38.ここどこ?
眠りからゆっくりと覚めたが、まだ寝ていたいなぁと寝返りをして、ふと気付いた。
ん〜?
何だかいつもと肌触りが違う。
重たい瞼を無理やり開けてシパシパしながら見てみると、見た事のない布団だった。
ハッと一気に意識が覚醒し、ガバリと起き上がって周りを見てみると……知らない部屋だった。
周りは木の壁で一面だけが大きな鏡の部屋だった。
部屋といったが天井はなく、8畳くらいの広さのそのはるか上の方に天井があった。
私は囲いに入れられている形だろうか?
私が寝ている場所はベッドだと思っていたが、よく見るとクッションみたいな物の上に寝かされていただけだった。
側には箱が二つ。大きな箱と、小さな箱。
サイズから見て机と椅子として使えって事かな?
改めて部屋を見渡してみると、部屋の隅に私の元の部屋にもあったランプが置いてあった。
そしてその反対の隅にはトイレがあった。それはいつも使っているルーシャス様が作ってくれたトイレだった。不思議に思い近付き扉を開けて中を確認してみたが、やっぱりいつものトイレだった。
どういう事?
トイレだけ持ってきてくれたのだろうか?
それにしても……私は一体なぜここに居るの?
確かディアナさんのパーティが終わって自室に戻り、疲れてすぐに寝ちゃった……ハズ。
そして気付いたら、ここに居た。
うーん……状況を見るに誘拐されたって事かな?
部屋にそれ以外の物もなく、壁は3mくらいあり、扉はない。
うん、出れないね。
早々に諦めた私はゴロンとベッドに横になり、何らかのアクションがあるのを待った。
◇◇◇
「たぁーいーーくぅーーつぅーーー!」
ベッドにうつ伏せに転がり、足をバタバタさせながら大声で叫んでも、応えるものは何もない。
あれからどれだけ待っても、誰も来ず、食事が天井から入れられる日々。食事はパンやフルーツが、どーんと一個丸ごと出てくる感じ。
ご飯を入れてくれるのは、猿っぽい生き物だった。最初はビビったが、食事を入れ、食器を片付ける以外は何もしないので、そのうち慣れた。
が、当然意思疎通が出来る訳もなく。
その他としては、
夜になると天井に蓋が閉められ暗くなり、朝になると開けられる。
一日一回浄化魔法がかけられる。
くらいしかなかった。
しかもその時間はどうやら地球時間の24時間周期で行われているようで、私は久しぶりに無理せず生活出来た。
でも何もする事がなくて、辛い。
本当になーんにも無い。
本もないし、誰も居ないし、部屋からは出られないし。お風呂もない。
最初にどれくらい寝ていたのか分からないが、意識が戻ってから4回夜が来た。つまり2日以上はここに居ると思う。
はぁ。
みんな、心配してるだろうな。
一人でいると鬱々としてくる。
まあ、拐われていかがわしい事をされる訳でもないし、最悪の状況ではないけれど。
まさに飼われている状況にうんざりする。
「まるで、熱帯魚みたい……」
飼っていても、触れる訳でもなく、おそらく見ているだけ。
水槽の中で泳ぐ魚達のように、鑑賞されているのだろうか。
魚達はあの狭い世界で、何を考えていたのだろう?
そして私は何をすれば良い?
退屈すぎて気が滅入る。
「猫でもいれば……退屈しないのになぁ……」
◇◇◇
私が以前に呟いた言葉は聞かれていたのだろうか。
あれから夜が一回来た後、お猿さんが食事の後に猫を部屋に入れてくれた。
以前に見た緑の猫。しかも仔猫。
おそらく3ヶ月過ぎたくらいの可愛い盛りの仔猫。
普通なら大喜びして、小躍りする所だが、いかんせんデカいのだ。
仔猫だが、私にとっては成犬並のサイズ。
そして……仔猫なのだ。
好奇心が旺盛で、爪は生えたばかりで鋭く、噛む力に遠慮がない。
仔猫であれば可愛いものだが、このサイズだとヤバイ。
もし地球の猫と同じであれば、下手に動くと危ない気がする。
目の前の仔猫は初めての場所に戸惑っている。
ヤバイとは思うけど、可愛いのだ。
さ、触りたい。
とりあえず様子を見る。
仔猫も私に気付き、くりっとした目でこちらを見た。
か! 可愛いぃーーっ!!
私が久しぶりのもふもふに悶えていると、仔猫は油断しまくっている私に向かって飛びかかってきた。
仔猫とは思えない力で押し倒され、鋭い爪が私に突き刺さる。
重さと痛みで動けない私は、噛まれ、舐められ、転がされ。
何が何だか分からなくなり…………意識が遠のいていった。




