53.よしっ!!
ふっと目が覚めると、物凄く近くに天井が見えた。
ん? と思って目を凝らしていくと、天蓋の天井だった。近いと思ったけど、ちゃんと私サイズであれば丁度良い高さ。今までの天井が高すぎただけだった。
あぁっ!
久しぶりのベッドッ!!
そのままゴロゴロと転がり感触を楽しむ。
勿論今までのベッドもフッカフカだったし、シーツも気持ち良かったが、いかんせん部屋サイズだったのだ。どうしてもベッドという感覚が持てなかった。
「アリス様、お目覚めですか?」
ベッドの横に跪いて、覗きながらディアナさんが問いかけてきた。
「はい、スッキリしました」
「それは良かったです。何か軽くお召し上がりになられますか?」
時計を見ると14時過ぎだった。
それならルーシャス様はもうお昼は終わっているだろうと思い、了承する。
顔を洗って、着替えさせてもらい、化粧をしてもらう。
そして改めて部屋を見ると、ソファーにローテブル、テーブルと椅子、机に、ドレッサーなど全て私サイズだった。
部屋全体は普通のサイズ(私にとっては体育館)で、その一角が私コーナーみたいになっている。反対側にはこちらでの普通サイズのクローゼットや本棚もあった。
「お待たせいたしました」
そう言って用意された軽食はハムエッグとパンだった。
勿論お皿もカトラリーも私サイズ。
嬉しくなっていそいそと座って食べる。
あぁっ!!
目線が高くないって素晴らしい!
椅子にすぐ座れるし、物を落としてもすぐ拾える。(勿論侍女さんが拾ってくれるが)
お城でもすぐに椅子は改良されて、自分で座れるようになったけどテーブルは高いままだった。当然目線は高いし、地に足がついていないのはどうも心許なかったのだ。
ソファーに座って、ほぅっと一息つきながら紅茶をのんびり飲む。
ただ給仕をしてくれるディアナさん達は大変そうで、ちょっと申し訳なかった。
しばらくすると「起きたのかい? カエデ」とルーシャス様がやってきた。
「ルー様!」
スクっと立って(あぁ、素晴らしい!)タタタタとルーシャス様に走り寄る。
私を抱き上げて、溢れんばかりの笑みを見せながら「気分は治ったようだね」と嬉しそうに尋ねてくれた。
「はい、もう大丈夫です。ルー様、素晴らしいお部屋を有難うございますっ!!」
「はは、気に入ったかい?」
「はい! とてもっ!!」
「それは良かった。職人達が張り切って作っていたからね。気に入ってくれたなら彼らも喜ぶよ」
聞いてみると、今までは家具などは小さなサイズを作った事などなかったらしい。でも私が王宮で苦労しているのを聞いて、みんなで試行錯誤しながら作ってくれたそうだ。
なんと、有難いことか。
「皆さんにお礼が言いたいです」
「彼らは領地にいるから、今度行ってみるかい?」
「はい! 是非っ!」
◇
それからルーシャス様にお屋敷を案内してもらった。
食堂には私用の椅子があったり、客間や居間などにも私用のソファーや椅子が置いてあった。
ルーシャス様の執務室にはずっと一緒にいたいからと、一角に私コーナーが出来上がっていた。お仕事中も側に居て良いらしい。
そして要所要所にトイレが設置してあった。
これはホント助かる。
だって部屋がデカいということは、トイレが遠いってことなんです!
廊下の先にありますよ、と言われてもそこまでが遠くて。
ルーシャス様のお屋敷は、私にとって住み良い環境が整えられていた。
お庭も軽く紹介されて、最後にルーシャス様のお部屋に連れていってもらった。そこで教えられたが私の部屋は隣にあり、お互いの部屋の間には鍵のない扉がある続き部屋だった。
そこにも私用の扉がついていて、いつでも訪ねられる様になっていた。
「今日から夜は一緒に寝ようね」
お昼寝や、小さなベッドで寝たい時は自分の部屋で寝て良いが、夜はルーシャス様のお部屋で一緒に寝るのは決定らしかった。
私も願ったり叶ったり、だ。
夕食をルーシャス様と一緒に食堂で食べて、居間に移動して食後の紅茶を二人で飲む。
と言っても、私はルーシャス様のお膝の上。
てか、ずーっと抱っこされている。
食事は何とか一人で座る事を許してもらったけど、ルーシャス様は不満そうだった。
でも……食事を食べさせてもらうのは、ちょっと……。
私サイズの小さなカトラリーを、ルーシャス様がちまちま使う絵面ってどうよ?
そう思って遠慮したんだけど、その内やられそうだ。
そんな事を考えながらぺったりくっ付いてのんびりしていると、ディアナさんが「そろそろお時間です」と迎えに来てくれた。
何か用事あったっけ? と思っていると、ディアナさんに連れられお風呂に入らされた。
薔薇の花弁の浮いたお風呂に浸かりながら、丁寧に二度頭も洗われ、香油を塗られた。体も洗った後にいい匂いのする香油を塗られ、マッサージされた。これが気持ち良くてついうとうとしてしまう。
髪を乾かし、スキンケアをしてもらう。
鏡を見ると、まだ見慣れない石が額で光に反射してキラキラと光っている。
……これについて誰も何も言わないんだけど……まさか見えてないなんて事はないよね?
お風呂やさっきのスキンケアを思い出すと、一応避けて触っていた気がする。
うーん、私から言うまでスルーなのかな?
どうも式典以降、私への対応が一ランクアップした様な気がする。あ、ルーシャス様以外。
アンタッチャブル的な扱いなのかも?
私としても言うなら一番にルーシャス様に言いたいので、今の所スルーしとこ。
そして着替えさせられたのは、スケスケではないにしろ薄めのスベスベ素材で前留めのネグリジェだった。
驚いてディアナさんを見上げると「この日のために作っておきました」とにっこり微笑まれた。
…………一応初夜だもんね。
私は真っ赤になりながら「有難うございます……」と言うのが精一杯だった。
そして、ささどうぞとばかりに続き扉の前で下されてしまう。
「では、お休みなさいませ、アリス様」
「おやすみなさい、ディアナさん」
みんなが去った後、ゆっくりと深呼吸をする。
スーハー、スーハー。
よしっ!
私だって彼氏がいた事あるんだ!
乙女じゃない!
ルーシャス様を誘惑するぞーっ!!
おうっ!!
……ま、私から誘った事なんてないけど……何とかなるでしょ。




