27.side エクトリア王国
『第十六回当たりにしよう会議』
「──という訳でアリス様のお披露目会限定販売の人形は300体と決まりました」
「はい!」
元気良く一人の侍女が手を上げた。
「何でしょう?」
「我々が買うにはどうしたら良いのでしょうか?」
「その事なのですが予約販売という制度があるそうで、アリス様に詳しく聞いた所、販売前に期日を決めて購入希望者を予め募っておくものだそうです。その予約した者には必ず渡すという確約がつきます。ただし先払いや予約金など、予約して購入しない事を未然に防ぐ必要もあるとの事でした」
「素晴らしい制度ですね!」
「ランドール侯爵とも話し合った結果、我々会員は予約金なしで、一般の方は予約金をもらって受付する事になりました。ただし刻印のナンバーはランダムです。それでも良ければ来月の10日までに、予約票に記入して提出してください。ちなみに一般の締め切りは15日になります。予約票は店頭にも置いてありますし、 王宮ではカール様の所に置いてあります。本日に限っては扉横に置いてありますので、必要な方はお持ち帰りください」
「「「畏まりました」」」
「ただ、アリス様は我々で商売をするおつもりは無いので、本当に欲しい方のみ購入してくださいね」
「「「はい」」」
ガヤガヤと侍女達が「どうする?」「勿論買うわよ!」と話し合いだした。
するとルーシャスが「良いだろうか?」と立ち上がったので、全員が注目する。
「今度のお披露目会で我々の婚約発表も同時に行う予定だ。それで発表次第カエデ様を我が家に連れて行きたいと思うのだが……」
「「「えーーーーっ!!!」」」
ルーシャスは元々王に了承を得るために、先にカールに相談してみた。するとなぜか目を逸らしながら「まずは会議で発表してみてください」と言われたのだ。
理由は分からなかったが、言われた通りに会議で言ったのだが、侍女達全員に猛抗議されたのだった。
曰く、楓のお世話をする日が半年後まで埋まっていると。
まだ担当していない者達から、その権利を奪うなんて酷い! と言われた。
楓の夜の話し相手として一人担当する部門が増えたが、それも当然半年後まで決まっている。
楓と話す事は勿論彼女達にとって嬉しいことではあるのだが、それとお世話とはまた違うらしい。
言い方は悪いが、生きたお人形のお世話が出来るのだ。ましてや楓は聖女なのだ。これを逃せば、こんな機会は二度と訪れないという事は誰もが分かっていた。
元々興味が薄い者でも、機会が与えられたのならやってみたいと思うのは当然だったし、一度やってみた者達から楓の事を聞けば、絶対にやりたいと思うようになっていた。
侍女達は爵位の低い令嬢達が多かったが、それでも子供の頃にランドール領の人形に触れる機会はあった。勿論人形遊びをしない者達も居たが、そのような者は元々会員にはなっていないので、この場には居ない。
彼女達の必死の訴えに、ルーシャスは渋々楓を連れ帰るのを諦めた。
「だが半年後の式典後には婚姻式も行うつもりだ。式典後は絶対に連れ帰るからな!」
そう言い放つルーシャスにカールが付け加えた。
「ならばそれも同時に行えばよろしいのでは? それならば誰も異存ないと思いますよ」
「そうだな。ではその辺も陛下に許可を取らねば」
「そうですね」
その会話を聞いていたディアナがルーシャスに尋ねた。
「そうそうランドール侯爵。婚姻後もアリス様のお世話をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「え!? ついてくる気か?」
「はい、当然です」
「だが……我が家にも侍女は居るが……」
「アリス様のお世話を素人には任せられませんっ!」
すると他の侍女達も「私も!」「ぜひわたくしもお願いします!!」と口々に言い出した。
「い、いや、待て待てっ! 流石にそんなに要らんだろう!」
「でも!」「ですがっ!」
「一先ずアリス様にお伺いしてみては如何でしょう? アリス様の希望に沿う様になさればよろしいかと」
「……そうだな。とりあえずカエデ様に聞いてからにしよう」
「「「……分かりました」」」
今度は侍女達が渋々引き下がる番だった。
会議後、嬉しそうに予約票を持ち帰る侍女達を眺めながら、ルーシャスは困惑していた。
一体我が家に何人の侍女が増えるのだろうかと。




