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21.仕方ない


 あれから私は色々とコスプ……いや、衣装を考えてみた。

 ティン○ーベルみたいな羽根のついた妖精とか、チャイナ服っぽいのとか、何ちゃって着物とか、もこもこの猫の着ぐるみとか。

 

 だけど、はたと気付いた。

 絶対コレを作ってもらったら着させられると。


 ……うん、様子見よう。





 二日に一度は開かれるルーシャス様とのお茶会。

 今日のデザートはベイクドチーズケーキだ。

 王都で有名なお店の品らしく、とても美味しい。

 

 にこにこしたルーシャス様のお膝の上で、食べさせられている。


「今日も美しいですね、カエデ様。美味しそうに食べている姿も可愛いです。ぜひ私と結婚してください」


 実は会う度、毎回ナチュラルにプロポーズされている。

 

 私の中では未だに神様的な存在のルーシャス様だが、会うたびに褒められ、結婚を懇願され、色々お世話になっているため、結構絆されている。

 特に顔の前まで抱き上げられ、真っ直ぐに目を合わせ、「愛しています」と囁かれるのは心臓に悪い。


 分かってる。

 とっくに私もルーシャス様が好きな事くらい。

 だって抱っこされて一番安心出来るのが、ルーシャス様なのだから。


 だったらなぜ返事をしないかというと……やっぱり自分だけ歳をとるのが辛いのだ。

 

 ルーシャス様なら、きっとどんな私も変わらず愛してくれるだろう。


 分かっている。

 私だってそうだった。

 どんなに歳をとっても、関係なかった。


 でもさ〜、そこは、ほら。


 乙女的にちょっと辛い訳で……。


 万が一、歳をとってボケでもしたら…と考えると、恐ろしい。



 

 まあ、そんな事は言っていられないのだけど。

 私のそんなちっぽけな矜持さえなければ、ルーシャス様と結婚するのが一番良いのも分かっている。

 どうせするなら早い方が良いに決まってるのも。


 ただ、確認は必要よね。



「ルーシャス様。本当に私と結婚しても良いのですか?」


 そう問うと、ルーシャス様はお顔を綻ばせて答えてくれた。


「勿論だよ。カエデ様以外と結婚する気はないよ?」

「でも……その、ルーシャス様は侯爵なんでしょう? 後継者とかが必要なんじゃないんですか?」

「ああ、そんなものは養子を取れば済む話だ。心配しなくても大丈夫だよ」

「……私は先に死にますよ?」

「……それは辛い事だが、それまでの時間を共に過ごしたい。カエデ様の側に居たいんだ。どんな願いも聞くし、好きな事をしてて良い。ただ、一緒に居て欲しい。愛してるんだ、カエデ様」


 そんな縋るような瞳で見つめるのはずるい。

 おっきくて綺麗な瞳に、私しか映っていないのが見える。


 私だって、一緒に居たい。

 出来るならずっとくっ付いていたい。


 うん、諦めよう。

 皺々の自分を見せるのが嫌なのは。


「私もルーシャス様が好きです。私で良ければよろしくお願いします」

「! 本当!? 良いの?」

「はい」

「嬉しいっ!!」


 そう言って、ご尊顔をすりすりされる。

 そっとその頬に触れてみる。


 わぁ、すべすべ。

 こんなに近くで見ても毛穴が見えない。どうなってるの?

 髭は生えないのかしら?


 そんなアホな事を考えていたら、ルーシャス様に抱っこしなおされた。


「じゃあ、早速陛下に許可をもらって婚約しよう! そうだ、婚約発表もしなければっ!」


 婚約発表!?

 そんなものするの?


 ……まあ、聖女だから必要なのか。


「もうすぐ国内でのお披露目があるのでしょう? その時に発表すれば良いのでは?」

「そうだね、そうしてもらおう。取り敢えず婚約は先にしたいんだけど、良いかな?」

「勿論良いですよ。それに、私の事はカエデって呼んでください。敬語も良いです」

「良いの? あぁ……でも、結婚するまでは公式の場では無理かな。二人の時だけになるけど良い?」

「はい」

「私にも敬語はいいよ。それに私もルーシャスって呼んで欲しい」


 ……自分で言っておいてなんだが、ルーシャス様を呼び捨てって痴がましい気がする。 


「……ルー様」


 そうぽつりと呼びかけると、ルーシャス様にクスクス笑われて、ぎゅうと抱き締められた。


「愛しているよ、カエデ。ずっと一緒に居ようね」

「はい、ルー様」


 ルーシャス様に抱っこされるのは、本当に安心する。

 暖かくて、良い匂いがして、ゆっくりとした鼓動が聞こえる。


 そしてその鼓動を聞く度、ほんの、ほんの少し悲しくなる。


 自分との鼓動の速さの違いが、そのまま寿命を表しているようで。


 

 私はいつまで生きられるだろうか?

 ルーシャス様に何かを残してあげられるのだろうか?



 そんな事を思いながら、ルーシャス様の鼓動を感じていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。


 

 だってー


 安心しちゃんだもん。


 仕方ない。




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