に内緒だぜ!帰りにもう一度寄って来れば大丈夫だ。金の心配はいらねぇ、装備の盾を売ってきたぜ。」

 これがキャンディ・スイーツがこの侵略者の仲間の証拠です。と宣言する。


「キャンディ・スイーツ何か弁解はあるか?」

 玉座に座った王様が話す。金色の王冠をかぶり、赤いマントを着たいかにもな王様だ。もちろん金色の立派な髭もある。

 遠目で見たことあるが、こんなに近くでみるのは初めてだ。

 50代の渋いおじ様だ。月に一回閉店間際に激甘のキャラメルを買って行くおじ様に似ている気がするが、絶対違うだろう。


「この3人が私の店でお菓子を買ったのは、間違いありません。しかし、国家侵略などと一度も考えた事はありません。」

 俺は床に正座したまま答える。


「よし!キャンディ・スイーツは無罪だ!さっさと枷を外せ!」

 王様が大声で指示を出す。


「しかし、王様。この者がマシュマロン女王国の刺客だったらどうするのですか!」

 小太りの防衛長官が言う。


 マシュロン女王国。最近過激に戦争を仕掛けている国だ。


 この防衛長官は何を必死に言ってるんだ。


「それはありえん!もはや街全体が【ギルティー】の魅力に支配されておるし。」

 王様は力強く否定してくる。後半は何て言ったか聞こえないほど小声だったけど。


「この罪人キャンディ・スイーツは、王都のスイーツ市場を独占しておるのだ。お菓子の家とか言って病原菌を撒き散らしているはずだ。私が試した店は、ことごとく虫が集まって1日たりとも維持できませんでした。」


 何言ってんだこの防衛長官は?

 以前、俺のお菓子の家を真似して、お菓子の城を作ったお菓子屋が出来たが、開店初日に店が崩れた事があったな。

 それにしても、病原菌とは人聞きの悪いことを言うもんだな。

 

「私の店は、決して病原菌なんてありえません。毎日私が魔力を込めて管理維持してますので、いつでも最高品質を保証します。」

 病原菌なんて噂が流れたら、店が潰れてしまうから否定した。


「確かに外壁のキャラメルはビターで美味しかったな。」

 王様がぶつぶつ言ってるが聞こえない。外壁?いやいや、子供じゃないんだから、人の家の外壁を食べる人はいないでしょ。


「ありえません!それが出来るなら王宮魔術師以上の魔力が必要です!あんな安い値段であの商品は、用意できるわけがない!」

 防衛長官は、顔を真っ赤にして話している。


 あ〜あ。この人俺の真似して、失敗した腹いせに罪人にしようとしてるのか。あの崩れたお菓子の城を作るなら、10年遊んで暮らせるほどの予算が必要だろう。

 そのお金を消したとしたら、怒ってもおかしくないだろうな。俺のオリジナル魔法でお菓子を作っているから、低予算でも実現出来るのだ。


「これが出来るのが【ギルティー】だろう!王都一いや世界一のお菓子屋だ!」

 王様は、王冠を外し立ち上がった。


 いやいや、王様。熱入りすぎだよ。

 やっぱりあのおじ様だな。キャラメル好きで、最近娘に冷たくされたから、苺のショートケーキを買って行ったおじ様だ。



「しかし、この者の無実を証明出来ますまい。1日地下牢に投獄しましょう。私が【ギルティー】を調査いたします。この王国の防衛長官とて!」

 防衛長官は何がしたいんだ?


 俺よりも、あの3人は罪人なんだろ?

 俺関係ないじゃん。


「よしわかった!防衛長官がそこまで言うなら仕方がない。1日調べてみよ。もし万が一国家侵略の証拠があれば処刑しよう。」


 防衛長官は、ニヤリと笑っている。


「しかし!証拠が一つたりとも証明出来なければ、防衛長官の貯金を全て使い【ギルティー】のスペシャルメニューを全国民にご馳走しなさい。」

 王様は笑顔で話している。


 いやあんたがスペシャルメニュー食べたいだけだろ!


