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37.結婚式


 今日はディアナさんとカールさんの結婚式の日。


 この国での一般的な結婚式とは、神殿でゼフィーナ神に婚姻を誓い、書類にサインをする事。

 それは基本的に本人達で行えば良いらしく、高位貴族であれば親族が伴う事もあるが滅多にないそうだ。

 その代わり、その後にお披露目会がある。日本で言えば披露宴みたいなもの。婚家でパーティが行われる。それはガーデンパーティーで会ったり、夜会であったり。一般人の場合はお家に招いてパーティをしたり、会場を借りて行ったりするそうだ。


 ディアナさんとカールさんは以前書類にサインだけして、届け出を出したそうだ。カールさんは神官なのにそれで良いのかと思ったけど、神官だからこそ出来た事らしい。

 でも私が結婚式を見てみたいと言ったばかりに、ディアナさんとカールさんは改めて結婚式を行ってくれる事になった。勿論その後のパーティにも招かれている。


 ディアナさんもカールさんも貴族ではあるが、爵位を継ぐ訳ではないので結婚したら一般人になる。でもカールさんは聖女担当なので、役職的には高い地位に当たる。ただパーティをカールさんの家でする訳にもいかず、さらに私が参加する為、会場は王城の小さな会場を借りることになった。警備も考慮に入れての事だった。

 

 警備警備というが、それ程警戒する必要があるのかと疑問に思い、以前聞いてみた事がある。


 その答えは他国への体裁が主だった。

 式典までは王家が聖女を守り、この世界の事を教育するのが義務なんだそうだ。


 つまり、ちゃんと守っていますよーという体をとっている事が重要らしい。





 そしてやって来ました! 神殿へ。


 ここは私が喚ばれた所で、エクトリア国中の神殿を治める大神殿なんだって。 


 来た時には気付かなかったが、私の心の折れた広大な階段の先に祈りを捧げる祭壇があった。そこに偶像はなく、太陽を象った台座がおかれ、天井からは光が差し込んでいる。地球における春分と秋分には、まさにその台座から後光がさすが如く、光り輝くように設計されているそうだ。


 この世界の神様ゼフィーナ神は、地球と違い世界各国で存在を確認されている。ただ神託の形で声は聞こえても、その御姿を見たものは誰も居ないため偶像を作る事が出来ないらしい。

 

 それでも厳かな雰囲気の神殿は、そこかしこが光り輝いて見える気がする。


 今回の結婚式はほぼ私の為に行われている為、祭壇の前に設置されている椅子には私とルーシャス様と後ろの方に護衛の方々が居るだけだった。


 しばらく待っていると、結婚式の正式な衣装を身に纏ったディアナさんとカールさんが入ってきた。

 二人とも白いローブを着て男性は金糸の、女性は銀糸の豪華な刺繍が施されているマントみたいなものを肩から掛けるのが正式な衣装なんだって。そのマントは貸し出しもしていて、一般人はそれを借りて結婚式を行うそうだ。


 祭壇の前には神官さんが居て、ゼフィーナ神に取次をする役目を行う。


「此度カール・ノートクリストとディアナ・ストレイスは婚姻を結ぶ事と相成りました。どうかこの者達の宣誓をお聞き届けください」


 そして神官さんが脇に下がり、二人が祭壇の前に進む。


「わたくしカール・ノートクリストはディアナ・ストレイスを愛しみ、死が二人を別つまで、生涯を共にする事を誓います」

「私ディアナ・ストレイスはカール・ノートクリストを支え、愛しみ、生涯を共に過ごす事を誓います」


 その瞬間、パアァとスポットライトの様に上から光が降りてきて、キラキラと二人を輝かせた。


 昼間で明るいのに、さらに光って見える為、とても不思議で美しい光景だった。


「綺麗……」


 思わず呟き、どんな仕掛けになっているのかと上を見ると、何もなかった。

 ただの天井から二人に光が当たっているように見えた。

 不思議に思って首を捻っていると、ルーシャス様がこちらを向いた。


「カエデ、どうかしたの?」

「ええ、あの光ってどこから光らせてるんですか?」

「光って?」

「え?」


 二人で顔を見合わせていると、目の端でその光がスゥッと消えていくのが見えた。


 式は進み、本来ならここで書類を書くのだが、二人は先に提出している為省略された。そして神官の宣言で終了した。


「お二人の宣誓は聞き届けられました。お二人にゼフィーナ神の御加護があらん事を」




 

 そのまま二人はこちらの方にやって来た。


「如何でしたか? アリス様」

「はい! とっても綺麗でした!」

「まあ! 嬉しいです」

「お二人ともキラキラ輝いていて、神秘的でしたよ!」

「キラキラ輝く?」

「ええ、宣誓した瞬間に光がパァって降りてきて、光ってました!」

「……もう少し詳しく教えてもらっても?」


 なぜか迫力あるカールさんに問い詰められるままに答えると、どうやらあの光は私以外には見えてなかったらしい。

 

 他の神官の人も交えて検証した所、あの光は聖女のみが見えるものじゃないかという結果になった。

 宣誓は形式的なもので、実際に聞き届けられているとは誰も思っていなかったそうだ。


 それを聞いた神官さんは「大至急、世界各国に伝達せねば!」と慌てて去っていった。

 ディアナさんとカールさんは「良かったですね、結婚式しておいて」と呑気に言っていた。


 私はと言えば、この世界に来て初めて聖女として認められたようで、とても嬉しかった。







 休憩(お昼寝)を挟んで、午後からはパーティに参加した。


 ディアナさんやカールさんの家族とも初めてお会いして、ご挨拶させていただいた。

 カールさんは神官さん達を、ディアナさんは侍女さん達を呼んでいて、賑やかなパーティだった。


 夜会とは違い、軽快な音楽が流れ、みんな楽しげに笑っている。

 幸せな空間、幸せな時間。

 何だか温かいぬるま湯に浸かっているような気分。


 心から楽しいと思えた時間だった。





 

 部屋に戻り、お風呂に入れてもらった。ディアナさんにはしばらくお休みをとってもらったので、今日は違う侍女さん。さすがに疲れたので、そのまますぐに眠りについた。


 ふわふわとして、優しい夢を見たような気がした。








 

 そして目覚めた私は──





 見知らぬベッドに寝ていた事に気が付いた。





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