34.それはもはやガーデンパーティーですよね
今日はエリザベス様とアンジェリカ様とのお茶会。
お二人には定期的にお茶会に招かれている。お部屋だったり、中庭だったり。お一人だったりもする。今日はお二人揃って、王族専用のお庭でのお茶会。そんな所に入って良いのかと聞いたけど、私なら問題ないんだって。流石聖女の肩書はすごいね。
「それで令嬢達を招いてのお茶会なのですが、何分人数が多いので何回かに分けて行いたいと思うのですが……アリス様は大丈夫ですか?」
「……そんなに沢山の方々が?」
「はい。ほぼ令嬢全員ですね。ただ 王宮に呼べるのは伯爵家までですので、公爵家と侯爵家で一回、伯爵家で一回行う予定です。子爵家となりますと流石に入り切らないので、こちらは夜会を開こうかと思っております。如何でしょうか?」
「あの……私は何をすれば?」
「みんなアリス様に一目お会いしたいだけですわ! お姿を見せていただけるだけで満足すると思います」
「そうなのですか?」
話を聞いてみると、お茶会は各テーブル毎に挨拶する程度だし、夜会では壇上で顔見せでOKらしい。まあ、それならそんなに疲れないだろうし、大丈夫かな。
「分かりました。ではそれでお願いします。あ! でも……」
「何かございますか?」
「あの……お二方以外に触れられるのは、ちょっと……」
イヤかも。
こちらに来てから、毎日誰かしらに触れられたり抱っこされたりしていたら、何となく分かっちゃったのだ。私に対する、接し方の違いを。
それはディアナさんが本当に私を大切に、宝物のように扱ってくれるから分かったようなもの。
あ、もちろんルーシャス様は別ね。女性限定で。
ディアナさんがトップ。ついでエリザベス様、アンジェリカ様と続く。
侍女さん達も段々慣れてきたから今では大丈夫だけど、流石に初対面の人にいきなり触れられたりしたら恐怖でしかない。
私も大分慣れたけど、彼女達はデカいのだ。どれほど相手が好意を持っていたとしても、囲まれれば恐ろしい。危害を加えるつもりなどないと分かっていても、本能的に恐怖を感じてしまうのは仕方ないと思うんだー。
そう思って言ってみたんだけど、ダメかな? と思ってお二人の様子を見ると、ウルウルと瞳を潤ませ私を見ていた。
「……やっぱり失礼でしょうか?」
「いいえ! そのような事はございませんわ! あの……そのように言っていただいて、嬉しかったのでございます。もちろん何人たりとも触れさせませんので、ご安心ください!!」
「そうですわ! 私達が必ずお守りいたします!」
「そ、そうですか。……よろしくお願いします」
お二人の勢いが凄いけど、有難いのでお願いしておく。
それからしばらくお茶とお菓子を堪能していると「母上! 姉上!」と声がした。振り向いてみると猫っぽい魔獣を連れたアグノス殿下と護衛の方々だった。
「あら? アグノス、どうしたのですか?」
「はい。こちらに母上と姉上がいらっしゃるときいて、おさんぽにきました! あ! セイジョサマも!」
そう言ってこっちをキラキラした瞳で見つめる殿下。くりんくりんの金髪に緑の瞳の五歳の殿下は、まさに天使のよう!
天使の隣には殿下の瞳と同じような綺麗な緑色の毛並みの猫がいた。猫と言っても地球と違って、ここの生物には魔力があるため魔獣と呼ばれている。魔力のないものは動物と呼ばれるらしいが、滅多に居ないそうだ。けど見た目は猫とさほど変わらない。が、大きさは全く違う。殿下で3mくらいかな?その殿下の腰くらいまである。つまり私とほぼ変わらないサイズだ。
うっきゃーっ!!
等身大の猫!!
さ、触りたいっ!もふりたいよー!!
心の中では大騒ぎだが、流石にそれを出さないくらいの分別はある。にっこりと微笑んで挨拶をする。
「こんにちは、アグノス殿下。どうぞ私の事はアリスと呼んでください」
「アリス?」
「はい」
こてんと首を傾げて尋ねる殿下に心を鷲掴みされながら答えると、殿下はパァァと顔を輝かせた。そして近寄ってきて、両手を広げた。ちなみに私はエリザベス様のお膝の上だ。
「アリス、こっちにおいで」
……うーん、殿下といえども五歳の子供。子供に触れられるのは怖い。
そう躊躇っていると、エリザベス様が諫めてくれた。
「アグノス! 失礼ですよ。アリス様を呼び捨てなどど! それに勝手に触れる事は許しません。お前にはまだ早過ぎます!」
叱られたにも関わらず、じっと私を見つめ、私が動かないと分かると不思議そうに見てきた。それからようやくエリザベス様を見てしょんぼりし、たたっと走り去ってしまった。
「申し訳ございません、アリス様。後でよく叱っておきます」
「いえ、まだ殿下も小さいのですからお気になさらず。それにしてもあの猫は大人しかったですね?」
「ああ、あの子はテイマーなのです。ですのであの猫もテイムしてるのでしょう」
「そうなの! あの子は魔獣好きで、色んな魔獣を飼っているのよ。お父様のあの子に甘いから、叱らないし。あの子の宮には魔獣が溢れかえってるわ」
「そんなに沢山の魔獣をテイム出来るなんて、凄いですね」
「テイマーは珍しいから、陛下も可愛がっているのよ。末っ子だから好きにさせてるみたいね」
へぇ〜。
テイムしてるなら、ちょっと触っても大丈夫かな?
機会があったらお願いしてみたいな。
それから今度の夜会の衣装をどうしようかとか話しながら、のんびりとしたお茶会は終わった。




