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48/60

48.嵐のようでした


 光の裾が見えなくなった頃、遠くにいる一般の人達から「ワアァァァー」と歓声が上がった。

 

 分かる。

 うん、私もアレを見たらそうなる。


 が、これはフィー様の演出にしか過ぎない。

 面倒な事になる前に、とっとと先に進もう。


 私はお偉いさん達の視線に耐えられなくなり、くるりと向き直る。


 フィー様は私の好きな時に、大きくなったり小さくなったり出来るようにしてくれたハズ。どうすればいいのか分からないけど。


 取り敢えず目を瞑り、小さくなーれ〜小さくなーれ〜と念じてみる。


 すると額がほんのり熱くなって、さっきと同じ様に身体が熱くなった。

 「オォ!」と聞こえて、目を開けるといつもの目線の高さ。

 

 ホッとして、お髭の豊かな枢機卿を見た。


 その視線に気付いた枢機卿は「コホン」と咳払いをして、みんなの注目を集めた。


「では引き続きまして、聖女様の婚姻の儀に進みたいと思います。ルーシャス・ランドール侯爵、これへ!」


 裾から現れたルーシャス様は、婚姻の正式な衣装である白いローブの上に豪華な金糸の刺繍が施されたマントを着ているが、私と合わせてそこに青色の刺繍も足されている。私の衣装は青がメインの刺繍でそこに銀糸が足されている感じ。もしかしたらこの青はフィー様の目の色から来たものかもしれないなと、今更ながら思った。



 衣装を着たルーシャス様のその姿は、惚れ惚れするような美しさ。


 フィー様には悪いけど、私にはルーシャス様の方が神様っぽく見えます。

 美的で言えば、エルフ王の方が一般的に美しいのだろうけど、やっぱりルーシャス様の方が素敵。


 こんな一般人だった私が、ルーシャス様のような神がかり的に美しい人と結婚するなんて、人生何があるか分からないものだわ〜と感慨深く見つめていると、後ろの方から「チッ」と舌打ちされた。


 むむ? 誰よ!

 私とルーシャス様の結婚に不満でもあるの!?


 そう思ってキッと振り向いてみると、なんと竜王が不機嫌な顔をしていた。


 おぅ……竜王様でしたか。


 でも!

 何か文句でも!?


 そう思って見ていると、私の視線に気付き目が合った竜王様は意外そうな顔をして、ふっと鼻で笑われました。


 ……何でしょう?


 そうこうしている間にルーシャス様が側まで来て、婚姻の儀が始まった。

 お髭の枢機卿がフィー様に取り次ぎし、私達でそれぞれ宣誓する。


 するとディアナさん達と同じく、スポットライトのように光が降りてきた。遠くの方から歓声が上がっている様子から、みんなにも見えてるみたい。


 フィー様……演出過多ですぅ。


 遠い目になりながらもなんとか書類にサインした。これで正式にルーシャス様と結婚した事になる。


 やったーっ!

 これでずっとルーシャス様と一緒にいられる。

 

 嬉しくなって見上げると、ルーシャス様も嬉しそうに私を見つめてくれていた。

 そしてせがむまでもなく、流れるように抱っこしてくれた。


 その温かな腕の中の安心感と、心地よさと、愛おしさに、ぺたりとくっつき酔いしれる。


 しばらくするとパラパラと拍手が聞こえたかと思うと、それは一気の大きくなり神殿を埋めつくした。そのまま外へと広がり、大きな歓声となって返ってきた。


 ルーシャス様が振り返り、感謝の意を込めて軽く腰を落とした。

 

 

 すると竜王様とそのお付きの人が立ち上がり、こちらへと近付いてきた。



 近くで見て初めて気付いたけど……デッカい。

 ルーシャス様より二回り以上背が高くて、威圧感半端ないです。


 竜王様は私をじっと見た後、お腹に響くような低い良い声で静かに仰った。


「異世界人よ。此度の功績、褒めて遣わす」


 何だろ?

 フィー様がみんなの前に現れた事かな?


 私はルーシャス様に抱っこされながら、少し頭を下げながら答えた。


「有難き幸せ」

「……それにしても、すでに番が決まっておったとは。意に添わぬ様なら攫おうかと思っておったが、そうでもなさそうだな」


 ルーシャス様の私を抱く腕に力が入った。


「…………はい。私はルーシャス様を愛しておりますので、ご心配は無用でございます」

「そうか……まあ、良い。今の我は機嫌が良いからな。では、達者で暮らせ!」


 そう言うが早いか、バサリとマントを翻して広場まで行き、やって来た時と同じくドラゴンに変化したお付きの人に乗り、あっという間に見えなくなった。


 呆気に取られて見ていると、エルフ王も立ち上がり側にやって来た。

 同じように私をじっと見ている。

 

 はぁ〜。

 近くで見ると美しさに目が痛い。

 私の瞳はエルフを見るレベルまで達してないようです。


 エルフ王は高くそれでいて聞き良い、透き通るような声で仰った。


「異世界の人の子よ、感謝します。まさかと思っていましたが、今日は来て良かった」

「いえ、私の方こそお会い出来て光栄です」

「それにしても、儚いものはどうしてこんなに美しいのでしょうね。……貴女はそれで良いのですか?」


 ……何やら色々バレてそう。怖っ。


「……はい。これは私が望んだ事ですので」

「そうですか。その儚さを我が下で愛でてみたいものですが……」


 ちょっとーっ!!

 箔どころか、死亡フラグが立ってるんですけどーっ!?


 竜の国もエルフの国も私の住み良い環境な訳がない。

 行った途端に死ぬ未来しか見えません!


 これは丁重にお断りせねば!!



「エルフ王におかれましては、私など一夜限りの花のようなもの。……どうか捨て置きくださいますよう、お願いいたします」

「そこがまた良いのですが……まあ良いでしょう。貴女の事は覚えておきます」

「……有難き幸せ」


 クスリと笑われて、さらに流し目されましたが、フワリと優雅に向き直り広場から転移魔法で帰って行かれました。



「嵐のようでしたね……」

「……そうですね。驚きました」


 嵐の去った広場をルーシャス様と見ていましたが、ようやくひと段落ついたのだと二人で顔を見合わせて、ホッとしました。




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