09.時間も3倍でした
ん?
まだ18時なの?
こんなに真っ暗なのに?
「今、何時頃ですか?」
「そうですね……おそらく20時くらいだと思います。あ、時計がございませんでしたね。只今お持ちいたします」
あれ?
スマホの時計、狂ったのかな?
まさか時差があったとか……?
それで、よーくよーく見てみたら、火曜日の18時だった。
召喚されたのは月曜の9時くらいだったハズ……。
侍女さんがクルクルと回る飾り付きの置き時計を持ってきてくれた。
その時計は20時過ぎを指している。
「あの……私がこっちに来たのって何時くらいでしたか?」
「確か9時過ぎだったと思います」
デスヨネー。
…………ま……まさかっ!!
嫌な予感がして、じーっと時計を見つめる。
するとその置き時計が1分経った時にスマホを見ると3分進んでいた。
やっぱりーっ!!
ここは時間も3倍だーっ!!!
こちらに9時に来て、今が20時。
つまり11時間経っている。
それを地球時間に換算すると33時間。
月曜の9時から33時間で……33−24=9。
9時から9時間で18時。
合ってるぅ〜。
て事は、こっちは一日72時間って事!?
ひぇ〜。
どおりでお腹が空くし、眠いと思った。
起きたのが13時って言っていたから、すでに7時間経ってる。
イコール21時間も経ってるじゃん!
え?
待って!
「あ、あのっ! 明日って何時頃、皆さん起きられますか?」
「はい、一応7時に来る予定です」
今が、20時。起こしに来るのが7時。その間11時間。
……33時間っ!?
ヤバイっ!
お腹すくじゃん!!
聞いてみると、護衛さんが扉前に立つのは必須らしく、呼べば誰か来てくれるらしい。
でもそんな夜中に呼ぶなんて、悪くて出来ないよー。
それで侍女さんにお願いして、飲み物と軽食を用意してもらった。
後は電気はつけておいてもらって、扉を私が通れるくらいに開けておいてもらった。
扉は取手には届かないし、開いていても扉自体が重くて中々開けなかったから。
ホントに私は一人で生活する事すら出来ないのだと、思い知った。
◇
みんなが下がって、一人広いベッドの上で考える。
一日72時間。
て事は、23時に寝て、6時に起きると考えて、睡眠時間が7時間……つまり21時間寝て51時間起きてるってこと?
うん、無理っ!!
まずそんなに長い時間寝れないし、仕事で徹夜はしてきたが、毎日となると……倒れちゃうよ。
うーん、うーん。
ノートサイズのビスケットを齧りながら考えてみる。
食べるのはこちらの生活に合わせられそう。
お腹が空いたらお菓子を食べれば、何とかなるでしょ。
でも寝るのは無理だな。
72時間は長すぎるので、半分の36時間なら……何とか……。
2時〜5時、9時〜10時、14時〜17時、21時〜22時の間、寝るのはどうかな?
1時間でも私には3時間だし、それくらいお昼寝すれば36時間こなせそう。
明日、水色神官さんに相談してみよう。
はっ!
3倍って事は、こっちの時間ではどんなに頑張っても、後二十年も生きられないって事だよね?
折角喚んでもらったのに、申し訳ないかも。
二十年かぁ……。
長生きな猫みたい。
サイズもそれくらいだしね。
そう言えば、猫も犬もちょいちょい寝てた。
彼らにも地球の一日が長かったのかもしれないなぁ。
そんな事を考えながら、長い長い夜を過ごした。