05.起きました
パチッ。
やけにすっきりと目覚めた。
寝起きは良い方だが、目覚ましもなく起きたのは久しぶりだった。
ん?
ここ、どこだっけ?
「お目覚めですか? 聖女様」
くりっと声の方を向いて、ビクッとなった。
「驚かしてしまったようで、申し訳ございません」
でっかい侍女さんがしゅんとなってしまった。
「いえ、大丈夫です」
まだあなたのデカさに慣れてないだけです。
「よくお休みになられたようで良かったです。お顔の色が良くなられました。今はお昼を回ったくらいですが、何か召し上がられますか?」
「そうなんですか? たくさん寝た気がしたんですが」
「そうですね、3時間くらいでしょうか」
「なら少し軽いものをいただけますか?」
「畏まりました。ただいまご用意しますね」
大きすぎるベッドの上で起き上がり、う〜ん、と大きく伸びをする。
よく寝たなぁ。
異世界でもぐっすり眠れるなんて、私って思ったよりも図太いのかも。
ま、文字通り死ぬ思いをしたんだし、疲れてたのね。
侍女さんにお願いして、ボウルに水を入れてもらって顔を洗って、軽く化粧をする。侍女さん達は興味津々で見てたけど、聞いてはこなかった。
しばらくすると侍女さんが軽食を持ってきてくれた。
クロワッサンとサラダとスープ。それにオレンジっぽい果物。
見た目は私の知っているものと変わらない。
が、当然大きくて、クロワッサンはオムライスですか? ってサイズだった。
カトラリーも大きくて、ナイフなどまるで太刀。
もちろんテーブルも高くて、椅子に立てば何とか見えるけど。
うーん……立って食べるか、テーブルに座って食べるか……。
よしっ! ここは日本人らしく正座で。
持ってきたマイ箸を使って、食べる。
スプーンが口に入らないからね〜。
美味しくて頑張ったけど、全部は無理だった。
これ、パン一個で一日持つかも。
お腹がいっぱいになったので、食後の運動がてら応接室に行ってみた。
ズラリと並んだ本達が気になって、見てみたけど……読めなかった。
話は出来るけど、文字は勉強しないとダメみたい。
「聖女様、紅茶でもいかがですか?」
「有難うございます。お願いします」
ローテーブルに乗せてもらった。紅茶も私も。
だって……ソファーとローテーブルが遠すぎてさ。
これまたローテーブルに正座する。
流石、王宮。
カップが高そうです。
う〜ん、どうやって飲もう?
カップは洗面器サイズで、ハンドルを持って飲むなんて無理。重い。
仕方ないから両手で掴んで飲もうとしたけど、熱くて断念。
しばらく待ちます。
冷めても全く問題ありません。仕事中など、いつもの事でしたし。
待っている時にノックされて、誰かがやって来た。
侍女さんが対応してくれた。
「聖女様。ノートクリスト様とランドール侯爵がお見えになりました。お通ししてもよろしいでしょうか?」
んー?
誰だっけ?
はっ!
私、ルームウェアのままだけど!!
「あ、あのっ! 私、この格好でも大丈夫ですか!?」
「……大変、お可愛らしいと思いますよ?」
……その間は……?
大丈夫なんですか!?
……黒いから大丈夫かな?
着替えるのが面倒なのと、もう来ちゃってる訳だし待たせるのも悪いかと思って了承した。
扉が開いて見えたのは、水色神官さんと、やたらと神々しくて美しい人だった。
銀髪がキラキラと輝いていますね。銀髪、初めて見ました。
なぜかガン見されているので、綺麗な紫の瞳もよく見えます。
整った顔立ち。ラノベで書かれているエルフや妖精が、リアルに居たらこうなんだろうって思う。
でっかいので神様って言われてもおかしくないくらい綺麗だ。奉りたい。
などと思っていたら、その人が恐ろしいスピードで近寄ってきた。
えっ!?
と思っている間に目の前まで来て、跪いていた。
その際に起こった風がふわりと届く。
あ、いい匂い。
「初めまして、聖女様。ルーシャス・ランドールと申します。どうか、私と結婚していただけませんか?」