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19.side エクトリア王国


 『第一回当たりになろう会議』が終わり、楓はルーシャスに連れられ自室に戻った。その間にディアナは侍女達に「この後緊急集会を行うので、出席出来る者はするように」と言付けた。

 

 ルーシャスに続き楓の部屋に行き、午後の就寝の準備をする。

 

 楓はあまり我儘を言わない。

 自分の都合よりも相手の都合を考えて動いている様に見えた。

 そんな楓が珍しく望んだ事が『寝る前にはお風呂に入りたい』だった。

 

 ディアナはそれが嬉しくて、嬉々としてお世話をした。

 むしろ何てご褒美? 的なものだ。


 最初は恥ずかしがっていたが、今では抵抗もなく洗わせてくれるので、ささっとお風呂に入れ、髪を乾かし香油を塗り込む。


 ディアナは楓の美しい黒い髪が好きだ。

 楓の住む国ではほぼ全員が黒髪だったと聞く。何それ羨ましい。

 こちらの世界では滅多に見ない黒髪。うっとりとしながら梳かす。


 そうしている内に楓はうとうとし始め、そっとベッドに運ぶとそのまますやすやと眠ってしまう。


 寝ている姿を見て、つい顔がにやけてしまう。ディアナにとって楓は可愛くて可愛くて仕方がないのだ。

 だが同時に可哀想だとも思っている。


 だって、一日が72時間だったら……自分では耐えられないと思う。

 それなのに、少しでもこちらの負担をなくすように努力している楓を見ていると、どうしても切なくなってしまうのだ。

 




 ディアナが会議室に入ると、そこには王妃、王女、ルーシャス、カールを筆頭に王宮中の侍女達と護衛数人が揃っていた。席に付けずに立っている者もいる。


「お待たせしました。では只今より『第一回当たりにしよう会議』を始めたいと思います」


 ディアナは先程の『当たりになろう会議』の事を全員に報告した。

 クロードのハズレ聖女発言の所では、先程とは比べ物にならないくらいの黒いオーラが立ち込めていた。

 そして楓の心意気を聴いた時には、みんな涙ぐみながら感動していた。


 そう、ここに集まっている者たちは全員『アリス様を見守る会』の会員だった。


 ディアナの聖女講習は順調に続けられ、今では王宮内の侍女全員が聖女の扱いをマスターしている。

 そして殆どの人がその会員になっている。


 ちなみにディアナが会員番号1番で、2番が王妃、3番が王女だった。

 ルーシャスは00番で、しれっとカールは4番を獲得していた。

 10番からを侍女達が順次獲得していった。


 その会員の侍女達は自分も聖女のお世話がしたいとディアナに頼み込んだ。

 

 最初はディアナが毎日お世話をしていた。

 だが楓が「お休みはないの?」と聞いてきて、「ございません」と答えたら叱られたのだ。曰くブラックだと。最低でも週に二日は休んで欲しいと言われた。

 ディアナにしてみれば、楓の側に居たいがために来ていただけだが、当の本人がそう言うならば仕方がない。渋々お休みを取ることにした。

 そうしてディアナが休んでいる時のお世話係を、他の侍女達が行うことになった。が、希望が殺到し過ぎて、半年の予定が全て埋まってしまった。

 あんまりだと訴える残りの侍女達のために、担当以外にも一日三人つく事に決まった。それでなんとか話はおさまったのだった。


 

「そこで皆様にはアリス様が仰られたアンケートを行ってもらいます。アリス様の人形が発売された場合買われるか……」

「「「買いますっ!!」」」

「……勿論そうでしょう。しかしアリス様は買うかどうか、買うとしたら幾らなら買うか等を尋ねられました。また様々な人の意見を求めているようでしたので、お友達や家の住う使用人などにも聞いてみて欲しいのです。アリス様の第二回の会議は一週間後に行われるので、我々は五日後にもう一度会議を開きたいと思います。それまでに各自意見を取りまとめておいてください。また何かアリスブランドに提案できる事がございましたら、そちらの方もよろしくお願いします」

「「「分かりました」」」

「アリス様はみんなが幸せになれる方法を模索されています。我々は微力ながらも応援し、必ずやアリス様に『当たり』だと思ってもらえるように頑張りましょうっ!!」

「「「はいっ!!」」」


 そこで王妃が立ち上がり、皆を振り返った。


「陛下やクロードがアリス様に対して失礼な発言をしたのを聞いた場合、その場所や時間なども記載して、私に報告書を上げてちょうだい。良いわね?」

「「「畏まりました」」」





 会議室を出てカールとルーシャスは国王への謁見を申し込んだ。


「さて、我々は我々に出来る事をしましょうか」

「そうだな。お手並み拝見させてもらうよ」

「お任せください」



 そうして拝謁した二人は国王を言いくるめて、聖女ブランドの売上の王国側の取り分を0.5割に抑え込んだ。流石に0は体裁が悪いだろうとのカールの温情だった。

 ちなみにルーシャスは0でも良いと主張したが、こちらも0.5になった。それもあって国王は断りきれなかったようだ。尤も売れるとも思ってなさそうだったが。

 

 謁見室を後にした二人は満足そうだった。


「まあ、一先ずこんな所でしょうか?」

「そうだな、後は売れる商品を作るだけだな」

「そうですね。お互い頑張りましょう」

「ああ」


 そう言ってそれぞれこれからの予定を頭で考えながら王宮を後にした。



 

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