 キャラメル大好きなおじ様が注文するスペシャルメニューは、ホワイトチョコケーキに、キャラメルナッツをスポンジに練り込んだ甘い中に、ほろ苦い味わいのスペシャルケーキだ。


 あれはおじ様と一緒に10時間かけて開発した、スペシャルメニューだ。


「これにて罪人キャンディ・スイーツの審議会を終了する。騎士達はキャンディ・スイーツとその3人を地下牢へ連れていけ!」

 防衛長官が言う。


 このまま牢屋に入れられるのか。店は大丈夫かな。

 あれ?店員の人達に伝えてないぞ。


 時刻は午前10時。

 お菓子屋【ギルティー】の開店時間となった。



 ◇


 同日午前9時。


「おはようございまーす」

【ギルティー】の裏口の店員出入口に白いフリフリのドレスを着た、少女が入ってきた。


 少女は、お菓子屋の家の住宅部分を歩き、キャンディの仕事部屋へ向かう。


「おはようございます。アリスが来ましたよ。」

 少女アリスは、満面の笑みで仕事部屋のドアを開ける。


 その部屋には、誰もいない。


「あれ?キャンディ様〜どこですか〜。」

 アリスは、家の中を探すがキャンディは居ない。


「かくれんぼですか〜。飴とクッキーはありますが、そろそろ注文のケーキを作りましょ〜。」

 アリスが声をかけるが、家から物音一つしない。


 おかしい。

 キャンディ様がこんな朝から出かけることは、ありえません。今日の注文のケーキは、一つも出来ていませんね。


 保冷庫を見るが、材料しか入ってない。

 あっ!アーモンドチョコレート発見。


 アリスは、アーモンドチョコレートを一つぱくりと食べながら考える。


 店の外には、お客様が並び始めている。


 どこに行ったのでしょう?


「おはようございます」

 店員入口から渋い男性の声が聞こえた。


 アリスは急いで入口に向かう。


「おはようございます。ベルさん、キャンディ様知りませんか?」


「キャンディ様ですか?部屋に居ないのですか?」

 銀髪の大柄の男性が答える。ベルドルド、【ギルティー】の会計担当だ。


「居ませんね。もうすぐ開店なのにどうしましょう」


 二人で開店の準備をしながら考える。キャンディにかかればケーキは1分もあれば完成するが、肝心のキャンディがいないのだ。


 店の棚にクッキーと飴玉、保冷庫にあったチョコレートを並べていると、時刻は午前10時。開店の時間になってしまった。


「すみません。キャンディ様、来てませんか。」

 アリスは、店の鍵を開けて外の列に声をかける。


「いや。キャンディさんはいないよ。」

 最前列に並んでいた主婦が答える。


「そうですか。実はキャンディ様が朝から居ないのです。」

 アリスが説明しようとすると街全体にビービーと警告音がなる。


 国に戦争などの一大事がある時使われる、映像照射魔法が城から空中に写された。王様が神妙な顔つきで玉座に座っている映像だ。


「これは訓練ではない。ただいまお菓子屋【ギルティー】の店主キャンディ・スイーツは国家侵略加担容疑によって防衛長官ナリアン・オワリンヌにより、罪人として投獄された。お菓子の家に今から防衛長官ナリアン・オワリンヌが調査に向かう。決して邪魔だけはしないでくれ、防衛長官に危害を加えないでくれ。これは訓練ではない、事実だ。【ギルティー】店主キャンディ・スイーツからのお願いだ。ちなみに調査の結果問題なければ国民全員にスペシャルメニューを防衛長官より、ご馳走してくれるから、心配はいらん。黙って調査をさせるよう、私からもお願いする。以上だ。」


 王様は話終えた。

 街はざわざわと騒がしくなっている。


 映像には王様が呆れた様な表情で写っている。

 あれ?まだ切れてないのかな。


「全くマシュマロン女王国だか知らないけど、よりにもよって【ギルティー】を知らないなんて世間知らずも良いところだな。ナリアンもお菓子屋の城なんて作って、キャンディ君じゃなきゃ無理なのわかんないかな。しかも腹いせに罪人にするなんてね。そう思わない。」

