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44.本物に会いました



 ────怪しい。


 ……めちゃくちゃ怪しい。



 何故ならその扉は、窓側、つまり城壁側にあるのだ。

 さっき迄はただの壁だった所に、ご丁寧に私サイズの扉が、なんとも自然に設置されている。


 見たまんまなら、開けたら外で、地面へと真っ逆さまに落ちるだろう。


 さらに、なんと、その怪しい扉は光っているのだ。

 キラッキラに。


 怪しさ倍増、さらに倍!ってカンジ。


 


 な〜んて言ってみたが、その光には覚えがある。

 

 ディアナさんとカールさんが宣誓した時に見えた光と同じであると、何となく分かった。


 つまりはそう言う事だろう。



 

 私は眩しさに目を細めながら、恐る恐る扉を開けた。




 中は光っていなかったが、真っ白な空間が広がっていた。

 

 外ではなかったことにホッとしたが、扉に捕まり足をそ〜っと伸ばして、タシタシと床があるかどうかを確認した私は間違っていないハズ。


 ちゃんと床らしきものがあったので、中に入ってみる。


 キョロキョロと周りを見ても、どこも真っ白。

 

 どうしたものやら……と思っていると、キィィィィィと言う音と共に目の前に光が集まってきた。

 

 カッ!! と光が弾けて、一瞬視界が真っ白になった後、そこには十二歳くらいの少年が立っていた。いや、正確には浮いていた。


 その少年は周りと同じく真っ白で、ふわりと靡く白い髪、白い肌、白い服を着ていた。お顔は黄金比を形にすれば、こう! という位整っていた。さらに言うなら全ての輪郭から光が漏れているので、白というより、金や、銀のようにも見えた。

 閉じられていた瞳がゆっくりと開くと真っ青で、煌めくその瞳は何故だか地球を連想させた。


 その瞳を見ていると、無性に地球が恋しくなり……気付けば、ホロリと涙が頰を伝っていた。


 慌てて涙を拭い、こちらの世界で習った神様に敬意を示す礼をとる。

 両手をクロスして胸に当て、片膝を立てて首を垂れる。


『初めまして、カエデ。そんな畏まらなくていいよ? 普通にして?』


 聞こえた声は、男とも女とも取れる不思議な声で、頭に響くように聞こえた。

 そっと頭を上げて「ゼフィーナ神様でいらっしゃいますか?」と尋ねると、『そうだよ』と答えてくれた。そしてにっこり笑って『僕の事はフィーって呼んで?』と宣った。


 と言われても、神様を愛称呼び……無理でしょ!


「では、フィー様で」


 そう言うと、渋々了承してくれた。


『今日はカエデの好きなものを用意したんだ。僕のお茶会へようこそ!』


 フィー様がサッと手を振ると、目の前にパッとお茶会セットが現れた。

 私サイズのテーブルの上には、大福、お萩、最中、カステラ、葛餅、羊羹、饅頭、煎餅、といった和菓子が所狭しと並んでいた。


 わぁ〜! 和菓子だぁ!!!


 洋菓子も好きだが、和菓子も好きなのだ。

 こちらに来てからは勿論食べれなかったので、懐かしくも嬉しい。


 スチャッと座った私をクスクス眺めながら、フィー様自ら緑茶を入れてくれた。


『さ、遠慮なくどうぞ。と言っても、本物じゃないけどね』

「え!?」


 まさかこんなに美味しそうなのに、偽物なの?


『あ、えっと……うーん、なんて言ったら良いかな。これらは僕が知らないものだから味が分かんないんだよね。だからカエデの記憶を再現してるだけ。味はするけど、お腹に貯まる訳じゃないよ』


 何ですとっ!?

 て事は、いくら食べても太らないって事じゃないですかっ!!

 素晴らしい!


「じゃあ、いっぱい食べても良いんですね?」

『勿論だよ。全部食べて』

「折角なのでフィー様も食べてみてくださいよ?」

『え?』

「あ、でも……フィー様には味がしないんですか?」

『いや、ここならそんな事はないよ。でも……良いの?』

「? 勿論です。一緒に食べましょうよ」


 そう言うとフィー様は『有難う!』と嬉しそうに笑った。


 それから二人で和菓子談義に花を咲かせながら、和菓子を食べまくった。

 言われた通り、どれだけ食べてもお腹が膨れない。懐かしい味だけを堪能出来る。なんて素晴らしい!

