16.おなかいっぱい
次の日から先生方が来て、勉強を開始した。
この世界の歴史やこの国の歴史、経済、それぞれの土地の特産物、隣国との関係など覚える事が盛り沢山だった。
まさかこの年でこんなに勉強する事になるとは思ってなかったよ……。
言葉に関しては、聖女特典でどの国の言葉も話せるのでそれだけは助かった。
まあ、文字に関しては一から勉強だけど。
この辺りはまだ良かった。
問題は、貴族としてのマナーや淑女の教養だった。
食事のマナーは一応習ったけど、何せ出てくるサイズがデカイのだ。
現状、手で食べてる事もある。
淑女の教養として、刺繍や音楽などがあったが、当然楽器を弾ける訳もなく。
刺繍に至っては、針が鉄串みたいで、出来なくもないが大変だった。
手芸はむかーし編み物をしていた事があった。一瞬考えたけど、基本そういうものは誰かへのプレゼントだったりする。そしてそれを贈るとなると、そのサイズははかり知れず……。気が遠くなったのでやめた。
ダンスは相手もいないし、一人で踊るとなると踊り子となってしまい、あまりよろしくないみたい。
この辺は追々様子を見ながら、勉強していくことになった。
とりあえずカーテシーは習ってみた。ラノベで読んだようになかなか辛い体勢だった。
なるほど〜これがそうか、と納得した。
ディアナさんに王妃様とのお茶会の作法を聞いてみたら、ものすごく間があいてから「大丈夫ですよ」と言われ、特に教えてくれなかった。
確かに椅子に座ったら身動きが取れないし、出されたものを飲むしか出来ないからかな?
◇
な〜んて思っていたけど……どうして王妃様に食べさせられているのかな?
お茶会に呼ばれて行ってみれば、王妃様と王女様だけのお茶会だったので少しほっとした。
習いたてのカーテシーをローブで行い、挨拶をする。
「お招きいただき有難うございます」
顔をあげれば、王妃様が両手を胸の前で組んで涙目でぷるぷるしていた。
「ようこそ! 聖女様。まぁ……まあ、なんて可愛らしいの! さあ、こちらに!」
そう言って近付きしゃがんで両手を広げてきた。
え?
王妃様に抱っこって……良いの?
不安になってディアナを振り返ると、しっかりと目を合わせ頷いてくれた。
良いんだ……。
……それなら……まあ、いっか。
両手を上げて王妃様に抱っこしてもらうと、ふわりと薔薇の香りがした。
真っ赤な髪に金色の瞳をした王妃様は本当に薔薇のように艶やかだった。
でも抱っこされたまま座ってしまったので、どうしていいか分からない。
「あの……王妃様、重くないですか?」
「いいえ、全然! それよりも私のことはエリザベスと呼んでほしいわ、聖女様」
「分かりました、エリザベス様。私の事はアリスとお呼びください」
「アリス様……お名前すら可愛いなんて……」
「あのっ! 私の事はアンジェリカって呼んでください!」
「はい、アンジェリカ様。アリスです、どうぞよろしくお願いしますね」
「はい! 嬉しいです!」
そのままの流れで、エリザベス様が切り分けてくださったフィナンシェを食べさせられた。
食べさせられたと言っても、私に合うフォークがないため、切り分けたフィナンシェを手に乗せて私の前に出されただけ。
手で食べる私を気遣ってか、エリザベス様も手を汚してくれていた。でもちゃんとお絞りが用意されていたので、元々そのつもりだったのだと思う。
有難く、手に取りあむあむ食べる。
バターが効いてて美味しいっ!
「美味しいですっ!」
「それは良かったわ。それを聞いたら料理長も喜ぶでしょうね」
「お母様! ずるいです! 私もアリス様を抱っこしたいです!」
「貴方はまだ講習を受けてないでしょう? ダメですよ」
「えー……そんなぁ〜」
講習?
首を捻っていると、今度は紅茶を出された。
これはルーシャス様が持ってきてくれた私サイズのカップだったので、普通に飲めた。
ちょっとむくれていたアンジェリカ様は、紅茶を飲んでから言ってきた。
「だったら今度は私のお部屋にも遊びに来てください!」
「え? 良いんですか? ぜひ行きたいです」
「はい! お待ちしてます!」
「それなら私の部屋にも来ていただきたいわ」
「嬉しいです。楽しみにしていますね」
そんな感じで始終にこにこしたお二人に挟まれ、次々にお菓子を出され、いっぱい食べされられて、のんびりしたお茶会だった。
お腹の膨れた私は、帰ってからすぐに寝ちゃったけど。
エリザベス「あぁ〜アリス様が可愛いぃ〜。まさか聖女様ご自身が可愛いなんて思ってなかったわ〜。あー私もアリス様のお世話がしたいわ。なんとかディアナ嬢に頼んでみようかしら?」
アンジェリカ「お母様! ずるいです! アリス様を独り占めして。私も触りたかったのにー!」
エリザベス「アリス様に触れるなら、ちゃんとディアナ嬢の講習を受けてOKが出てからにしなさいね」
アンジェリカ「はーい、分かりました。頑張ります!」
冷静沈着な王妃…?