「そうですね。」

 王様は、玉座から立ち上がり話している。

「ちなみに君は、スペシャルメニューあるかい?」

「いえ、【ギルティー】のスペシャルメニューは、限られた人だけが注文できるスイーツなので、私はまだダメでした。」

「はっはっは、そうか。王国一の魔法使いの君でもダメだったか。私も苦労したよ。彼のなかじゃキャラメル好きなおじさん位だと思うよ。」

「そうですか。ついにスペシャルメニューが食べれるのですね。楽しみです。」

「今から材料の注文をしないとね。キャンディ君に材料を聞いてくるよ。後はよろしく」

 王様は画面から消えて行った。


「スペシャルメニューか楽しみだな。あっやべ、消し忘れてた。」

 王国一の魔法使いの声と共に空中の映像が消えた。


 空を見上げていたアリスとベルドルドは、お互いをみる。

「「どういうこと?」」


「ちょっと!キャンディさんが罪人ってなに!」

 並んでいた主婦軍団がドシドシ詰めてくる。


「防衛長官だ?誰に喧嘩売ってんのか分かってんのか?」

 強面の男性達が殺気立っている。裏社会の住人だ。表立って買えない人に高額で売り付けているらしい。そして店にその売上金を納める優しい人たちだ。


「マシュマロン女王国に物送ってやれ。女王に食わせろ。」

 と通信魔法で指示を出す人達が列から離れていく。他国からの仕入れの商人達だ。


「キャンディ殿が罪人か。これを助け我が国に連れて行けば将来安泰だ!」

 とエルフの集団が話している。人里に来ないエルフだがキャンディがエルフの国でスイーツを作ってしまったため、【ギルティー】の魅力に虜にされ、王都にくるようになったのだ。世界樹の草餅が大好きだ。


「処刑されればパティシエゾンビとして転生し、我が魔族の仲間入りだ。将来の目的が叶うぞ!」

 と角の生えた魔族の集団が話している。魔王が人間界一のスイーツと有名な、キャンディのケーキを食べてしまったため、人間を滅ぼすと言う目的を綺麗さっぱり忘れ、キャンディを仲間にするのを、全魔族の目的にしてしまったのだ。


 それよりパティシエゾンビって何?


「こんな基礎もねぇのに強固な家の秘密が消えちまうたぁ許されねぇ。おめぇら城に行くぞ!」

 とドワーフの集団がドスドスと城に歩いていく。「甘いのは酒に合わねぇ」と文句を言っていたドワーフ達に、キャンディが怒って食べさせた、かりんとう(激辛調味料入り)にはまり、仲良くなったドワーフ達だ。

