25.良い日!
町歩きをしてから、ルーシャス様の機嫌が悪い。
悪いっていうか……拗ねているように見える。
勿論普通に話してくれているし、微笑んでもくれる。
でもあまり楽しそうじゃない。
そして、全く離してくれないのだ。
ずーっと抱っこ。
よく溺愛系のラノベで見た、恋人を膝から下ろさない、どころの話じゃない。
小さい分、邪魔にならないからか、会ったら帰るまで離してくれないようになった。離してくれるのはトイレくらい。
別に嫌ではないのだが、ずっとこれなのは絵面的にどうなのかと。
ルーシャス様の外聞が心配になってきた。
そこで拗ねている原因を解消しようと、ルーシャス様にお願いしてみた。
「ルー様。一度人形を作っているところを見てみたいです。連れて行ってもらえませんか?」
ルーシャス様はいそいそとカールさんに了承を得て、日程を決めてくれた。
良かった。やっぱりお出掛けに一緒に行けなかったから拗ねてたんだ。
聞いても答えてくれなかったけど、合ってたようで安心した。
しかもどうやら二人きりで出掛けるらしく、ディアナさんを連れて行くのを拒否ってた。
まあ、一応私が外に出る時は、箱入りになるのでルーシャス様お一人での外出って事になるから、ディアナさんがついて行くのはおかしな話なんだけど。
カールさんに聞いたら、人形を作っている所は私のブランドを作っている所でもあるので、身内と判断され、そこへの視察という形らしい。なるほど。
◇
さて、嬉しさを隠そうともしないルーシャス様と初のお出かけ。
国内のお披露目で婚約発表もしてしまえば、ある程度外にも出られるらしい。
とは言ってもまだ一ヶ月先の事で、つまり私にとっては三ヶ月以上先だ。遠いよー。
馬車の中では安定のお膝の上。正確には太腿の上だけど。籐の箱は我々の前の席に置いていある。
初めて馬車に乗った時は王子様の太腿の上だったが、前を見ていた。
それがルーシャス様になると、ルーシャス様側を向いてぴったりくっ付いている。
うん、もう慣れました。
お陰で震度も二くらいだし、安心するしで、なんら抵抗などしてません。
え? 乙女としてどーよって?
そうは言っても、二人でベタベタした所で甘い雰囲気になる訳でもなく、スキンシップは過多だが性的な物ではないし。
色んな所にキスは落とされるが、愛情表現として受け取っている。
ルーシャス様が色っぽくないから大丈夫!……なハズ。
そんなこんなでやって来ました、ミレーさんの工房へ。
「いらっしゃ〜い! アリスちゃん、待ってたわ〜!!」
「こんにちは、ミレーさん。この前言っていたのはどうなりましたか?」
「今の所こんな感じかしら。どう?」
そう言って見せたくれたのは、デッサン用のマネキンみたいな感じでのっぺらぼうで体の形が自由に動かせるようになっていた。
「凄いです! そう! こんな感じです。わぁ〜ちゃんと動きますね」
「そう? 良かったわ。これ結構苦労したのよ。でも流石ね、これなら自分で自由なポーズを作れるもの。もう少し調整すれば自立も出来るようになるし、これで人形の一大革命が起こると思うわ」
「そんな大袈裟ですよ」
「いいえ、今までは固定されていたのが自由になるなんて素晴らしい事よ。だた、少しお高めになるのは否めないわね」
「そうですか……ではこれは貴族用ですかね?」
「そうなると思うわ」
という訳で、固定されたものは一般人用で、可動式のは貴族用で作っていく事になった。
その後で工場を見せてもらったけど、基本的に作り方としてはミレーさんが作った雛形からとった型に土を入れて型取り、それを焼いて仕上げる。それを後は手作業で細かい所を調整し、色付けなどを行うらしい。
その際の土の配分や、焼き加減などは企業秘密。そしてそれらは魔法で行われる。
ほぇ〜。異世界すごいね。
魔法、良いなぁ。
折角異世界に来たのだから、使ってみたかった。
転移で使える設定になる話もいっぱいあったのになぁ。残念。
そこでふと思いついた事があって、ミレーさんにこそっと耳打ちしてみた。
そしたら満面の笑みで了承されたので、楽しみにしてます!!
「ミレーと何を話していたのですか?」
「えへへ、良いものをお願いしてみたんです」
「良いもの?」
「はい! 楽しみです!!」
「そうですか。良かったですね」
ルーシャス様の機嫌も良くなったし、今日は良い日です!