 お話からすると、ここじゃないと出せないみたいだし、二度と食べる事が出来ないと思い、ゆっくり味わって食べた。


 フィー様はお萩がお気に召したようで『この餡の甘過ぎないほんのりとした甘味が美味しい』と言っていた。どうやら餡子が好きみたい。私と同じ。ふふ。


「餡子は小豆から作りますが、こちらの世界にはありますか?」

『いや、小豆はないな。……似ているものはセレアル、だろうか?』

「セレアル? この国にもありますか?」

『栽培はしていないな』

「じゃあ、王様に聞いてみますね」

『作ってくれるのか?』

「同じに出来るかは分かりませんが、やってみます」

『そうか。楽しみにしてるよ!』


 二人でお茶を飲み一息入れた後、改めて背筋を伸ばしてフィー様に頭を下げた。


「ゼフィーナ神様。あの時、死ぬ運命だった私をこの世界に喚んでいただき、本当に有難うございます。感謝しております」

 

 そうお礼を言ったのに、フィー様は悲しげに俯いてしまった。

 何かいけない事でも言ったのだろうかと、不安になっているとポツリと『ごめんね』と聞こえた。

 

 何故謝られるのか分からず、首を傾げる。


『カエデの世界は面白くて、いつも見てたんだ。でもとてもとても遠くにあって……僕には大きさの違いに気付けなかったんだ。そのせいでカエデを大変な目に遭わせちゃって…………ごめん』

「! いいえ、謝らないでください。私はこっちに来て良かったと思ってます。まあ少し大変でしたけど、ルーシャス様にも会えましたし、ディアナさんやカールさん、皆さんが良くしてくれて、私は幸せですよ?」

『……そう? ……そうなら僕も嬉しいよ』

「はい、安心してください。感謝こそすれど、後悔などありませんから」


 そうにっこりと言いきると、ようやく微笑んでくれた。


「それで、今日はどうされたのですか? まさか、私に和菓子ご褒美をくださるために来てくださったのですか?」

『ふふ、ううん。まあ、それもあるけど、今日はカエデの願いを叶えに来たんだ』

「願いですか?」

『うん、迷惑掛けたお詫びにね。勿論対価は必要だけど』


 なる程。等価交換ですね。好きな言葉です。


 そう思いコクリと頷くと、今度は不思議そうにフィー様が首を傾げた。


『……対価、必要なんだよ?』

「? ええ、何かを成す為に相当の対価が必要なのは当たり前なのでは?」


 日本の神様だって、タダで何かしてくれる訳じゃない。祈りだったり、お賽銭だったり、お供えだったり。何かしらのものがあって、初めて願いが聞き入れられる、事もある。……多分。


「寧ろ神様だからこそ、縛りが多そうですけど?」

『……はは、カエデは話が早くて助かるよ。僕が動き過ぎると、折角カエデを喚んで図った調和が崩れかねないからね』


 それは困ります。


「それで……対価とは何でしょうか?」

『うん、通常なら魔力で良いんだけど、カエデには魔力がないからね。代わりに生命力になるかな?』


 まあ、順当なとこかな。

 ……でも、聞いておかねばならない事がある。


「それは……生命力ですか? 寿命ですか?」


『…………』

「…………」


『……それって……違いがある?』

「!! 大アリです!! 何言ってるんですか!?」


 信じられない!大事な事なのにっ!!


『え? え?』

「生命力なら歳をとってしまいます! 寿命なら歳を取る前にぽっくりいけるじゃないですか!」


 そうなのだ。

 ここに来て未だに、歳をとった自分をルーシャス様に見せたくないという願いが諦めきれないのだ。


『…………じ、寿命だよ』


 何やらフィー様がビクビクしてるような気がするけど、きっと気のせい。


 にっこり笑って「なら、問題ありません」と答えておく。


 そんな私を見たフィー様は、コホンと咳払いをして居住まいを正し、改めて私に尋ねた。


『それで……カエデの願いは何?』



「はい! 私を大きくしてください!!」





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