 お菓子の家は、キャンディの理想を材料と魔力で無理やり固めているため、技術なんてない。


 他にも多くの人たちに事情を聞かれるが、アリスとベルドルドはなにも分からない。

 話をしていると、一人小太りの男がやってきた。


「私はこの王国の防衛長官ナリアン・オワリンヌ伯爵である!お菓子屋【ギルティー】の調査を開始する。」

 防衛長官は話はじめる。


「あの〜、一人でやるのですか?」

 アリスは聞いてみる。


「そうだ。騎士団長に言ったら「【ギルティー】の調査?無理だ、出せない」と断られたんだ。まったく国の一大事に騎士団長が逃げるとは。」

 防衛長官は、怒っているが、話を聞いている周りの人は全員理解している。ギルティーに喧嘩を売ったら世界に喧嘩を売るのと同じなのだ。


「好きなだけ調査してください。ちなみにスペシャルメニュー、ホールケーキで12万エルします。6等分のひときれが一人前でも20000エルです。」

 ベルドルドの調査が問題なかったら、これだけ払うと伝える。

 一般市民の一食が500エルで定食が食べれる。王都民は、5万人以上いるので大変だ。


 防衛長官は、店に入って行った。

 アリスとベルドルドは、店じまいする。行列にも説明して、解散してもらった。


「私一人でやる。キサマらは、どっかに行っていろ。」

 と防衛長官が商品棚をずらしながら、汗をボタボタ流して言う。


「商品は全部買い取りですからね。」

 とベルドルドが言い、二人は店をでる。店には商品や材料が残ったままだ。


 二人は帰宅した。


「なんだこの店ーーー!」

 お菓子の家から絶叫が何度も聞こえていた。



 ◇◇


「罪人キャンディ・スイーツと他3人は牢屋に入っていろ。」

 看守の男性が言う。たしか柑橘系のスイーツ好きな男性だ。店に来たことある。


 4人は牢屋をみる。鉄の柵の扉にむき出しの石の部屋だ。3人が先に入っていく。


「これが牢屋か。初めてみたな。」


「キャンディさんは、こちらです。」

 3人が入り俺も入ろうとしたが、看守に止められた。隣の牢屋に入れられるらしい。


 鉄の柵をくぐれば、真っ赤な絨毯が敷き詰められ、壁はレンガ作りで絵画まで飾ってある。牢屋の中心に大理石のテーブルでフルーツが入ったかごがある。ソファも5人座れるほどの大きさもある。

 ベッドはキングサイズだ。

 なんだここは!

 隣の牢屋の10倍以上の広さがある。


「こちらで1日過ごしていただきます。」

 看守が言う。


「分かりました。ありがとうございます。」

 思わずお礼言っちゃったよ!

 牢屋だよね?最後の思い出にならないよね!


