32.疲れました
基礎知識として、この国には公爵家が5家、侯爵家が10、伯爵家が25、子爵家が約50、男爵家がおよそ100。騎士爵は覚えていない。
およそとか言っちゃってる時点で覚えてないのが丸わかりだが、もう諦めた。
今回は当主とその妻のみの招待なので、それほど若い人達は居ない。
が、その分確実に奥様を伴っている。騎士爵は例外で本人のみの参加だけど。
公爵、侯爵家はそれぞれ少し会話をした。伯爵家は自己紹介と挨拶のみ。子爵からは流れ作業のように、入れ替わり立ち替わりになった。
そうは言っても向こうはドレスを着てるご婦人を伴っているため、それほど素早い動きでもない。ましてや王様の前でそんな動作もおかしいのだろう。
つまり、何が言いたいかと言うと……それぞれが短時間でも数が多ければ長いのだ。男爵家が終わる頃には二時間くらい経っていた。それは私にとっては実質6時間で、体感時間は短いが疲労は蓄積されていく。
一旦休憩、とか言いたかったけど、みんな王様に挨拶して、その流れでこっちに来るから止めようがない。それに止めてしまったら渋滞が起こりそうだったし、そのまま頑張った。
笑顔が引きつりそうになったのは、仕方ないと思うんだー。
挨拶に答えているからには、当然喉も渇く訳で。
私の横に小さな台が置かれて、そこに飲み物が添えてある。合間を見てちょこちょこ飲んでいるが、飲めば出したくなるのも必然で……。そろそろ限界が来そうだ。
やっと男爵家まで済み、終わりが見えそうだと希望が見えてきた所で、ルーシャス様に目配せして呼び、挨拶が済み次第一旦休憩したいと伝えた。
そして騎士爵の方々はその名の通り騎士の方々で、見てる間にザッと整列し、一斉に跪き声を揃えて「お目にかかれて光栄です!」と言ってくれた。
その景色は壮観で、圧巻だった。
とても感動したが、私の頭の大部分を占めたのは『やったーっ! 一気に終わった!!』だった。ごめんなさい。
ようやく挨拶が終わりルーシャス様に連れられ、一旦下がりディアナさんにトイレに連れていってもらった。
何とか全貴族の前で漏らす、と言う恐ろしい失態から逃れられた私はほっと息をついた。
その後ちょっとお菓子を摘んで、ディアナさんに姿を整えられまた会場に戻った。用意周到なディアナさんに感謝しきりです! お腹空いてたんですぅー!!
会場に戻ると、貴族の方々はそれぞれ歓談していた。
私が戻ったのを確かめた王様が重々しく「皆に発表がある」と宣言した。
「此度、ルーシャス・ランドール侯爵が聖女カエデ・アリスガワ様の後見人となり、婚約者に決定した。半年後の式典では同時に結婚式も行う」
それを聞いた会場内から、一斉に拍手が沸き起こり皆祝福を述べてくれた。
そして音楽が流れ出し、ダンスが始まった。
本来なら私もそこでダンスをする予定だったが、当然出来ないのでのんびりと観客に徹した。他人事だと楽しい。
キラキラと光るシャンデリアの元、くるくると色とりどりのドレスを纏った貴婦人達が踊っている。なんとも幻想的で、まるで映画を見てるようだと思った。全員がデカいのを気にしなければ、の話だが。
しばらくぼんやりと見ていると、ルーシャス様が話しかけてきた。
「カエデ様。挨拶をしたい者もおりますので、少し降りてきてもよろしいでしょうか?」
むむ、こんな目立つ所に一人で残されるのはイヤだ。
「私も一緒に行っても良いですか?」
そう言うと、嬉しそうに顔を綻ばせて「勿論です」と抱っこしてくれた。
舞台(仮)から降りるとすぐに貴婦人達に囲まれた。あっという間の事でルーシャス様も反応が出来なかったようだった。
「聖女様! お会いできて光栄です!! あ、あのっ! 王妃殿下達がお持ちのお人形は聖女様ですよね!?」
どうやらエリザベス様とアンジェリカ様にお願いした広告が、功を奏しているようだった。
ここは是非ともプレゼンしなければ!! と意気込み、次々と商品の説明をした。話を聞いたお婦人方は満足気に離れていかれ、その後でルーシャス様と挨拶に回った。
会場を後にして、部屋に戻る頃には疲労困憊だった。食事もそこそこにお風呂に入れてもらい、早々に寝た。
あまりに疲れたせいか、次の日には熱を出し、しばらく寝込んだ。
そして私の知らない間に、私が夜会に参加する際は一時間が限度と決められていた。
挨拶にかかる時間(目安)
公爵家 5×2分=10分
侯爵家 10×1分30秒=13分
伯爵家 25×1分=25分
子爵家 50×40秒=約33分
男爵家 100×30秒=約50分
10+13+25+33+50=131分=2時間11分
それを地球時間に換算すると
2時間11分×3=6時間33分
こんな感じかな?




