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42.欲深いですよ?


「カエデは何か希望はないのかい?」

「そうですね……特にないですかね」

「そうなのですか? 今なら爵位も領地も思いのままですよ?」

「でも、そんなもの貰っても私じゃ使い道がないですよ?」

「うーん……」


 それから三人で話し合ったが、良いアイディアは浮かばなかった。

 

「それでは保留にしておいて、何かあった時に陛下にお願いしましょう」

「そうだな。……それにしてもカエデは無欲だな」

「そんな事ないですよ。私はこう見えて欲深いですから!」

「そうかい?とてもそうは見えないよ」


「…………願いはあります。ただ……叶えられそうにないだけで」

「ん? 何か言った?」

「いいえ、何でもないです」


 しばらくするとディアナさんがやってきた。


「アリス様。王妃殿下がお会いしたいと仰ってますが、如何なさいますか?」

「え? エリザベス様が? え、ええ……勿論良いですよ。今からお伺いすれば良いですか?」

「いえ、こちらにいらっしゃるそうです。では伝えてきますね」


 さっきお会いしたばかりなのに、どうしたのだろう?


 ディアナさんが伝えると直ぐに、エリザベス様が護衛と共にやって来た。


「アリス様、お会いしていただき有難うございます。あの……二人だけでお話ししたいのですが……宜しいでしょうか?」


 ルーシャス様やディアナさんを見ると、頷いてくれたので了承する。

 二人分の紅茶を用意してくれて、私たち以外は全員外に出てくれた。


 この頃には私の椅子も改良されていて、テーブルに合わせた高さの長いベンチみたいな形になっていた。横に階段がついていて登り降り可能。しかも足がブラブラするのが少し怖いなと思っていたら、何と!足場までついたのだ。素晴らしい!

 ただ、座面に登ってから座るので、スカートではちょっとはしたない感じになる。が、私は普段はパンツスタイルか、チュニックにスパッツを穿いているので問題ない。

 これのおかげで、私は自分で椅子に座れるし、テーブルにも乗れるのだ。




 エリザベス様と向かい合わせで座り、紅茶を飲む。

 でもエリザベス様は目線を下げたまま動かない。


「どうかされたのですか?」


 しばらく待ってみると、意を決したように顔を上げて、ガバリと頭を下げ「申し訳ございませんでした!」と謝ってきた。

 頭を下げ過ぎて、もう机につきそう。


「え? ……先ほども謝っていただきましたし、もう良いですよ?」


 そう言ってもエリザベス様は頭を上げてくれない。


「いえ! アグノスを甘やかした我々の責任です! 本当に……申し訳ありません。あんな事になるなんて……私……」


 エリザベス様が私を好んでいる事は、めちゃくちゃ分かってる。

 普段は冷静沈着でキツめの印象を与えるエリザベス様だけど、私の前ではコロコロと表情を変えて嬉しそうになさっているからだ。

 なのに、自分の子供が私に危害を加えたのが、悔やまれるのだろう。


 私は、よいせと立ち上がり机の上に登る。

 トコトコとエリザベス様の近くまで行き、よしよしと頭を撫でる。


「別に怒っていませんよ? 泣かないでください」


 頭を下げたまま、ゆっくりと私の方を見たエリザベス様の綺麗な金色の瞳から、ぽろぽろと涙が溢れる。


「アリス様……」


 起き上がってくれたが、涙は止まらない。


 綺麗な雨が降ってくる。


 

 両手を上にあげれば、エリザベス様はそっと抱き上げてくれた。

 そのままぎゅうと抱き締められ「アリス様……ごめんなさい」とさらに泣かれてしまった。

 落ち着くのを待ってから、エリザベス様にお願いしてみた。


「そうですね……次のお茶会のスイーツはフルーツたっぷりのタルトが良いです」


 それを聞いたエリザベス様はようやく私を離してくれ、お顔の前まで持ち上げてくれた。


「お茶会……来ていただけるのですか?」

「勿論ですよ。美味しいタルト、アンジェリカ様とも食べたいです」

「…………有難うございます。一番美味しいタルトをご用意いたしますわ」

「楽しみにしてます!」



 それから話を聞いたが、アグノス殿下は末っ子ということもあって国王が気に入り甘やかして、エリザベス様が苦言を呈しても聞き入れてもらえなかったらしい。


 でも今回の事でテイムした魔獣は一旦全部放ち、改めてテイマーの勉強が済むまでテイム禁止になった。

 それに加えて勉強も今までよりも厳しくし、改めて王族としての心構えを身に付けさせる事になったそうだ。


 うんうん。

 私が人間だって教えておいてね。


 そう言うと、エリザベス様は「もう教え込ませましたよ」と苦笑いされた。




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