 看守の男性は、離れて行った。


「申し訳ありません!」

 隣にいる男達が謝ってくる。


「私は大丈夫ですよ。あなた達は、自分の心配をしてください。敵対しなくても、未遂では罪になるでしょうから。」

 王国を攻めようとした罪は消えないだろう。


 隣の男達は、静かになってしまった。


 俺はソファに座り、テーブルの上にあるオレンジを食べる。

 うん、旨いな。


 牢屋でフルーツを食べていると、外に来客が来た。


「どうもキャンディさん。昼食の準備が出来ました。」

 白い制服の王宮料理長がやってきた。【ギルティー】に来るときとは違って、料理人らしい服装が新鮮だ。


「料理長様がわざわざ持ってきてくれるのか。ありがとうございます。」

 大理石のテーブルに料理が並んでいく。


 前菜からメイン料理までフルコースが一気に並んでいる。料理長が料理について説明しているが、とにかく旨い料理と言うことは分かった。


「美味しいですよ。デザートのプリンは、負けませんけどね。」

 料理では勝てないが、デザートだけは物足りないな。


「ですよね。キャンディさんのプリンには、とても敵いませんね。材料が同じでも全く違うプリンになってますからね。」


 料理長とは、プリンについて5時間議論したものだ。トッピングでさらに3時間議論したのは、良い思い出だ。


「王様からスペシャルメニューの材料を用意するように言われました。」


 キャンディが材料を言い、王宮料理長が紙に記入していく。材料は特別な物はないし、店にも材料があるので急ぐ必要もない、雑談しながら、楽しく過ごしている。


「それでマシュマロン女王国ってどんな国なんですかね?」


「マシュマロン女王国は、隣国で果物が特産品の国ですね。なんでも、女王が国を納めるため、他国から狙われるので、争いが激しい国ですよ。」

 王宮料理長が答える。


「そうなんですよ。他国から狙われるので、私達がこの国の調査に来たんですよ。今となっては無駄な事をしました。」

 隣の男達が話しにまざる。


「同盟は結べないのか?」


「そうですね。先代の女王様は、争いが大好きでしたが、今の女王様は、友好的ですよ。ただ他の国からすれば、支配したい土地なのでしょうね。」


 他の強国からしたら、支配出来るなら支配したい場所らしい。領地は広く、果物や野菜などが豊富な場所みたいだ。


「なら王様に頼んで同盟を結べは、問題ないだろうね。」

 俺は気楽に話す。


「同盟を結べは、よろしいですか?」

 料理長が真剣に紙に書いている。


「良いんじゃないの?果物や野菜が美味しいなら買い取ってスイーツにしたいし。」


「分かりました。私はそろそろ戻ります。夕飯にまた来ます。」

 料理長はテーブルの食器を下げて帰っていった。


 一人広い牢屋に居てもやることはない。


「ベッドに横になって、のんびり昼寝でもするか。」

 キングサイズのベッドに横になると、すぐに寝息を立てて眠りについた。


「キャンディさんを投獄するとは国を滅ぼすのか!」

「これだから人間は、すぐにキャンディ様を我が国に連れて行くぞ!」

「こんな脆い城なんてぶっ壊してやるぞ!」

「今すぐ処刑しろ!この剣で斬れば綺麗なゾンビが出来る!手伝ってやるぞ!」

 王城の外では、キャンディ投獄に対する抗議の声?が上がっていた。



 ◇◇◇


 なぜこんな事になった。


 一人の少女が頭を抱えていた。マシュマロン女王国の女王カール・フルーティアだ。20歳の若さだが一国の主だ。


「我が国の財政は、破綻寸前です。これも全てカール女王様の責任ですぞ。」

 マシュマロン女王国の貴族達からねちねちと言われ、どうにか財政を立て直すにも、果物と野菜しかない我が国では、どうしようもない。


「隣国のギャルメル王国に助けて貰えば、いやいや交流もないし、攻められたらすぐにやられてしまう。」

 ギャルメル王国は、この世界で一番発展した国で、戦力も桁違いに強い。


 そうだ!ギャルメル王国の強さの秘密を知れば、我がマシュマロン女王国も発展出来るに違いない。


 女王は騎士3人に指示を出し、ギャルメル王国の強さや町並み、経済状況などの調査を依頼した。



 それから3日後正午過ぎに、マシュマロン女王国を襲う悲劇が始まった。



「我々は、ギルティー実行団、わが主への敵対行動と見なしやってきた!」


 マシュマロン女王国の城の周りには、様々な種族達が集まっていた。マシュマロン女王国の騎士団は、捕縛され動けなくなっている。


 ギルティー実行団ってなんなの!

 有罪なの!私は彼らの主への罪で殺されるの!


 ギルティー実行団達が、女王のいる広間までやってきた。

 商人の人間やエルフやドワーフ、魔族や獣人がいる。

 ギルティー実行団は、お菓子屋【ギルティー】の非公式の秘密団体である。


「私がマシュマロン女王国、女王のカールよ。あなた達の主は、誰なのかしら?」

 おそらくギャルメル王国の王様だろう。


「我々の主は、キャンディ・スイーツ様だ!」

 商人の男が声を上げる。


「え?キャンディ・スイーツ?様ってだれ?ギャルメル王国の王様かしら?」


『はぁ』

 女王の発言にキャンディー実行団全員がため息をつく。

 ありえない。世間知らずにも程があると全員が女王を見ている。


「キャンディ・スイーツ様は、お菓子屋【ギルティー】を経営するこの世界一番のパティシエで我が人間の宝である。なのにあなたは一国の主でありながらキャンディ・スイーツ様を知らないなんて恥ずかしくないのか!」

 一商人が女王様に説教するなんておかしい事だか、ギルティー実行団は、誰も止めない。


 むしろ。

「いやいや、彼はエルフの進化した姿に違いない。ハイエルフいやゴッドエルフに違いない。」

「ふざけてるのか?あの建築技術は神の秘技に違いねぇ。エルフな訳ないだろ。奴は創造神の生まれ代わりでドワーフの仲間だ!」

「ふっふっふ、今の種族なんて何でも良い。だがあと80年後には、我が魔族の仲間入りだ。最高位のパティシエリッチキングとして君臨するだろう。」

 などと、張り合っている。


「パティシエリッチキングって何?いやそれよりも、キャンディ・スイーツなんて知りません。」

 頭の中で骸骨がマントをなびかせ、ケーキを作っているが、女王様は本当に知らない。女王業務のため、他国に遊びに行くこともないし、城の料理人の料理しか食べていない、箱入り娘なのだ。


