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31.お披露目会


 いよいよやって来ました、お披露目会。

 夜会とはいうが、夕方から開始されるため私は早めにお昼寝をして準備した。

 起きたら即、侍女さん達に囲まれお風呂に入れられ、磨かれ、揉まれ、何やら塗り込まれ、化粧をし、髪をアップにし、ドレスに着替えさせられた。


 その間私はぼーっとしてるだけ。楽チン。

 お風呂も人に入れて貰う事に慣れたし、むしろ抵抗は無駄だと悟った。言う通りにした方が、終わる時間が早い事に気付いたから。



 鏡の前に映る私は、見た事がないくらい綺麗になっていた。化粧って凄いね! 流石王宮の侍女さん達。素晴らしい腕前です。


「めちゃくちゃ綺麗になりましたね! すごいです!」

「いえいえ、アリス様が美しいのです。艶やかなか黒髪、玉のような肌、黒曜石の瞳。あぁ……素晴らしいです!」

「いやいや、何言ってるんですか。皆さんの方が美しいに決まってるじゃないですか。こんな彫りのない顔なんて……」

「そこも良いんじゃないですか!!」


 えーー!? そうなの?

 うーん……美意識の違いなのかな?


 そんな事を考えていたら「ランドール侯爵がお見えになりました」と伝えられた。


 

 うっわーーーーっ!


 いつも美しいけど、今日は特別キラキラしてますね!

 

 黒と見紛うくらいの紺に金糸で太陽の意匠が入れられ、銀髪が映えまくってます。いつもは軽く結ばれているだけの銀髪も、今日は所々編み込まれて、流された後ろ髪がサラサラしてる。


 また、それが似合うんだ。男性なのに。


 

 見惚れていたらスッと近付き、流れるように跪いて私の手をとりうっとりとした顔で言われた。


「なんて美しいのでしょう。この世の全ての美を集めたようです。今宵アリス様の隣に立てることは望外の僥倖です」


 そんな事をこの世界どころか、私の世界の美を集めたような人に言われても……とあわあわしてたら、ディアナさんに「お時間です」と言われた。



 そのままルーシャス様に抱っこされ、夜会会場まで行く。

 私が入る入口は普段は王族の方々が使う所で、今回は特別にルーシャス様も使う事を許された。


 一度下見に行ってみたけど、夜会の会場は運動場よりも広かった。私が立つ位置は、会場よりも一段高くなっていて、舞台の上みたいだった。そこに入り口から階段を降りて行く形だった。

 それを見て、ルーシャス様と一緒に入りたいとお願いした。だって、一人で階段を下りる自信がなかったから。


 

 入り口手前で、二人共ディアナさんの最終チェックを受ける。

 いよいよだと思うと、ヤバイ……ちょっと緊張してきたかも。


「緊張なさっているのですか? 大丈夫ですよ、私が側におります」


 私の心を見越したかのように、声をかけてきてくれるルーシャス様。


 そうよね、一人じゃない。


 ゆっくりと深呼吸して、心を落ち着ける。



 すると会場内から「聖女、カエデ・アリスガワ様のお見えです」と宣言され、扉横に控えていた衛兵さんがゆっくりと扉を開ける。


 眩しさに目を細めながら入場すると、会場一杯に色とりどりドレスを纏った貴婦人を連れた貴族の方々が、割れんばかりの拍手で迎えてくれた。

 

 

 おそらくは4〜500人はいるんじゃないかな? わかんないけど。


 勿論全員巨人。

 圧倒的です。

 熱気と圧が半端ないです。


 今は上から見下ろしているからそうでもないけど、これ……床に立ったら……ぶるる。想像しただけで恐ろしいですね。


 少し震えた私を慰めるかのように、ルーシャス様がそっと背に手をやり、ぽんぽんしてくれた。

 もう一度深呼吸して、ディアナさんに仕込まれた完璧な笑顔を振りまきながら降りていく。


 その美しい所作(主にルーシャス様の)に会場内から溜息が漏れる。


 今までこんなにもの沢山の人に注目された事などなかった。

 最初は緊張したけど、私は切り替えたのです!


 そう!

 ここはプレゼンの場。

 私のブランドを売り込む絶好の機会だと思い直し、ルーシャス様と最高の演出をするのです!



 そう思ってしまえばこちらのもの。

 王様の挨拶の後、紹介されてルーシャス様に台の上に置かれ、挨拶をする。

 この台は私専用に作ってもらった。

 床に下ろされたら見えないもんねー。


 挨拶の後、その台の上に椅子を置いてもらい座る。

 ルーシャス様はその後ろに控えてくれている。

 流石に王族と共に座るのよろしくないとの判断で。


 エリザベス様とアンジェリカ様を見ると、ちゃんと私の人形を持ってきてくれていた。

 お揃いの衣装の人形を抱いているお二人は、なんとも可愛らしい。

 有難いなと思っていると、お二人の隣にお子様が座っているのに気づいた。


「ルーシャス様。あのお方は?」

「ああ、第三王子のアグノス・エクトリア殿下です。五歳になられたので公共の場に出て来られたのだと思います。この国の王族は五歳まで人前に現れることはありませんので」


 へぇ〜。

 よく見ると、淡い金髪がくりんくりんしてて柔らかそう。


 見てるとこっちを向いてバッチリと目が合い、にっこり微笑まれてしまった。

 可愛い王子様にほわっと癒されていると、貴族達の挨拶が始まった。


 王様に挨拶してからこっちにやって来て、私にも挨拶してくれる。

 挨拶は高位貴族から順に行われる。


 はい、勉強して覚えられたのは伯爵くらいまでですぅ。

 それ以上は無理でした!

 だってみんな綺麗で特徴がないんだもん! ムリ!


 そして挨拶してもらって答え合わせしてみても、確率は八割かな?

 

 ……ダメだね、私。


 それでも順次挨拶して、一言を返す。

 この聖女からの一言が大事らしい。

 


 ふー。

 頑張りますよ。

 

 まだまだ居る貴族達に気が遠くなりそうになりながら、挨拶をこなしていく。



 男爵家が終わり、騎士爵になる頃には笑顔で悟りが開けそうになったけど。




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