21.仕方ない
あれから私は色々とコスプ……いや、衣装を考えてみた。
ティン○ーベルみたいな羽根のついた妖精とか、チャイナ服っぽいのとか、何ちゃって着物とか、もこもこの猫の着ぐるみとか。
だけど、はたと気付いた。
絶対コレを作ってもらったら着させられると。
……うん、様子見よう。
◇
二日に一度は開かれるルーシャス様とのお茶会。
今日のデザートはベイクドチーズケーキだ。
王都で有名なお店の品らしく、とても美味しい。
にこにこしたルーシャス様のお膝の上で、食べさせられている。
「今日も美しいですね、カエデ様。美味しそうに食べている姿も可愛いです。ぜひ私と結婚してください」
実は会う度、毎回ナチュラルにプロポーズされている。
私の中では未だに神様的な存在のルーシャス様だが、会うたびに褒められ、結婚を懇願され、色々お世話になっているため、結構絆されている。
特に顔の前まで抱き上げられ、真っ直ぐに目を合わせ、「愛しています」と囁かれるのは心臓に悪い。
分かってる。
とっくに私もルーシャス様が好きな事くらい。
だって抱っこされて一番安心出来るのが、ルーシャス様なのだから。
だったらなぜ返事をしないかというと……やっぱり自分だけ歳をとるのが辛いのだ。
ルーシャス様なら、きっとどんな私も変わらず愛してくれるだろう。
分かっている。
私だってそうだった。
どんなに歳をとっても、関係なかった。
でもさ〜、そこは、ほら。
乙女的にちょっと辛い訳で……。
万が一、歳をとってボケでもしたら…と考えると、恐ろしい。
まあ、そんな事は言っていられないのだけど。
私のそんなちっぽけな矜持さえなければ、ルーシャス様と結婚するのが一番良いのも分かっている。
どうせするなら早い方が良いに決まってるのも。
ただ、確認は必要よね。
「ルーシャス様。本当に私と結婚しても良いのですか?」
そう問うと、ルーシャス様はお顔を綻ばせて答えてくれた。
「勿論だよ。カエデ様以外と結婚する気はないよ?」
「でも……その、ルーシャス様は侯爵なんでしょう? 後継者とかが必要なんじゃないんですか?」
「ああ、そんなものは養子を取れば済む話だ。心配しなくても大丈夫だよ」
「……私は先に死にますよ?」
「……それは辛い事だが、それまでの時間を共に過ごしたい。カエデ様の側に居たいんだ。どんな願いも聞くし、好きな事をしてて良い。ただ、一緒に居て欲しい。愛してるんだ、カエデ様」
そんな縋るような瞳で見つめるのはずるい。
おっきくて綺麗な瞳に、私しか映っていないのが見える。
私だって、一緒に居たい。
出来るならずっとくっ付いていたい。
うん、諦めよう。
皺々の自分を見せるのが嫌なのは。
「私もルーシャス様が好きです。私で良ければよろしくお願いします」
「! 本当!? 良いの?」
「はい」
「嬉しいっ!!」
そう言って、ご尊顔をすりすりされる。
そっとその頬に触れてみる。
わぁ、すべすべ。
こんなに近くで見ても毛穴が見えない。どうなってるの?
髭は生えないのかしら?
そんなアホな事を考えていたら、ルーシャス様に抱っこしなおされた。
「じゃあ、早速陛下に許可をもらって婚約しよう! そうだ、婚約発表もしなければっ!」
婚約発表!?
そんなものするの?
……まあ、聖女だから必要なのか。
「もうすぐ国内でのお披露目があるのでしょう? その時に発表すれば良いのでは?」
「そうだね、そうしてもらおう。取り敢えず婚約は先にしたいんだけど、良いかな?」
「勿論良いですよ。それに、私の事はカエデって呼んでください。敬語も良いです」
「良いの? あぁ……でも、結婚するまでは公式の場では無理かな。二人の時だけになるけど良い?」
「はい」
「私にも敬語はいいよ。それに私もルーシャスって呼んで欲しい」
……自分で言っておいてなんだが、ルーシャス様を呼び捨てって痴がましい気がする。
「……ルー様」
そうぽつりと呼びかけると、ルーシャス様にクスクス笑われて、ぎゅうと抱き締められた。
「愛しているよ、カエデ。ずっと一緒に居ようね」
「はい、ルー様」
ルーシャス様に抱っこされるのは、本当に安心する。
暖かくて、良い匂いがして、ゆっくりとした鼓動が聞こえる。
そしてその鼓動を聞く度、ほんの、ほんの少し悲しくなる。
自分との鼓動の速さの違いが、そのまま寿命を表しているようで。
私はいつまで生きられるだろうか?
ルーシャス様に何かを残してあげられるのだろうか?
そんな事を思いながら、ルーシャス様の鼓動を感じていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。
だってー
安心しちゃんだもん。
仕方ない。