「それが罪です。あなたが送った騎士3人がキャンディ・スイーツ様の店で買い物をして虜になったのは良いです。しかし、そのせいでキャンディ・スイーツ様が国家侵略加担容疑にかけられました。その意味が分かりますか?」


「なぜ?騎士達の仲間だと思われたから?」


「正解です。さすが女王様、頭が良いですね。キャンディ・スイーツ様のお菓子は、世界を虜にしています。我がギャルメル王国の防衛大臣が目の敵にしてまして、これを期にキャンディ・スイーツ様に牙を剥きました。」


「そうですか。全面的に私が悪いですね。」


「いえいえ気にすることはありませんよ。キャンディ・スイーツ様を知る機会がなかったのでしょう。一回目は許します。二度目はありませんけどね。」

 商人の男が笑顔を向けるが、目が笑っていない。周りの者達も嫌に圧が強い。

 ギルティー実行団団員のルール、どんな人でも知らない事はどうしようもない。だから一回目は許す。だが二度目は自分の意思で反抗しているので、決して許さないのだ。


「それではこちらが、キャンディ・スイーツ様のお菓子です。」

 商人の男がお菓子の詰め合わせを女王様へ渡す。


「これがお菓子ですか。」

 カール女王が袋から取り出した一つのマシュマロを口に入れる。


「ん〜〜〜〜!素晴らしいです!」

 今まで食べてきたマシュマロは、腐っていたと錯覚するほどの美味しさだ。こんな状況だが今まで生きてきた中でも最高の笑顔で、さらに袋からマシュマロを取り出している。


 プルプルプル。

 商人のポケットから音が鳴る。通信の魔法道具で、鉄の板から声を送受信できる。


「はい。国王様久しぶりです。キャンディ様があんな事になって、え?キャンディ様がマシュマロン女王国の果物が欲しい。分かりました。対等の交易ですか?女王様に変わります。」


「女王様、ギャルメル王国の国王様が話があるので変わってください。」


 通信機をカール女王に渡す。


「はい、マシュマロン女王国の女王カール・フルーティアです。」

 マシュマロを素早く飲み込み答える。


「ギャルメル王国国王マルコリーニ・ギャルメルだ。マシュマロン女王国では、果物が特産品らしいが、我がギャルメル王国と交易をしようではないか。」


「交易ですか。不利な条件はありませんか?」

 マシュマロン女王国は小国で強国のギャルメル王国との交易では、不平等な条件になるだろう。


「条件?いやいや無いよあるとすれば、キャンディ君が望む果物は優先して用意して欲しいくらいだね。財政が厳しいらしいじゃないか、すぐに農業で国が潤うはずだよ。」


「よろしくお願いします。一度キャンディ・スイーツ様と会えませんか?」


「キャンディ君に?そうだ、一度ギャルメル王国においでよ。娘と同い年みたいだから、話も合うだろう。交易の書状も作るついでに遊びにおいで。今からくるかい?」


「今からですか?馬車でも3日はかかりますよ。」


「我が使い魔なら3時間で着きますぜ。」

 魔族の男が手を上げる。


「お願いします。今から向かいます。」


 女王様と国王様の話は終了した。


「それでは行きましょうか。」


 魔族の男が口笛を鳴らすと、城の広場に10メートル級のドラゴンが降り立った。


 ドラゴンの背中には、人が入れる小屋が乗っている。

 小屋に魔族の男と女王、商人の男が乗り込み王都へ飛び立った。


 残ったギルティー実行団達は、お菓子屋【ギルティー】マシュマロン女王国店の確保のため街へくりだした。


 ◇◇◇◇


「ぐぬぅ」

 顔をしかめ、お菓子屋【ギルティー】を物色する防衛長官ナリアン・オワリンヌ伯爵は、驚愕していた。


 外は赤く綺麗な夕日が窓から差し込み、そろそろ調査時間が迫っている。



「伯爵の私が、たかがパティシエごときに負ける訳がない!」と調査を始めたが【ギルティー】のクッキーを一口食べただけで自分の愚かさを痛感してしまった。それも調査開始2分後の出来事だった。


