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49.side エクトリア王国


 式典が終わり、夜会が始まった。

 夜会といっても時間帯も早ければ、いつものような立食の形でもなく、それぞれの席に座っての茶会のようなものだ。


 何故なら招待客が全員、王族だからだ。


 楓の式典にほぼ全域の国が参加する事となり、困ったのはエリザベスだった。以前の資料を調べても、式典にこれほど多くの国々が参加する事はなかったので、聖女への紹介も晩餐が殆どだった。

 晩餐の形にするには人数が多過ぎたし、夜会のように立食にするのも流石に躊躇われた。

 

 その事を楓との茶会でもつい悩んでしまっていると、どうしたのかと尋ねられた。そこで正直に話した所「じゃあいつものお茶会みたいにそれぞれの席に座って貰えば良いのでは?」と提案されたのだ。

 しかも席順は公平に名前順にして、自分が真ん中らへんに座り、更にそれを自分が提案したと言えば、誰も文句も言えないのではないかと言ってくれた。

 

 席順にしてもそれぞれの国の関係性があったので、それを考慮すると益々頭の痛かったエリザベスは、喜んでその案に乗った。


 ウォーレンにも許可を取り、楓の参加が一時間程度である事も各国にも通知したのだった。




 そして現在、各国の王族が代わる代わる楓へと挨拶に向かっているの眺めるウォーレン。


 皆、先程の光景を思い浮かべ、楓を褒めたたえる。


 争うように楓に貢物をし、ぜひ自国へと招待しているが、移動が困難という事で断られるまでがセットになっている。断りを入れるのは、隣に立つルーシャスとカールだったが、誰も文句は言わず大人しく引き下がっていた。


 そしてその流れでウォーレンの所にもやって来る。


「エクトリア王、聖女召喚おめでとうございます。それにしても此度の聖女様は誠に素晴らしい! まさに有史以来の快挙を成し遂げましたな!!」

「有難うございます。まさかエルフ王や竜王どころか、ゼフィーナ神様にまで御目見出来るとは思いませんでした」

(まさ)しく! 大聖女様と申し上げても過言ではありませんな!」

「そのようですね」


 同じく王と共にやって来た王妃がエリザベスにも声をかける。


「エリザベス様! そちらにお持ちのお人形は聖女様ですよね?」

「はい、式典限定販売のアリス様です!」


 以前に楓が提案していた式典用の人形の見本は、エリザベスに贈られていた。贈られたエリザベスは、嬉々としてその子を連れて夜会に参会していたのだった。

 それを見た各国の王妃はこぞって欲しがった。

 唯でさえゼフィーナ神から祝福を受けた聖女だなのだ。それでなくとも自在に動くアリス人形に心奪われた王妃達は、もれなく予約する事となる。


 そしてもっと楓とお話ししてみたいと、エリザベスに懇願するのだった。



 

 それを横目に見ていたウォーレンは、心の中で溜息を吐いた。


 


 もはや誰もが楓を大聖女と呼ぶ。


 当然だ。

 今まで誰も拝見した事のないゼフィーナ神様が姿を見せ、加えて祝福まで授けた。のみならず、エルフ王や竜王までもが気に入っているのだ。

 もはや楓は人族の頂点に立っていると言っても過言ではないだろう。


 


 なのに…………自分は何をしていた?


 

 アレと蔑み、ろくに気にも留めず、疎かにしてきた。


 エリザベスが気に入って構っているのは知っていたが、どうでも良かった。

 寧ろ各国の王族がアレを目的に大勢集まるのが、面倒だとすら思っていた。


 アレが攫われ、犯人がアグノスだと分かった時には肝を冷やした。

 

 聖女が攫われるなどとは国の失態に他ならない。

 ましてやその犯人が王子などと、他国に知られようものなら一斉に批判されるであろう。批判どころか糾弾され責任を問われてもおかしくない。

 

 謝罪はしたが、聖女が一言誰かに漏らせば、それで終わりだ。


 聖女を止める資格など、とっくに無かった。

 聖女が移住したいと言えば、唯々諾々と従うしかないだろう。



 だが、そんな事にはならないだろうとも分かっていた。


 思い返せば、聖女がこちらに文句を言ったことなどなかった。

 かかる費用も微々たるものだった。

 アグノスの件での詫びも、何も希望してこなかった。


 それどころか我々の謝罪を受け入れ、抗議もせず、改善点を提示する。

 次々と新しい聖女ブランドを作り出し、売り上げを伸ばしている。


 そして世界各国にエクトリアという国を知らしめた。

 もはや知らぬものなど居ないであろう。

 

 正に聖女の中の聖女。


 我が国に多大なる貢献をもたらした、偉大なる大聖女。



 そんな大聖女を自分は見誤り……みすみす手放したのだ。



「俺は愚か者だったのだな……」


 誇らしげに楓の側に立つルーシャスを見ながら、ウォーレンは独りごちた。




◇◇◇



 

 あれからエリザベスに楓に対しての態度を後悔していると告げた所、今更ですか!と叱られた。


 自分の楓に対する態度を見て、クロードまでが失礼な態度をとっていると初めて知った。

 事細かに日時まで指定されて、報告されれば疑う余地もない。


 クロードを呼び出し、問い正す。


「お呼びですか、陛下」

「クロードよ。お前は聖女様をハズレだと称しているそうだな」

「そっ! ……それは、その…………はい、その通りだと思ったので」

「……今でもそう思っておるのか?」

「勿論です! だってアレはち……」

「愚か者!! お前は式典で何を見ておった? かの聖女様の偉業を、その目でしかと見たのではないのか?」

「……」

「余の聖女様に対する態度が悪かったのは認める。だがかの聖女様はそれに対しても何ら文句も言わず、此度の事を成し遂げた。余は反省した。自分の過ちに気付き、改めるのも大事な事だ。お前はどうなのだ?」

「……申し訳ございません」

「その謝罪は、何に対する謝罪だ?」

「私の……聖女様に対する態度がなっていなかったと……」

「では、それは誰にすべき謝罪か?」

「……聖女様です」

「しかと心得たのか?」

「はい。大変申し訳ございませんでした」

「聖女様が 王宮(ここ)を去られる前に、必ず告げるように」

「畏まりました」



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