 商品棚に並んだクッキーを一つ食べてしまったら、もうキャンディ・スイーツの虜になってしまったのだ。


「私はどうすれば良いのだ。爵位剥奪か、王国追放か、いや処刑もありえる。考えれば考えるだけで自分の愚かさに泣きたくなる。」


 オワリンヌが外を眺めると、王国上空を巨大なドラゴンが飛んでいる。


「ははっ。疲れてるのかな。この謝罪文を国王様に読んで、私の人生を終わらせよう。」

 オワリンヌ伯爵は、【ギルティー】の調査を終わらせ王城へ足取り重く帰っていった。


 ◇◇◇◇◇


「それでは罪人キャンディ・スイーツの審議会を開始する。」

 国王様が声を上げる。この審議会は、王国中に映像魔法で中継されている。


 俺は牢屋から、マシュマロン女王国の騎士3人と共に、王様がいる広間に連れられてきた。今回は手枷もなく身軽になっている。


「こちらの方は、マシュマロン女王国のカール・フルーティア女王である。我がギャルメル王国と対等な交易を約束したのだ。」

 国王様が笑顔で話している。


「この度は、キャンディ・スイーツ様のおかげでマシュマロン女王国の発展が約束されました。ありがとうございます。」

 カール女王が頭を下げる。


「俺のおかげ?いやいや頭を上げてください。」

 女王様にお礼を言われる事は何もしていない。


「良かったな、キャンディ君。さて問題は、防衛長官ナリアン・オワリンヌによる調査結果だな。確かキャンディ君がギャルメル王国を侵略容疑だったかな?」

 国王様から笑顔が消え、冷たい目線を防衛長官へ向ける。


 防衛長官ナリアン・オワリンヌ伯爵は、ガタガタと足を震わせながら発言する。

「本日お菓子屋【キャンディー】を1日調査した結果、一切国家侵略の証拠はありませんでした。キャンディ・スイーツ殿が作るクッキーは、私が今まで食べてきたどのクッキーよりも、次元の違う美味しさで、今までの私の行いがどれほど愚かな行為だったのかをしみじみと実感いたしました。この罪は、私一人で許して頂きたい。爵位剥奪でも王国追放でも、処刑でも喜んで受けます。なので、私の家族だけは助けて頂きたい。」

 ナリアン・オワリンヌ伯爵は、涙を流しついには土下座して懇願している。


 今朝の偉そうな人物とは思えないな。あれだけ俺が悪いと力説してたのに、たかがクッキーを食べただけでここまで変わるのか。一個50エルのクッキーなんだけどね。



「なるほど、なるほど。防衛長官ともあろう者がこの国の戦力を全くわかって無いとは話しにならないな。」

「そうですわ。キャンディ・スイーツ様がもたらす経済効果は、王国一ですからね。」

「王国の未来はキャンディ・スイーツ様しだいなのじゃ!!」


 今朝は、居なかった大臣達がここぞとばかりに攻撃している。みんな店の常連客だ。


「静まれ。防衛大臣も悪気は無かったのだろう。キャンディ君を知らない無知は理解出来ないが、一回目は許そうじゃないか。二度目はないがの。」


「それでは私に罰は。」


「罰?あるわけないだろ。ただ約束は守って貰うぞ、お菓子屋【ギルティー】のスペシャルメニューを国民全員にご馳走するんだ。それが罰だな。」


「ありがとうございます!ありがとうございます!」

 ナリアン・オワリンヌは、涙を流しお礼を言う。


 良い話なのかな?

 涙を流している防衛長官を見ていると、俺が悪い事をした気分になってしまうな。


「さて、キャンディ君。ナリアン・オワリンヌへの罰として【ギルティー】のスペシャルメニューを用意してもらう事になるだろう。ナリアンには、【ギルティー】にて店員として雇ってくれないか。正直この王国で防衛長官は、要らないと思うのでな。」


「はぁ、そうですか。」

 防衛長官が要らない国って大丈夫なのか?


「【ギルティー】に魔王やエルフ王や獣王が来ているのは、知っているのだぞ。だから、安心じゃ。」


 確かに来ている。

 3人は、お菓子の家でお茶しているのを何度も見ている。

 戦力で言えば、城の騎士よりも強いだろう。


「そうですか。スペシャルメニューを作るのは問題ありませんが

 、材料の仕入れだけが問題ですね。」


「それは、大丈夫だ。用意は商人の方に注文済みじゃ。だから出来る個数だけ用意してくれ。【ギルティー】での引換券を国から発行してスペシャルメニューと交換出来るようにするからの。」


 王様がこれからの流れについて説明も終わり、審議会は終了した。


 俺は、ナリアン・オワリンヌ防衛長官から再度謝罪され、お菓子の家へ帰宅した。


 ◇◇◇◇◇◇


「だから一番人気は、『ホワイトミルフィーユ〜世界樹の果実をそえて〜』に決まっておる!」

 エルフの王様がミルフィーユをフォークで食べながら言う。


「いやいや、『魔王復活!〜神殺しのブラックエクレア〜』に決まっとる!」

 立派な2本の角がある魔王様が手をチョコレートまみれにしながら、力説している。


「ふっ。小さな争いだな。一番は、この『獣神の神秘〜メロンシャーベットスペシャル』だからな。」

 ライオンの獣人の獣王がメロンの中身をシャーベットにしたスペシャルメニューを小さなスプーンで少しづつ食べている。


 翌日からスペシャルメニューの提供を開始したら、スペシャルメニューがある常連客がこぞって来店したのだ。

 スペシャルメニューは、全部で30種類あり、常連客と一緒に作った素晴らしいスイーツばかりだ。


 国民は、この30種類から一つ好きなスペシャルメニューを選んで注文するのだ。


「それにしてもよく集まるもんだな。」

 店には行列が出来ているが、一切トラブルが起きていない。


 トラブルを起こした者は、【ギルティー】への入店禁止と言うとても重い罰が与えられるのだ。

 そのため、騎士団が行列を整理しているが、お客様と騎士達が会話するほど暇みたいだ。


「キャンディ様〜、アリスもスペシャルメニュー食べて良いですか?」

 アリスがスペシャルメニュー『夢の国からアリスへの贈り物』(苺のショートケーキ)を両手で持っている。


「ああ、いいよ。誰も文句は言わないからゆっくり食べな。食べ過ぎて太らないようにな。」


「キャンディ様〜、乙女に太るなんて言っちゃダメですよ〜。」

 アリスは顔を赤くして言うが、並んでいる女性達の表情が険しくなっているのを、キャンディは知らない。


「ジルさん、スペシャルメニューは、いつまで作れば良いのかな?」


「そうですね。あと5年もあれば終了すると思いますよ。」


「そうか、5年か。」

 5年間毎日、国民がスペシャルメニューを食べた笑顔を見れるなんて最高じゃないか。


「5年後にまた世界を見る旅に出ようかな。」


「それは、良い考えだ!エルフの国に移住なんてどうだ?」

「いやいや伝説の雷獣を獣の国に観光に来れば良いぞ。」

「魔界地獄巡りの旅なんてどうだ?」



「そうだね。またいろんな国にお世話になろうかな。」

 そんな事を思い、スペシャルメニューを作り始めるのだった。




 おわり。





 この物語は、魔界のスイーツ王キャンディ・スイーツが人間だった頃の物語である。

 魔界伝第2部・不死のパティシエバンパイアエンペラーより抜粋。









キャンディ・スイーツの老後や成長編も気が向いたら書いて行きたいと思っています。



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星3 ★★★気が向いたら見たい!

星2 ★★進んでは見ない!

星1 ★もう見ない!



最後まで読んでくれて、ありがとうございます。


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